俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第九章

追跡

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視界が光で満たされたと思った瞬間、周りの風景が戻った。…穴へと落ちる前、中央教会の裏だ。地面には何の跡もない。
辺りを見回す。ヨシュカは全員揃っていた。俺と同じく未だに状況が掴めないのか呆然と立っている。ただ、オルクスは違った。
「何をしている。さっさと探しに行くぞ。」
「…そ、そうは言ってもオル君、何の手がかりも無いよ?」
「それを何とかするのが貴様の役目だ。」
オルクスの言葉にヴィッツはきょとんとした表情を浮かべる。
「意外だなぁ、オル君が僕を頼ってくれるなんて。」
オルクスはそれを無視して俺達に向かって告げた。
「エーファの媒体がまだ近くにいる筈だ。探せ。」
最初に動いたのはユスティーツで、何も云わずに走り去ってしまった。イデーが止めようと口を開くも、彼の足の早さには間に合わなかった。
「あいつは放っておけ。」
オルクスはイデーに近付く。
「エーファは今まで貴様の部下にいたのだろう。何か情報を提供しろ。」
「…彼らは優秀な信者だった、普段は中央教会へ偵察に行かせていた。」
イデーは悔しそうに顔を歪めた。
「我が正体に気が付いていれば…こんな事は防げた、我の責任だ。」
「エーファの存在は俺の責任だ。気にするな。」
オルクスは彼女の頭に無造作に手を置き、そしてそのままぐしゃぐしゃと雑に撫でた。先程のヴィッツへの対応を思い出して思わず息を呑む。しかし、イデーは大人しく撫でられていた。ヴィッツが不満そうに言う。
「僕の時は拒絶されたのに…えこひいきだ、不平等~。」
「「黙れ。」」
オルクスとイデーの声がシンクロした。
この二人はどこか似ている雰囲気がある気がする。
「さ、さてさて、それじゃエーファ君を探しましょうかね~。」
ヴィッツはわざとらしい声で話を逸らすと、地面にキーボードを広げた。
「僕の技術は何かを改造する事、何か改造できる物を持っている方はいらっしゃいませんか~?」
俺は何も持っていない。あるのは攻撃の時に現れる十字架くらいだ。オルクスは色々持っていそうだけど、改造させるとは思えない。イデーは既に紅糸を改造済みだし、ユスティーツに至っては探しに行ってしまった。
…となると。
「あのぉ、私の『アーベント』も改造出来るぅ?」
フェイは例のぬいぐるみを取り出した。彼はそれを受け取ると真面目な顔で観察する。
「狩人の能力か。そうだね…嗅覚を改造しよう、警察犬のように探せるかもしれない。」
ヴィッツはぬいぐるみをキーボードの近くに置く。そしてぬいぐるみに手をかざした。
「アングリフ発動。」

【発明家・アングリフ『改造ウムビルデン』】

ぬいぐるみが強い光を放つ。が、それは一瞬の事だった。
真面目な顔からいつもの笑顔に戻ったヴィッツが言う。
「改造を始めるよ。」
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