俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第八章

集合

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オルクスに指定された中央教会の、取り敢えず前に俺はいた。地下への入り口が分からないから仕方ない。今は零時…の一時間前。何となくだけど、オルクスが来ている気がした。
「…やはりもう居たのか。」
声のした方を振り返ると、オルクスがいた。やはり、はこちらの台詞だ。俺はつかつかと歩み寄る。
「オルクス。お前はどうして、ここにいるんだ?」
彼はしばらく沈黙した。質問の意図が始め理解できなかったのか訝しげな視線を向けてきたが、すぐに澄ました顔になる。俺は続けた。
「お前は行方不明になったと、シュティレが…死ぬ前に、言っていた。」
「そうか。」
そんな事はもう知っている、とでも言わんばかりの態度だ。
「家出して、シュティレに、妹に心配掛けて…お前何してたんだよ!!」
怒鳴った俺の口に、細いオルクスの人差し指が添えられた。触れるか触れないかギリギリの所で退けられる。
「黙れ。この状況を理解した上でその声量なら、ただの馬鹿だな。」
そうだった。と俺は思い出す。侵入するからここに来ているんだ。もし中央教会の誰かに見つかったら、全て水の泡だ。
しかしオルクスがこんなに早く来たのは、単なる準備の為とは思えない。
「…お前が早く来た理由は、この話をする為じゃないのか?」
「さぁな。」
素っ気なく答えて、オルクスは荷物から瓶を取り出した。シュティレが俺にくれた、回復薬の瓶とよく似ている。それはピンク色をしていて、月明かりに照らされ不気味に光っていた。
「それは…。」
「シュティレの薬だ。攻撃力を一時的に高める。ただ、体力は大量に消費する事になるが。」
彼は瓶から飴玉のような薬をつまみ上げ、躊躇なく口に入れた。オルクスは今夜何が起こるのか知っているようだった。
「…俺は家から遠く離れた場所にいる。シュティレとヴェルトを、これ以上関わらせる訳にはいかない。」
彼はそう呟くとそれきり黙ってしまった。
オルクスがいる理由は、創造主に会えば何か分かるのだろうか?
俺達は何も言わずに…ただ、月を眺めていた。
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