俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
82 / 95
第十章

特殊能力

しおりを挟む
「…は!?」
思わず聞き返す。
「貴様の話を聞くと、創造主はエーファだけでなくアーダムの存在も示唆している。俺達が会ったのはエーファだけだ。エーファはアーダムをヴェルトへ呼び出そうと企んでいる。…シュティレは、アーダムの『器』にされる可能性がある。」
最後の言葉を告げる時のオルクスは、微かに表情を歪めていた。
「器…って、シュティレの身体の中にアーダムのデータが入るって事か…?そんな事が出来るのか!?シュティレはどうなる!?」
彼は詰め寄る俺を不愉快そうに手で押し退ける。はぁ、とため息が返ってきた。
「アーダムに直接聞いたらどうだ。今は結果より対処法が重要だ。エーファ自身が言っていた、壊れやすい中央教会…貴様は創造主に言ったそうだな、ヨシュカの特殊能力について。」
「あ、あぁ…」
「ユスティーツの特殊能力には気付いていなかったな。」
「あ…!」
言われてみればそうだ。何故今まで気が付かなかったのか。しかし今考えてみても特に不思議な所はない。首を捻っているとオルクスが口を開く。
「俺も最近まで疑問だった。だが、貴様の報告…創造主の発言を聞いて分かった。ヨシュカはエラーの時の暴走を止める存在、ユスティーツはその役目を十分に果たせる存在だ。」
「どういう意味だ?」
「ユスティーツはただ『強い』。他の剣士に比べても、俺達ヨシュカの中でもな。彼奴はまだ特殊能力を使った事が無い。彼奴の特殊能力は、全てを破壊する馬鹿力だ。」
馬鹿力?そんなものが特殊能力と言えるのか。
「可能性の話だが…ヴェルト自体を破壊出来るかもしれない。」
話の流れが見えてきた。
「全てを破壊するユスティーツに、一番壊れやすい中央教会でヴェルトを壊させる…そういう事か?」
「最悪の場合は、そうだ。最初はそれを脅しに使えば良い。シュティレの意識をヴェルトに奪われたまま破壊するのは得策と思えない。それに、俺達は創造主と契約した。三日以内にエーファを捕らえる事だ。契約違反してシュティレを救おうとしていると創造主に悟られたら、創造主からの邪魔が入る。」
脅しというのは、恐らくエーファに対してだ。創造主に脅しは効かない。シュティレの意識を奪った彼女なら、その気になればユスティーツの意識を…いや、命さえも奪う事は容易だ。俺は現実リアルで自分の装置に触れた。愛着のあった装置は、冷たく、固い。今となっては額に拳銃を突き付けられているようなものだ。
ただ。俺は思い出す。この状況を作り出したのはエーファだ。エーファもシステムを操る事が出来ている。
「なぁ、エーファに邪魔される事は無いのか?」
「奴はユスティーツの能力に気が付いていない。知っているのなら、既に彼奴に接触しているはずだ。あの便利な馬鹿力を見過ごす訳がない。」
オルクスは真っ直ぐに俺を見た。
「交渉しろ。ユスティーツは俺達にも、エーファからしても切り札だ。…本来ならば、創造主の切り札だからな。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬
ファンタジー
スマホ大好きなこの俺、関谷道長はある日いつものように新しいアプリを探していると何やら怪しいアプリを見つけた。早速面白そうなのでDLして遊ぼうとしてみるといつの間にか異世界へと飛ばされていた!  ちょっと待てなんなんだここは!しかも俺のスマホのデータ全部消えてる!嘘だろ俺の廃課金データが!!けどこのスマホなんかすごい!けど課金要素多すぎ!!ツッコミどころ多すぎだろ!  こんなことから始まる俺の冒険。いや、宿にこもってスマホばっかりいじっているから冒険してないや。異世界で俺強え無双?いや、身体能力そのままだから剣もまともに振れませんけど。産業革命で超金持ち?いや、スマホの課金要素多すぎてすぐに金欠なんですけど。俺のすごいところってただすごいスマホ持っているだけのような…あれ?俺の価値なくね? 現在、小説家になろうで連載中です。

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結

まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。 コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。 「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」 イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。 対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。 レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。 「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」 「あの、ちょっとよろしいですか?」 「なんだ!」 レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。 「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」 私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。 全31話、約43,000文字、完結済み。 他サイトにもアップしています。 小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位! pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。 アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。 2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます

みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。 女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。 勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

処理中です...