俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第十章

呼び出し

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辺りを見回す。いつも賑わっていたエアホーレンに、人の姿は無い。オレが守ってきたこの街は、一体どうなるのだろう。
エーファを探しているけど、人影すら見当たらないからきっとここにはいない。直感で分かる。
電子音が鳴り響く。シャルさんからだ。
[ユスティーツ?今エアホーレンか?]
[そうだよ、でも全然エーファが見付からない!]
[話したい事があるんだ、来てくれないかな?今エアモルデンにいるから]
[エアモルデン…オルクスもいるの?]
[…いや、俺一人だけだ]
シャルさんの返信が一瞬、遅かった。これは嘘。シャルさんは本当に嘘が下手。最初に会った時もそうだったっけ。あの時一緒にいた女の子はどうなった?多分、死んでる。これも勘。
オルクスと関わった人間は皆死んだ。あの子は別かな、って思っていたけど、シャルさんの様子を見ると例外なんかじゃなかった。
エアモルデンの死神トート
あいつには沢山のあだ名があるけど、これが一番お似合いだ。
シャルさんは死神に騙されているんだ。絶対死神は何か企んでいる。好きな女の子を殺されてもまだ、シャルさんは死神と共に行動している。どうして?可哀想なシャルさん。
じゃあ、いいや。ちょっとだけその嘘に騙されてあげる。
[分かった、エアモルデンに行くよ!もっと具体的な場所を__]
そこで、言葉が止まった。
だってそこには、エーファがいたからだ。媒体と本体、二人ともだ。媒体はオレがこの手で殺したはず。だけど、エーファにそんな事は関係ないんだろう。
[ごめんシャルさん、後でまた連絡する。]
そう言ってフロイント機能オフ。通知が来たら鬱陶しい。
「宜しいのですか?お話し中だったでしょう。どうぞ続けて下さい?」
「それが最期の言葉になっちゃうけど、良い?」
剣を構える。エーファの本体は両手を挙げた。
「まぁ、とにかく僕の話を聞いて下さい。僕は戦いに来た訳ではありません。」
「違うの?だとしたらお馬鹿さんだね!だって僕、君を殺そうと探してたんだ!」
「そうならない為の交渉ですよ。僕の話を聞けば気が変わります。オルクスの事が嫌いなのでしょう?」
アングリフを発動しようと開きかけた口が、ゆっくりと閉じられる。
「どうしてそんな事が分かるの?」
「何だって分かりますよ。理由が知りたいのなら、協力して頂けますか?そしたら、真実を教えて差し上げます。…ですが、シャルさんはとっくにオルクスから聞かされているでしょう。大切な事は教えない、オルクスはそういう人物です。違いますか?」
エーファはオレ達の会話を聞いている。だとしたら、オルクスやシャルさんが話し合っているだろう作戦の内容も知っている。オレが一人きりだと分かっていたから接触したんだ。この人は、悪役なのかな?もしそうなら、今すぐ殺さなきゃいけない。でも、もしこの人が正義なら__
「分かった、協力するよ。」
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