俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第九章

合流

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「お、皆~!揃ったかな?」
俺達を見つけたヴィッツが、ぶんぶんと手を振る。その隣ではフェイが不貞腐れた顔で座っている。
「遅いよぉ!改造はすぐに終わったのにぃ!」
ヴィッツの腕のように足をばたつかせた。それをまぁまぁとヴィッツがなだめる。その後ろにはオルクスも戻ってきていた。
「ほらほら、フェイ嬢。せっかくだから皆に見せてあげようよ、ね?」
渋々フェイが立ち上がり、地面に置かれていたぬいぐるみに手をかざす。解除にはメッサーを使わないらしい。ぬいぐるみは強く光ったかと思うと、一頭の熊に戻っていた。シュティレとの思い出が甦る。あの時の俺は、何もできなかった。この熊だって、シュティレが発見してシュティレが仕留めたのだ。思えば、俺が彼女の為に何かした事はあったのか?いつもいつも、誰かの後についていく事しかできずに…本当は、ヨシュカを集めようと言い出したのは俺なのに。どうして…
「貴様は、シュティレを迎えに俺の所へ来ただろう。」
気が付かない内に口に出ていたらしい。俺の事を元気付けようと…している?オルクスを見るも、すぐに視線を逸らされた。
「で、でも、俺がしたのは本当にそれくらいで…助けてもらっていたのは俺の方だ、それなのに、俺はシュティレを騙し続けて…放置して…」
「シュティレがヴェルトで死んでから急に悲観主義になったな。」
オルクスはわざとらしくため息を吐く。言われてみればそうだ、何かを見る度にシュティレと、俺の愚かさを思い出す。だけど、殺した直後はこんな風には思わなかった。諦めがついたと思った。今になって、ただ冷たい海に浸されるような後悔が押し寄せてくる。
[…貴様に二つ教えてやる。]
フロイント機能のチャットだ。これを使うという事は、他のヨシュカには見られたくない話なのだろうか。
[シュティレは貴様に救われた。どこにも居場所の無かったシュティレを、貴様は迎えに来た。俺にはシュティレを守る事は出来たが、貴様のように接する事は出来なかった。貴様はシュティレを救った。]
[だけど、俺は!!俺はシュティレのこの手で殺した…]
[俺の言葉を疑うのか。二つ目だ、シュティレは今意識を失っている。ヴェルトで死んだ時からずっとだ。ヴェルトの装置をエーファが乗っ取り、意識を奪っているのだろう…つまり、人質となっている。]
[人質!?オルクス、何でそんな重要な事をもっと早く…皆に伝えないと!]
オルクスは首を振った。その目は、どこか悲しげだった。
[元々貴様に教える気はなかった。だが、考えが変わった。シュティレを助けるのは…シャル、貴様がやれ。]
[俺が…?シュティレを?]
その時、ヴィッツがユスティーツからエーファの私物を受け取り、アーベントに嗅がせた。アーベントは勢いよく走り出す。イデーはとっさにアーベントに紅糸をつけた。
「貴様は別行動だ。エアホーレンの、貴様の教会へ行け。エーファの本体を探せ。」
教会。シュティレと出会った、俺の教会。
オルクスが俺の胸を軽く叩いた。
「まだ救っていないと言うのなら、今から救え。」
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