俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
83 / 95
第十章

呼び出し

しおりを挟む
辺りを見回す。いつも賑わっていたエアホーレンに、人の姿は無い。オレが守ってきたこの街は、一体どうなるのだろう。
エーファを探しているけど、人影すら見当たらないからきっとここにはいない。直感で分かる。
電子音が鳴り響く。シャルさんからだ。
[ユスティーツ?今エアホーレンか?]
[そうだよ、でも全然エーファが見付からない!]
[話したい事があるんだ、来てくれないかな?今エアモルデンにいるから]
[エアモルデン…オルクスもいるの?]
[…いや、俺一人だけだ]
シャルさんの返信が一瞬、遅かった。これは嘘。シャルさんは本当に嘘が下手。最初に会った時もそうだったっけ。あの時一緒にいた女の子はどうなった?多分、死んでる。これも勘。
オルクスと関わった人間は皆死んだ。あの子は別かな、って思っていたけど、シャルさんの様子を見ると例外なんかじゃなかった。
エアモルデンの死神トート
あいつには沢山のあだ名があるけど、これが一番お似合いだ。
シャルさんは死神に騙されているんだ。絶対死神は何か企んでいる。好きな女の子を殺されてもまだ、シャルさんは死神と共に行動している。どうして?可哀想なシャルさん。
じゃあ、いいや。ちょっとだけその嘘に騙されてあげる。
[分かった、エアモルデンに行くよ!もっと具体的な場所を__]
そこで、言葉が止まった。
だってそこには、エーファがいたからだ。媒体と本体、二人ともだ。媒体はオレがこの手で殺したはず。だけど、エーファにそんな事は関係ないんだろう。
[ごめんシャルさん、後でまた連絡する。]
そう言ってフロイント機能オフ。通知が来たら鬱陶しい。
「宜しいのですか?お話し中だったでしょう。どうぞ続けて下さい?」
「それが最期の言葉になっちゃうけど、良い?」
剣を構える。エーファの本体は両手を挙げた。
「まぁ、とにかく僕の話を聞いて下さい。僕は戦いに来た訳ではありません。」
「違うの?だとしたらお馬鹿さんだね!だって僕、君を殺そうと探してたんだ!」
「そうならない為の交渉ですよ。僕の話を聞けば気が変わります。オルクスの事が嫌いなのでしょう?」
アングリフを発動しようと開きかけた口が、ゆっくりと閉じられる。
「どうしてそんな事が分かるの?」
「何だって分かりますよ。理由が知りたいのなら、協力して頂けますか?そしたら、真実を教えて差し上げます。…ですが、シャルさんはとっくにオルクスから聞かされているでしょう。大切な事は教えない、オルクスはそういう人物です。違いますか?」
エーファはオレ達の会話を聞いている。だとしたら、オルクスやシャルさんが話し合っているだろう作戦の内容も知っている。オレが一人きりだと分かっていたから接触したんだ。この人は、悪役なのかな?もしそうなら、今すぐ殺さなきゃいけない。でも、もしこの人が正義なら__
「分かった、協力するよ。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした

水の入ったペットボトル
SF
 これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。 ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。 βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?  そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。  この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。

[完結]婚約破棄したいので愛など今更、結構です

シマ
恋愛
私はリリーナ・アインシュタインは、皇太子の婚約者ですが、皇太子アイザック様は他にもお好きな方がいるようです。 人前でキスするくらいお好きな様ですし、婚約破棄して頂けますか? え?勘違い?私の事を愛してる?そんなの今更、結構です。

転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。 どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。 - カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました! - アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました! - この話はフィクションです。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

処理中です...