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第八章
背後
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「お二人とも早いですね。」
プロフェートが到着した。いつものように、少女と少年で二人。
「早速行きましょう。零時までには時間がありますが、ここに留まると危険です。」
プロフェート…少年の方が地面に向かって手を伸ばす。すると、地面の凹凸に沿って緑の線が浮き上がってきた。あの時、俺がバグと共に閉じ込められていた時に見たあの線だ。線が大きく歪むとその部分の地面は真っ黒に変わった。躊躇なくプロフェートはそこへ足を入れた。
「何を…?」
「空間を用意しておきました。さぁ、早く。」
そう言うとプロフェート、少年と少女の二人は地面の闇の中へ消えてしまった。オルクスも何も言わずに後へと続く。
ここで引き返す事も出来る。俺の中の悪魔が囁く。このまま逃げるんだ、ヴェルトの秘密等知らずに今まで通り過ごせばいい。
(いや、それは違う)
シュティレはもうヴェルトにいない。俺はシュティレのいないヴェルトで、楽しく生活する事が出来ない。
(だから俺は…行く)
足を突っ込む。何の感触もしないのが逆に不気味だ。息を止めて、一気に中へ入った。
そこは、妙な空間だった。一面、白。上も下も自分が今どこに立っているのかすらも分からなくなりそうだ。そこに、俺達はいた。時折身体の一部が砂嵐の様に乱れる。
「一時的なものですから、不安定な場所です。早く安定した場所へ行かないと身体に影響が出ます。」
プロフェートは懐中時計を取り出すと頷いた。
「時間です。」
その言葉を合図に、オルクスは大きく息を吸い込んだ。
【アングリフ発動】
【音使い・アングリフ『術歌』】
歌の事は詳しくない。ただ、オルクスの歌声は磨かれた刃のようで、鋭く空間を切り裂く。実際に、目の前の空間にヒビが入っていく。
何をしているのか、分からない。
だけど、俺が今出来る事は…
「グロース発動。」
【グロース発動】
【プファラー・グロース『十字架』】
背後から現れた十字架は、入ったヒビに光の帯を流し込み破壊していく。
もう少しだ、もう少しで壊れ…
「おい!!」
突然オルクスが叫ぶ。そして、俺の身体は突き飛ばされていた。ゆっくりと景色が変わっていく。オルクスの顔、オルクスの血、倒れるオルクス。そして…銃を持った、少年のプロフェート。
「ここで二人を始末します。ヒビは直ぐに壊れそうですから、用済みです。お疲れ様でした。」
プロフェートが到着した。いつものように、少女と少年で二人。
「早速行きましょう。零時までには時間がありますが、ここに留まると危険です。」
プロフェート…少年の方が地面に向かって手を伸ばす。すると、地面の凹凸に沿って緑の線が浮き上がってきた。あの時、俺がバグと共に閉じ込められていた時に見たあの線だ。線が大きく歪むとその部分の地面は真っ黒に変わった。躊躇なくプロフェートはそこへ足を入れた。
「何を…?」
「空間を用意しておきました。さぁ、早く。」
そう言うとプロフェート、少年と少女の二人は地面の闇の中へ消えてしまった。オルクスも何も言わずに後へと続く。
ここで引き返す事も出来る。俺の中の悪魔が囁く。このまま逃げるんだ、ヴェルトの秘密等知らずに今まで通り過ごせばいい。
(いや、それは違う)
シュティレはもうヴェルトにいない。俺はシュティレのいないヴェルトで、楽しく生活する事が出来ない。
(だから俺は…行く)
足を突っ込む。何の感触もしないのが逆に不気味だ。息を止めて、一気に中へ入った。
そこは、妙な空間だった。一面、白。上も下も自分が今どこに立っているのかすらも分からなくなりそうだ。そこに、俺達はいた。時折身体の一部が砂嵐の様に乱れる。
「一時的なものですから、不安定な場所です。早く安定した場所へ行かないと身体に影響が出ます。」
プロフェートは懐中時計を取り出すと頷いた。
「時間です。」
その言葉を合図に、オルクスは大きく息を吸い込んだ。
【アングリフ発動】
【音使い・アングリフ『術歌』】
歌の事は詳しくない。ただ、オルクスの歌声は磨かれた刃のようで、鋭く空間を切り裂く。実際に、目の前の空間にヒビが入っていく。
何をしているのか、分からない。
だけど、俺が今出来る事は…
「グロース発動。」
【グロース発動】
【プファラー・グロース『十字架』】
背後から現れた十字架は、入ったヒビに光の帯を流し込み破壊していく。
もう少しだ、もう少しで壊れ…
「おい!!」
突然オルクスが叫ぶ。そして、俺の身体は突き飛ばされていた。ゆっくりと景色が変わっていく。オルクスの顔、オルクスの血、倒れるオルクス。そして…銃を持った、少年のプロフェート。
「ここで二人を始末します。ヒビは直ぐに壊れそうですから、用済みです。お疲れ様でした。」
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