俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
84 / 95
第十章

馬鹿

しおりを挟む
「…切れたのか。」
俺の顔を見て悟ったのか、オルクスがそう告げた。
「後でまた連絡するって…。」
明らかに、何かが起きた。ユスティーツは一体何を…
「決まっている。エーファだ。」
まるで俺の思考を呼んだかのような回答より、その内容に言葉を失う。
「ユスティーツはエーファに遭遇した。他に考えられる可能性としてはヨシュカだろうが、今はそれぞれのエリアにいる。エアホーレンに来るはずがない。一般人はヴェルトにログインすら出来ない状態…ここまで言えば納得するだろう。」
「あ、あぁ。…って、だとしたら早くユスティーツを見つけないと!」
いくらレベルが最大のヨシュカとはいえ、エーファと一対一では絶対に勝てない。俺とオルクス、二人でも敵わなかったエーファだ。
更に最悪な事に、『切り札』であるユスティーツ…もしかしたら、エーファは切り札に気がついたのだろうか?
(どうすれば良いんだ。早く、一国も早くユスティーツを…!)
「この場合は最悪の状況を想定した方が早い。」
オルクスの、いつもと変わらぬ冷静な声。いつの間にか俯いていた顔を上げると、表情すらも平然としていた。
「最悪な状況…?」
「そうだ。今奴らがどこにいたら最悪か、分かるだろう。」
「…中央教会。」
あそこに辿り着かれたら、ゲームオーバーだ。
「行くぞ。」
オルクスとほぼ同時に、ソファーを取り出し飛び乗った。



フェイが今いるのは、中央教会の前。ベルクでエーファを探してたんだけど、シャルからの連絡でヨシュカはここに集まるように言われた。でも、ユスティーツがいない。シャルの説明によるとユスティーツはエーファと出会って、どうやらここ中央教会の中にいるらしい。
「ねーぇ、どうして中央教会にいるのぉ?意味わかんなぁい。」
難しい話を一気に聞かされて、状況が全然分からない。イデーやヴィッツはもう理解したのか、真面目な顔して教会を見つめている。フェイの言葉は無視、だって。酷いよね。
「ユスティーツからの連絡だ!」
シャルが突然叫ぶ。空気がぴりっとしたのが、フェイも感じた。
「…一人で、教会に入れって。」
まるで立てこもり事件。だとしたら人質はユスティーツ?彼、結構強いから自力で脱出できそうなのに。
「もしかしてぇ、ユスティーツが裏切ったのぉ?」
今度も無視。でも、皆の視線だけはこっちを向いた。聞かされたくない話を無理矢理突き付けられた、みたいな。実際上そうなのかも?
「…行ってくる。」
シャルはそう言って、ゆっくりと教会に入っていった。
「どうするつもりだ、オルクス。」
イデーの質問にオルクスは首を振る。
「まだ状況が把握出来ていない。」
すると、いきなり巨大な地響きがしたかと思うと、地面が揺れだした。ヴェルトで地震?そんなの有り得るの?立っていられなくなって、しゃがみこむ。土ぼこりで何も見えない。
「おいおい、ちょっと…冗談だよね?」
ヴィッツの言葉で気がついた。中央教会が、空へと浮き上がっている。
「オル君、これって想定してた?天空の…教会を。」
いつも澄まして「ああ」とか言ってるオルクスが、珍しく動揺してる。
「…想定外だ。」
続けて言った言葉も、凄く意外だった。
「またか…この、馬鹿が。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜

八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」  侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。  その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。  フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。  そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。  そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。  死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて…… ※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。

無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!

本条蒼依
ファンタジー
 主人公クロスは、マスターで聞いた事のない職業だが、Eランクという最低ランクの職業を得た。 そして、差別を受けた田舎を飛び出し、冒険者ギルドに所属しポーターとして生活をしていたが、 同じパーティーメンバーからも疎まれている状況で話は始まる。

転生者、有名な辺境貴族の元に転生。筋肉こそ、力こそ正義な一家に生まれた良い意味な異端児……三世代ぶりに学園に放り込まれる。

Gai
ファンタジー
不慮の事故で亡くなった後、異世界に転生した高校生、鬼島迅。 そんな彼が生まれ落ちた家は、貴族。 しかし、その家の住人たちは国内でも随一、乱暴者というイメージが染みついている家。 世間のその様なイメージは……あながち間違ってはいない。 そんな一家でも、迅……イシュドはある意味で狂った存在。 そしてイシュドは先々代当主、イシュドにとってひい爺ちゃんにあたる人物に目を付けられ、立派な暴君戦士への道を歩み始める。 「イシュド、学園に通ってくれねぇか」 「へ?」 そんなある日、父親であるアルバから予想外の頼み事をされた。 ※主人公は一先ず五十後半の話で暴れます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様

鏑木 うりこ
恋愛
 マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!  わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。  なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?   あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?  シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

絞首刑まっしぐらの『醜い悪役令嬢』が『美しい聖女』と呼ばれるようになるまでの24時間

夕景あき
ファンタジー
ガリガリに痩せて肌も髪もボロボロの『醜い悪役令嬢』と呼ばれたオリビアは、ある日婚約者であるトムス王子と義妹のアイラの会話を聞いてしまう。義妹はオリビアが放火犯だとトムス王子に訴え、トムス王子はそれを信じオリビアを明日の卒業パーティーで断罪して婚約破棄するという。 卒業パーティーまで、残り時間は24時間!! 果たしてオリビアは放火犯の冤罪で断罪され絞首刑となる運命から、逃れることが出来るのか!?

処理中です...