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第一部―カナリアイエローの下剋上―
ep.9 今後の予定を発表します。
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そのあと。
僕たちは元の王宮、窓がある和室へと戻ってきた。
サリイシュはここの時間経過で、結構長いこと歩いてきたのだ。
そろそろ一軒家へ帰る頃なんじゃないかなーと思いつつ、僕は新たに解放された仲間のマリアとともに、アゲハから今後の件でこう話し合いがなされた。
「アキラが提案した通り、私達が一番にすべき任務は『クリスタルチャーム集め』だ。仲間をどんどん解放し、アキラ自身の能力も取り戻していく。もちろん、他にも理由はある」
「理由?」
「領土の拡大だよ。この星、つまりこの超大陸には、我々の想像を絶するような立入禁止区域が、全体の半分以上を占めている。こう見えて、意外と居住エリアが狭いんだよね」
「はぁ」
「私は国内と、その近辺の住民や種族たちに声掛けをする形で、彼らの中にチャームを所有している人がいないか探してみる。その間に、アキラ達には別の仕事を頼みたいんだ」
「いいけど、どんな仕事?」
「前述した、立入禁止区域への探索だよ。さっきマリアから電気魔法を授かったでしょ? 今のアキラは、雷に打たれても平気なはず。そんなあなたにピッタリの場所があってね」
ゴクリ。
だいたい、どんな所なのか想像はついた。でも、それって危険なんじゃ――?
なんて余計な文句を言う前に、ちゃんと最後まで人の話は聞かなきゃだな。アゲハがここで、部屋の片隅に置かれていた紙筒を手に取り、それを畳上に大きく広げた。
答えは、マリアの「わーお、でっかい地図だねー」という言葉通り。
その地図は、まるでパンゲア大陸みたいな形をした大きな島と、そこから海へと続く右端には、何やら黒い構造物が小さくちょこんと描かれているが…
「大陸内のここが、いま私たちがいるアガーレール王国の“中枢”。ここから北の森と、東の海岸まで続く平地が、この国の領土だ。
今度アキラ達に行ってもらうのは、国を出て西にある、内陸の山岳地帯。そこは一年中、猛烈な嵐と落雷が頻発している。毎年、この未開の地に宝探しへ出かけた人達がみな、感電して死ぬか、行方不明になっているんだよ」
「ヒッ! そんな危ない所に!?」
「もちろん、無茶な頼みなのはわかっている。だけど私の予想では、そういう人が入れないような場所に、案外チャームが転がっているかもしれないと思うんだ。というのも、実はこの場所の山頂に、昔から、雷とは違う『光る宝石の様なもの』があると云われていてね」
「なるほど~♪ つまり、そいつの正体が実はクリスタルチャームじゃないかって、今になって思うわけだ? いいんじゃない!? 嵐なんて、電光石火でいけば楽勝だよ~!」
なんてマリアはニッコニコの笑顔でいうけど、そういう命知らずな所は相変わらずだよなぁ、このおてんば娘は。
と、僕は先が思いやられた… けど、ここは当たって砕けろ精神でいくしかない!
「危険なエリアは、他にもたくさんある。猛毒のガスが充満していたり、マグマだらけの灼熱地帯だったり、水も食べ物もない広大な砂漠だったり――。
だから、少しずつみんなの魂や能力を解放して、今度はその力を使った未開の地へ行けるようにすれば、そこからデータを集め、何かしら対策を練る事ができるかもしれないだろ?」
「たしかに。つまり、それで将来的に人が住めるようにし、領地をどんどん広げていくと」
「そういうこと。アキラ達の能力を解放するだけでなく、それらの能力はこの国全体における、新たな可能性の発見にも繋がるわけだ。その―― どうしてこの星が存在し、仲間達が揃ってこの星へと散らばったのか。その『謎解き』も含めてね」
そういって、アゲハは哀愁を帯びた表情で、サリイシュの2人をみた。
2人は最初の時のように、揃って「?」と首をかしげている。
アゲハがここで、自分の耳に着けている、ピンクの宝石のイヤリングを触りながらいった。
「2人がいったように、これであのフェデュートを降伏させて、世界が平和になった暁には―― 天国にいるご両親にも、漸く顔向けが出来るのかな」
あっ… サリバとイシュタって、ともに孤児だったんだな。
そして、アゲハのその台詞からして―― きっと僕がここへ来るまでの間に、この国では敵対勢力との争いがあって、犠牲者も多数出たのだろう。悲しい歴史が見えてくる瞬間だ。
しかし、その話と、さっきアゲハが触れたピンクのイヤリングに、一体どんな関係があるんだろう? そこはちょっと気になる所であった。
そういえば、アゲハの両耳と両手首には、同じ雫型のピンクの宝石があしらわれたアクセサリーが計4つ、装飾されているが…
もしかして、この星で採掘されたレアな宝石なのかも?
