俺達がチートであることを知られてはいけない。

無味

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第八章

手当

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とりあえず俺の傷を治して貰う。シュティレがオルクスに渡していた薬を使った。死んでいても、シュティレの遺体は美しかった。治療が済んだ俺はシュティレの亡骸を抱えた。
本当に死んだ訳じゃない。現実リアルでは、シュティレはちゃんと生きている。それでも、ヴェルトの世界でも、死んだのは悲しかった。俺は冷たくなった身体を抱き締めて、泣いた。プロフェートもオルクスも、何も言わなかった。ただただ泣いて、呻いて、俺はやがて何かが変わった事に気がついた。もう、悲しくなくなっていたのだ。諦め、だろう。
「情報を吐け。」
俺が立ち上がると、オルクスはプロフェートに告げた。
「分かりました、そろそろ話さないといけませんね。」
プロフェートは近くの椅子に腰掛けた。オルクスは背凭れに寄り掛かる。俺は立ったままプロフェートを見つめた。口を開く少年ではなく、無表情の少女を。
「プファラーのシャル様。ブーフはお持ちですね?」
「…はい。」
「僕は、エーファです。」
オルクスの目が微かに見開かれた。何を言っているのか分からず、呆然とする。
「成る程…そういう事か。」
オルクスは勝手に納得し、プロフェートもそれ以上何も言わない。混乱する俺は放置され、二人で話が進められる。
「場所は。」
「中央協会地下に入る事が出来ます。空間をご用意しました。あそこが一番『崩れ』ます。」
「方法は。」
「僕がいれば問題ありません、そうでしょう?」
「日時は。」
「今夜零時、きっかりに。情報が更新される隙を狙います。」
「俺達が貴様を信用する根拠は。」
「先程の言葉で充分かと思いますが?」
「シャル、そういう事だ。今夜零時に中央協会の地下へ行くぞ。」
オルクスに急に声を掛けられ我に帰る。俺は訳も判らないまま頷いた。
シュティレは死んだ。でも、確実に目的へは近付いている。
本当にこれで良いのだろうか?
良いんだろう、オルクスだっているし、プロフェートも何となくだが信用出来そうだ。
何か引っ掛かる。そうだ、他のヨシュカに何も言わなくて良いのか?良いんだろう、シュティレは下手に巻き込まれて死んだ。これ以上誰も死なせたくない。自問自答を繰り返しながら、俺はログアウトした。
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