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第七章
挑戦状
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俺が門の前に立つと、トゥテラリィ達はすぐに開けてくれた。顔パスになっている。門番の話によると、今日はトゥテラリィ以外が立ち入りを禁じられているらしい。
「お帰りなさいませ。」
若い女性が次々と跪いて、何だか恥ずかしくなってくる。しばらく奥へ進むと、何やら深刻そうな顔で話をしているミスィオーンを見つけた。
「シャルさん…?何故ここに…もしかして、お告げを聞きにいらしたのですか?」
救世主様だ、とあちこちで囁き声が聞こえる。俺は緊張を悟られないようなるべく堂々とした態度で答えた。
「そうです。場所を借りても?」
「どうぞお使い下さい。…実は今日、ここにいるトゥテラリィ全員お告げが聞けないのです…しかし救世主様ならきっと聞けるはず…いえ、これは救世主様のための、創造主様のお導きでしょう。」
その言葉を聞いて確信する。創造主は俺を待っていた。
十字架の場所に案内されるとあっという間に人だかりが出来て、初めてここに来た時のことを思い出した。
跪き、息を大きく吸い込む。しんと静まり返った教会の澄んだ空気。虚像の空気が現実の肺を満たす。
「創造主よ、我に啓示を与えたまえ。」
《久しいですね、偽りの少年よ》
『…僕を、待っていたのですね。』
《偽りの少年、良い事を教えましょう…あなたが望んでいた物を見付けられる機会を与えます》
俺の望んでいる物。それは一つしか思い付かない。
『創造主様の事を、教えて頂けるのですか。』
《えぇ…明日の夜、ここに一人で来なさい。そしてあなたはその時まで約束を守らねばなりません》
『約束…』
《あなたがヨシュカである事をヨシュカ以外の誰にも気が付かれてはいけません》
声の気配が消えた。俺はゆっくりと立ち上がる。
俺達がチートであることを知られてはいけない。
「お帰りなさいませ。」
若い女性が次々と跪いて、何だか恥ずかしくなってくる。しばらく奥へ進むと、何やら深刻そうな顔で話をしているミスィオーンを見つけた。
「シャルさん…?何故ここに…もしかして、お告げを聞きにいらしたのですか?」
救世主様だ、とあちこちで囁き声が聞こえる。俺は緊張を悟られないようなるべく堂々とした態度で答えた。
「そうです。場所を借りても?」
「どうぞお使い下さい。…実は今日、ここにいるトゥテラリィ全員お告げが聞けないのです…しかし救世主様ならきっと聞けるはず…いえ、これは救世主様のための、創造主様のお導きでしょう。」
その言葉を聞いて確信する。創造主は俺を待っていた。
十字架の場所に案内されるとあっという間に人だかりが出来て、初めてここに来た時のことを思い出した。
跪き、息を大きく吸い込む。しんと静まり返った教会の澄んだ空気。虚像の空気が現実の肺を満たす。
「創造主よ、我に啓示を与えたまえ。」
《久しいですね、偽りの少年よ》
『…僕を、待っていたのですね。』
《偽りの少年、良い事を教えましょう…あなたが望んでいた物を見付けられる機会を与えます》
俺の望んでいる物。それは一つしか思い付かない。
『創造主様の事を、教えて頂けるのですか。』
《えぇ…明日の夜、ここに一人で来なさい。そしてあなたはその時まで約束を守らねばなりません》
『約束…』
《あなたがヨシュカである事をヨシュカ以外の誰にも気が付かれてはいけません》
声の気配が消えた。俺はゆっくりと立ち上がる。
俺達がチートであることを知られてはいけない。
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