俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

文字の大きさ
上 下
78 / 95
第九章

合流

しおりを挟む
「お、皆~!揃ったかな?」
俺達を見つけたヴィッツが、ぶんぶんと手を振る。その隣ではフェイが不貞腐れた顔で座っている。
「遅いよぉ!改造はすぐに終わったのにぃ!」
ヴィッツの腕のように足をばたつかせた。それをまぁまぁとヴィッツがなだめる。その後ろにはオルクスも戻ってきていた。
「ほらほら、フェイ嬢。せっかくだから皆に見せてあげようよ、ね?」
渋々フェイが立ち上がり、地面に置かれていたぬいぐるみに手をかざす。解除にはメッサーを使わないらしい。ぬいぐるみは強く光ったかと思うと、一頭の熊に戻っていた。シュティレとの思い出が甦る。あの時の俺は、何もできなかった。この熊だって、シュティレが発見してシュティレが仕留めたのだ。思えば、俺が彼女の為に何かした事はあったのか?いつもいつも、誰かの後についていく事しかできずに…本当は、ヨシュカを集めようと言い出したのは俺なのに。どうして…
「貴様は、シュティレを迎えに俺の所へ来ただろう。」
気が付かない内に口に出ていたらしい。俺の事を元気付けようと…している?オルクスを見るも、すぐに視線を逸らされた。
「で、でも、俺がしたのは本当にそれくらいで…助けてもらっていたのは俺の方だ、それなのに、俺はシュティレを騙し続けて…放置して…」
「シュティレがヴェルトで死んでから急に悲観主義になったな。」
オルクスはわざとらしくため息を吐く。言われてみればそうだ、何かを見る度にシュティレと、俺の愚かさを思い出す。だけど、殺した直後はこんな風には思わなかった。諦めがついたと思った。今になって、ただ冷たい海に浸されるような後悔が押し寄せてくる。
[…貴様に二つ教えてやる。]
フロイント機能のチャットだ。これを使うという事は、他のヨシュカには見られたくない話なのだろうか。
[シュティレは貴様に救われた。どこにも居場所の無かったシュティレを、貴様は迎えに来た。俺にはシュティレを守る事は出来たが、貴様のように接する事は出来なかった。貴様はシュティレを救った。]
[だけど、俺は!!俺はシュティレのこの手で殺した…]
[俺の言葉を疑うのか。二つ目だ、シュティレは今意識を失っている。ヴェルトで死んだ時からずっとだ。ヴェルトの装置をエーファが乗っ取り、意識を奪っているのだろう…つまり、人質となっている。]
[人質!?オルクス、何でそんな重要な事をもっと早く…皆に伝えないと!]
オルクスは首を振った。その目は、どこか悲しげだった。
[元々貴様に教える気はなかった。だが、考えが変わった。シュティレを助けるのは…シャル、貴様がやれ。]
[俺が…?シュティレを?]
その時、ヴィッツがユスティーツからエーファの私物を受け取り、アーベントに嗅がせた。アーベントは勢いよく走り出す。イデーはとっさにアーベントに紅糸をつけた。
「貴様は別行動だ。エアホーレンの、貴様の教会へ行け。エーファの本体を探せ。」
教会。シュティレと出会った、俺の教会。
オルクスが俺の胸を軽く叩いた。
「まだ救っていないと言うのなら、今から救え。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

『完結済』ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

華都のローズマリー

みるくてぃー
ファンタジー
ひょんな事から前世の記憶が蘇った私、アリス・デュランタン。意地悪な義兄に『超』貧乏騎士爵家を追い出され、無一文の状態で妹と一緒に王都へ向かうが、そこは若い女性には厳しすぎる世界。一時は妹の為に身売りの覚悟をするも、気づけば何故か王都で人気のスィーツショップを経営することに。えっ、私この世界のお金の単位って全然わからないんですけど!?これは初めて見たお金が金貨の山だったという金銭感覚ゼロ、ハチャメチャ少女のラブ?コメディな物語。 新たなお仕事シリーズ第一弾、不定期掲載にて始めます!

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

スマホ依存症な俺は異世界でもスマホを手放せないようです

寝転ぶ芝犬
ファンタジー
スマホ大好きなこの俺、関谷道長はある日いつものように新しいアプリを探していると何やら怪しいアプリを見つけた。早速面白そうなのでDLして遊ぼうとしてみるといつの間にか異世界へと飛ばされていた!  ちょっと待てなんなんだここは!しかも俺のスマホのデータ全部消えてる!嘘だろ俺の廃課金データが!!けどこのスマホなんかすごい!けど課金要素多すぎ!!ツッコミどころ多すぎだろ!  こんなことから始まる俺の冒険。いや、宿にこもってスマホばっかりいじっているから冒険してないや。異世界で俺強え無双?いや、身体能力そのままだから剣もまともに振れませんけど。産業革命で超金持ち?いや、スマホの課金要素多すぎてすぐに金欠なんですけど。俺のすごいところってただすごいスマホ持っているだけのような…あれ?俺の価値なくね? 現在、小説家になろうで連載中です。

処理中です...