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第七章
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絶対に起きてはいけない事が、起きてしまった。
「おかしいと思っていた、初心者なのに私より強かった、トゥテラリィからは救世主扱いされるのも妙だった。」
シュティレが、こんなに感情を見せたのは初めてだった。頬は赤く染まり、いつも真っ直ぐに向けていた目を伏せ、苦しそうに、吐き出すように告げた。
「あなたも、お兄様と同じ?お兄様もあなたのように…不自然だった。」
どうすれば良い。このままでは創造主に会う事が出来ない。せっかく、ここまで来たのに…
(シュティレを殺したら)
突然浮かんだ恐ろしい考えにぞっとする。でも、シュティレがヴェルトからいなくなれば、創造主と会える可能性はある。本当に殺す訳ではない。…違う、あれ、今…俺はシュティレを殺そうと思ったのか?
「シャル…?」
シュティレが訝しげに訊ねる。思考を中断して、呼吸を落ち着かせ、シュティレがオルクスの事を告白したように答える。しかし、俺は真実を語る決断を下せない。
「大丈夫、何でもないよ。」
シュティレは頷くと、はっきりと告げた。
「なら、話して。本当の事を。」
どうする?どうする?頭が真っ白になった。視線を外すと思考を再開する。
ヨシュカの存在を教え、創造主を諦めるか。
シュティレを殺し、ヴェルトの真実を求めるか。
(一人で何とかしようと思わなければ良かった、そうしたら判断を仲間に任せたのに)
俺は最低だ。この状況で、まだ誰かにすがろうとしている。
今こそ、それを変えるべきではないだろうか?
俺はシュティレを見つめた。
こんな時でもシュティレは美しかった。
「…ごめんね、シュティレ。」
真っ赤な鮮血が、花びらのように散った。
「おかしいと思っていた、初心者なのに私より強かった、トゥテラリィからは救世主扱いされるのも妙だった。」
シュティレが、こんなに感情を見せたのは初めてだった。頬は赤く染まり、いつも真っ直ぐに向けていた目を伏せ、苦しそうに、吐き出すように告げた。
「あなたも、お兄様と同じ?お兄様もあなたのように…不自然だった。」
どうすれば良い。このままでは創造主に会う事が出来ない。せっかく、ここまで来たのに…
(シュティレを殺したら)
突然浮かんだ恐ろしい考えにぞっとする。でも、シュティレがヴェルトからいなくなれば、創造主と会える可能性はある。本当に殺す訳ではない。…違う、あれ、今…俺はシュティレを殺そうと思ったのか?
「シャル…?」
シュティレが訝しげに訊ねる。思考を中断して、呼吸を落ち着かせ、シュティレがオルクスの事を告白したように答える。しかし、俺は真実を語る決断を下せない。
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今こそ、それを変えるべきではないだろうか?
俺はシュティレを見つめた。
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真っ赤な鮮血が、花びらのように散った。
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