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第七章
発表
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「…線。」
「うん、線が現れて…」
「オルクスぅ、シャルの言う事信じるのぉ?」
洞窟から解放された俺は、集まったヨシュカ達に先程の現象を説明していた。シュピッツは仕事があるからとすぐに帰ってしまった。オルクスは途端に興味を失ったように、顔を逸らす。彼は興味が無い事には何も手を貸してくれない。ここは頑張って興味を引き付けないといけない。
「シャル君の視界がバグっただけの可能性もあるね。」
「ヴィッツさんまで…!そうだ紅糸、反応ありましたか!?」
イデーが首を振った。何度も繰り返した言葉のように、淡々と告げる。
「否、紅糸は…最初から普通の反応ではなかった。まるで上から無理やり数値を書き換えれられているような…そんな反応だった。」
「ところが、シャル君が言う線が現れた時に、数値が正常になったんだ。そしてこれを見て。」
空中にボードが表示された。ヴェルトのお知らせ等が書かれている。
【深刻なバグが発見された為、修正致しました】
【大変ご迷惑をおかけしました】
【これからも楽しいヴェルトライフを!】
「メンテナンスの御詫び、という名目で一人1000エーユだ。」
オルクスが銀貨を見せた。ジャラジャラ、と金属の擦れる音が高く響いた。
「そして僕達に重大なニュース。」
二枚目のボードが出現する。
【新機能! ファルベの仲間が増えます!】
【違反者を見つけたら彼らを呼ぼう!詳細は近日公開!】
「これって…。」
ヴィッツはボードに触れると目を伏せた。長い睫毛が瞳を隠す。
「…僕達はお払い箱らしい。」
今まで黙っていたユスティーツが口を開いた。何かを決意したような、厳しい表情。
「絶対にそんな事はさせない。」
「そ…そうだよ!こんなにあっさり止めさせられるなんて!」
ユスティーツに同意する俺をオルクスは冷たく見下ろしていた。
「…無駄だ。」
「シャル君、これは当然の結果なんだよ。さっきの仮定を覚えているかい?僕達の存在がバグを引き起こしている、そういう事だ。」
無限に使えるお金、最初から最大レベル、一人言モードが見える…
俺達に与えられた能力は、予想以上にヴェルトに不可をかけていた。
俺達が、俺達の世界を壊していた。
ヨシュカは、ヴェルトの平和を守る存在。
「…嫌だ。だって俺がヨシュカを辞めたら…ここにはもう、来られない。」
ヴェルトで使う金額は、とても高校生の財布では足りない。
トゥテラリィの救世主にもなれない。
一度手に入れてしまった強大な力に慣れてしまうと、もう俺は普通に楽しめない。わがままな事は分かっている。本来なら、ヴェルトはそういう場所だ。地道に努力をして、レベルを上げる。お金も慎重に使う。
でも、それでも、俺はヨシュカをやりたい。
「…こうなったら、神頼みだ。」
イデーは何かに気が付いたらしい。
「シャル、汝は…。」
「俺は中央教会に行く。公式の人物と話す事が出来るのはあの場所だけだ。お告げを聞く。」
「うん、線が現れて…」
「オルクスぅ、シャルの言う事信じるのぉ?」
洞窟から解放された俺は、集まったヨシュカ達に先程の現象を説明していた。シュピッツは仕事があるからとすぐに帰ってしまった。オルクスは途端に興味を失ったように、顔を逸らす。彼は興味が無い事には何も手を貸してくれない。ここは頑張って興味を引き付けないといけない。
「シャル君の視界がバグっただけの可能性もあるね。」
「ヴィッツさんまで…!そうだ紅糸、反応ありましたか!?」
イデーが首を振った。何度も繰り返した言葉のように、淡々と告げる。
「否、紅糸は…最初から普通の反応ではなかった。まるで上から無理やり数値を書き換えれられているような…そんな反応だった。」
「ところが、シャル君が言う線が現れた時に、数値が正常になったんだ。そしてこれを見て。」
空中にボードが表示された。ヴェルトのお知らせ等が書かれている。
【深刻なバグが発見された為、修正致しました】
【大変ご迷惑をおかけしました】
【これからも楽しいヴェルトライフを!】
「メンテナンスの御詫び、という名目で一人1000エーユだ。」
オルクスが銀貨を見せた。ジャラジャラ、と金属の擦れる音が高く響いた。
「そして僕達に重大なニュース。」
二枚目のボードが出現する。
【新機能! ファルベの仲間が増えます!】
【違反者を見つけたら彼らを呼ぼう!詳細は近日公開!】
「これって…。」
ヴィッツはボードに触れると目を伏せた。長い睫毛が瞳を隠す。
「…僕達はお払い箱らしい。」
今まで黙っていたユスティーツが口を開いた。何かを決意したような、厳しい表情。
「絶対にそんな事はさせない。」
「そ…そうだよ!こんなにあっさり止めさせられるなんて!」
ユスティーツに同意する俺をオルクスは冷たく見下ろしていた。
「…無駄だ。」
「シャル君、これは当然の結果なんだよ。さっきの仮定を覚えているかい?僕達の存在がバグを引き起こしている、そういう事だ。」
無限に使えるお金、最初から最大レベル、一人言モードが見える…
俺達に与えられた能力は、予想以上にヴェルトに不可をかけていた。
俺達が、俺達の世界を壊していた。
ヨシュカは、ヴェルトの平和を守る存在。
「…嫌だ。だって俺がヨシュカを辞めたら…ここにはもう、来られない。」
ヴェルトで使う金額は、とても高校生の財布では足りない。
トゥテラリィの救世主にもなれない。
一度手に入れてしまった強大な力に慣れてしまうと、もう俺は普通に楽しめない。わがままな事は分かっている。本来なら、ヴェルトはそういう場所だ。地道に努力をして、レベルを上げる。お金も慎重に使う。
でも、それでも、俺はヨシュカをやりたい。
「…こうなったら、神頼みだ。」
イデーは何かに気が付いたらしい。
「シャル、汝は…。」
「俺は中央教会に行く。公式の人物と話す事が出来るのはあの場所だけだ。お告げを聞く。」
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