俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第十章

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ブツッ。
耳障りな音が聞こえたと思うと、目の前が真っ暗になった。
回線が落ちたのか?でも何故?
《そのままヴェルトを装着していて下さい。音は聞こえるはずです》
合成音声が響き渡る。
『一体、何が?』
《エラーです。想定される接触時間を越えた為です。貴方と私が対話する状況は、本来ならば特殊だからです。分かりやすく言うのならば、重くて落ちた、という事です》
『でも、音は聞こえている。』
《この会話もいずれ不可能になるでしょう。しばらく時間を置けば元に戻ります。私は貴方の質問に答えました。ですから、必要以上の接触は控えて下さい。ヴェルトを正常にプレイする為に従って下さい。今ならベッドが無くてもログアウト可能な状態にしてあります》
どうしてこんな時に限って、強制ログアウトしなくてはならないのだろう。
一刻も早くシュティレを助け出さないといけないのに。
オルクスとの会話を思い出す。
(悪い、オルクス…もう少し待ってくれ)
ここは大人しくログアウトする事にする。ヴェルトの装置を外すと、しんと静まり返った俺の部屋が目に飛び込む。
最初に集合したのが零時だったから、今は一体何時になっているのだろうか。そう考える前に、強烈な眠気が俺を襲った。さっきまでずっと緊張していたのか。
「…駄目だ、本当に眠く___」
寝る前にせめて、オルクス達にメッセージを。スマホに手を伸ばす前に、ベッドへと倒れ込んだ俺は意識を手放していた。

「圧倒的に不利だ。」
ヴェルト9日目。
俺はオルクスからの報告を聞き終わった所だった。
オルクス達はあの後、エーファの媒体を発見したらしい。
「その時に強制ログアウトが起きた。」
どうやらその影響で、ヨシュカ以外ログイン出来なくなってしまったらしい。オルクス曰く、それはエーファの仕業なんだとか。
「な、なぁオルクス。向こうはシステムすらも操れる存在。そんな奴らに勝てる方法って…」
他のヨシュカはそれぞれ別行動で、自分のエリアにエーファがいないか捜索中だ。だから今ここにいるのはオルクスと俺。ここは中央教会の中だ。あれだけ大勢の人がいた場所が、今は誰もいないせいで余計に広く見える。
二階に上がると、掲示板がチカチカと点滅していた。
【お知らせ:只今緊急メンテナンス中です/しばらくお待ち下さい/楽しいヴェルトライフの為にご協力下さい】
ログイン直後、すぐにここへ来るようメッセージが届いた。しかし、オルクスは報告以外殆ど黙っている。無愛想なのはいつもの事だが、この状況では何らかの原因があると見て良い。
「オルクス、エアモルデンを捜索しなくて良いのか?一番広いのに…そうだ、もしかしたら俺のフライハイトにエーファがいるのかもしれないぞ?」
「フライハイトは貴様の物ではない。」
冷たい返事だ。ようやく俺の方を振り向く。
「エーファの目的は分かっている。」
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