夢の世界とアガーレール! 第一部 ―カナリアイエローの下剋上―

Haika(ハイカ)

文字の大きさ
上 下
18 / 40
第一部―カナリアイエローの下剋上―

ep.15 姐さんを、掘り起こします!

しおりを挟む
 「これって… 岩塩と、鉄鉱石じゃないか! あの山岳の地層から採掘したの?」

 ルカを解放し、僕の手に失われた魔法が戻ってきてすぐに、アゲハとマリアが何やら和気わき藹々あいあいと会話をしていた。
 アゲハが時たま手に取るのは、チョークで番号が書かれた石。マリアのドヤ顔が眩しい。

 「驚いたな。てっきり、あそこは嵐と落雷が凄いから活火山だと思っていたんだけど」
 「ううん、寧ろ逆だね。あそこは現実のヒマラヤ山脈みたいに、プレート同士がぶつかり合って隆起した場所なんだよ。事実、あのデカいスライムを倒してから嵐は収まったしね」
 「ふむ。嵐の原因はソイツだったかもしれないのか… 分かった。でかしたよマリア! これで、この大陸の地質学の研究がまた一歩前進する! アキラもありがとう」
 なんて、ちょっとインテリな会話をしている女子2人。

 僕とルカ、そしてサリイシュの4人はそんな理系の話を耳にしながら、今はとある広大な花畑へと目を向けていた。
 アガーレール王国の領土の一部ではあるけど、丸太の柵に囲まれたその奥は、ほぼ手づかずの場所。思いっきり駆け抜けていきたくなるような広大さを誇るが… 僕は質問した。

 「なぜ、これだけ大きい土地なのに、立ち入りが禁止されているんだ?」

 すると、サリイシュが僅かに怪訝な表情を浮かべながら、言葉を選ぶようにこう話した。

 「この花畑は、昔から『家を建てると呪われるからダメ』って言われている場所なの」
 「へ?」
 「理由はよく分からないけど、多分これだけキレイな花畑だから、手をつけちゃいけないよって事なのかもしれないのね。私たちの両親も、何度も口酸っぱくして言ってきたんだ」
 「あのころか。懐かしいなぁ。確かにこの花畑の奥にはこう、不思議な力というか、誰かの祖先が眠っているらしいオーラを感じるんだ。きっと、これも神の思し召しなのだろう」
 「…そのオーラって、正確にはどの辺りから感じ取れますか?」

 と、ここで訊いてきたのがルカだ。
 確かに、2人のその証言にはかなり引っかかる部分がある。イシュタが指をさした。

 「あそこに。少しだけ、地面が剥げて盛り上がっている場所から感じるんだ」

 と、少し怯えたような表情でいう。
 その間に、ルカはアゲハへと視線を向け、アイコンタクトで何かを訴えていた。アゲハがその意味を察したのか、コクリと頷いているが…

 「ただ、さっきも言ったように何かこう、掘っちゃいけないようなものが埋まっている気がするから…」と、イシュタが言い続けたその時。
 「にんにん!」

 ――え?

 シュルシュルシュル~!

 「「えぇぇぇぇぇー!!?」」

 なんと! イシュタの説明途中なのに、ルカが突然忍者のポーズで唱え、その「盛り上がった場所」から大きな百合の花たちを発芽させたではないか!
 それらは地面を割る様に伸びていき、土を振るい落としているような挙動さえ感じられた。そのうちの、花弁の中から顔を覗かせたのは…

 「え!? チャーム!!?」

 という僕の叫び通り、まさかのクリスタルチャームの浮上であった。

 「え、ウソ!? そんな所にチャーム埋まってたの!!?」
 と、後から展開に気づき駆けつけてきたマリアも、目を大きくする。

 ルカは“にんにん”のポーズを終えた。

 彼の目が、少しだけ鋭い。

 まさかとは思ったが、この土地で古くから(?)伝わっているとされている「呪いのオーラ」の正体が、クリスタルチャームから発するオーラだったなんて。
 僕もサリイシュも、開いた口がふさがらなかった。

 「やはり。お二方の証言からして、花畑にリリー姐さんのチャームが埋まっていると思ったんですよ。でも、どうして土の中なんかに…」

 ルカがそう不服そうに言っている間にも、アゲハがここで、背中から半透明状の大きなアゲハ蝶の翼を生やした。

 ヒラヒラ~♪
 と、ホバーボードに乗っているかの様に低空飛行だが、丸太の柵を軽々と飛び越え、チャームが掘り出された場所へと降り立ったアゲハ。
 チャームを手に取り、再びその場から飛び立つと、すぐに僕たちの所へ戻ってきた。

 すとっ。
 「このチャームも解放しよう。サリバ、イシュタ、できそう?」
 アゲハがそういって降り立ち、翼をフェードアウトさせた。2人は「うん」と頷いた。

 「今日だけで2つもチャームが見つかるなんて、凄い収穫じゃなーい!」
 「うん。人はたくさんいた方がいいからね。やろう、サリバ」

 そういって、再びおまじないの体勢に入った2人。
 さっきルカを解放したばかりなのに、まだおまじないを唱える力があるのか。と、僕は陰で感心したものだ。
 ルカは現地の百合を遠隔で消して、静かに見守る。マリアも、その瞬間を見入った。



 サリイシュのおまじない。チャームが再び眩しく発光した。

 チャームから、ルカの時と同じように虹色の光が輝く。そして…

 ドーン!

 大きな光は轟音とともに、空へと飛び出し、孤を描いて近くへと落下していった。


 スライム状の光が落下した周囲から、ルカ同様、大きな百合の花が咲き乱れる。

 だが、それはルカのカサブランカとは違い、次第に真っ黒な百合へと変わっていた。
 そして…

 すとっ


 百合の中で動いていた光が、1人のぱっつん前髪の女性として実体化した。
 彼女は解放されて早々、目元を隠す様に、頭の帽子を深く被る。

 百合の花のロゴがあしらわれた、クリスタルチャームの持ち主。リリーであった。

 「姐さん!」
 ルカが、真っ先にリリーの元へ駆け寄る。
 僕はというと、なぜリリーが顔を隠す様な仕草を見せているのか、少し疑問だったが。


 「す、すみません。折角の対面なのに… その。久々の太陽の光が、ちょっと眩しくて」

 そういうリリーが、照れ臭そうに困ったような笑顔を覗かせたのであった。



 【クリスタルの魂を全解放まで、残り 22 個】



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

年代記『中つ国の四つの宝玉にまつわる物語』

天愚巽五
ファンタジー
一つの太陽と二つの月がある星で、大きな内海に流れる二つの大河と七つの山脈に挟まれた『中つ国』に興り滅んでいった諸民族と四つの宝玉(クリスタル)にまつわる長い長い物語。

〈完結〉前世と今世、合わせて2度目の白い結婚ですもの。場馴れしておりますわ。

ごろごろみかん。
ファンタジー
「これは白い結婚だ」 夫となったばかりの彼がそう言った瞬間、私は前世の記憶を取り戻した──。 元華族の令嬢、高階花恋は前世で白い結婚を言い渡され、失意のうちに死んでしまった。それを、思い出したのだ。前世の記憶を持つ今のカレンは、強かだ。 "カーター家の出戻り娘カレンは、貴族でありながら離婚歴がある。よっぽど性格に難がある、厄介な女に違いない" 「……なーんて言われているのは知っているけど、もういいわ!だって、私のこれからの人生には関係ないもの」 白魔術師カレンとして、お仕事頑張って、愛猫とハッピーライフを楽しみます! ☆恋愛→ファンタジーに変更しました

処理中です...