「――話の続きは、また明日。アキラも急な旅路に駆り出されて疲れているだろうから、今日はもう、ここで休みなよ。マリアも。それに、サリバとイシュタも帰って寝な」
「「はい」」
アゲハによる、今度の任務の概要と、敵の存在がちらつく裏話はここで終了となった。
サリイシュは揃って立ち上がり、笑顔で王宮を後にする。
彼女たちと会うのは、また明日以降だろう。
クリスタルチャームに眠る魂を解放させるには、2人の力が必要不可欠だからだ。
さて、アガーレールへの旅、初日にしていきなりの王宮お泊りだな。
まぁ、泊まる家がないから、ここはアゲハも「やむなし」といった判断を下したのだろう。
それはマリアも一緒だけど、これだけ広い王宮だから、寝床は沢山ありそうである。
1つの部屋に、僕たち皆がギュウギュウ詰めになって寝るなんて事は、まずない。
だけど――。僕は、アゲハと隣同士で寝てもいいかな?
1日が20分という、とても短い世界線で、たった5~10分程度の仮眠になるのかは分からないけど、1人で眠るのは少し心許ない。
だから、今日くらいは――。
【クリスタルの魂を全解放まで、残り 24 個】
僕たちは元の王宮、窓がある和室へと戻ってきた。
サリイシュはここの時間経過で、結構長いこと歩いてきたのだ。
そろそろ一軒家へ帰る頃なんじゃないかなーと思いつつ、僕は新たに解放された仲間のマリアとともに、アゲハから今後の件でこう話し合いがなされた。
「アキラが提案した通り、私達が一番にすべき任務は『クリスタルチャーム集め』だ。仲間をどんどん解放し、アキラ自身の能力も取り戻していく。もちろん、他にも理由はある」
「理由?」
「領土の拡大だよ。この星、つまりこの超大陸には、我々の想像を絶するような立入禁止区域が、全体の半分以上を占めている。こう見えて、意外と居住エリアが狭いんだよね」
「はぁ」
「私は国内と、その近辺の住民や種族たちに声掛けをする形で、彼らの中にチャームを所有している人がいないか探してみる。その間に、アキラ達には別の仕事を頼みたいんだ」
「いいけど、どんな仕事?」
「前述した、立入禁止区域への探索だよ。さっきマリアから電気魔法を授かったでしょ? 今のアキラは、雷に打たれても平気なはず。そんなあなたにピッタリの場所があってね」
ゴクリ。
だいたい、どんな所なのか想像はついた。でも、それって危険なんじゃ――?
なんて余計な文句を言う前に、ちゃんと最後まで人の話は聞かなきゃだな。アゲハがここで、部屋の片隅に置かれていた紙筒を手に取り、それを畳上に大きく広げた。
答えは、マリアの「わーお、でっかい地図だねー」という言葉通り。
その地図は、まるでパンゲア大陸みたいな形をした大きな島と、そこから海へと続く右端には、何やら黒い構造物が小さくちょこんと描かれているが…
「大陸内のここが、いま私たちがいるアガーレール王国の“中枢”。ここから北の森と、東の海岸まで続く平地が、この国の領土だ。
今度アキラ達に行ってもらうのは、国を出て西にある、内陸の山岳地帯。そこは一年中、猛烈な嵐と落雷が頻発している。毎年、この未開の地に宝探しへ出かけた人達がみな、感電して死ぬか、行方不明になっているんだよ」
「ヒッ! そんな危ない所に!?」
「もちろん、無茶な頼みなのはわかっている。だけど私の予想では、そういう人が入れないような場所に、案外チャームが転がっているかもしれないと思うんだ。というのも、実はこの場所の山頂に、昔から、雷とは違う『光る宝石の様なもの』があると云われていてね」
「なるほど~♪ つまり、そいつの正体が実はクリスタルチャームじゃないかって、今になって思うわけだ? いいんじゃない!? 嵐なんて、電光石火でいけば楽勝だよ~!」
なんてマリアはニッコニコの笑顔でいうけど、そういう命知らずな所は相変わらずだよなぁ、このおてんば娘は。
と、僕は先が思いやられた… けど、ここは当たって砕けろ精神でいくしかない!
「危険なエリアは、他にもたくさんある。猛毒のガスが充満していたり、マグマだらけの灼熱地帯だったり、水も食べ物もない広大な砂漠だったり――。
だから、少しずつみんなの魂や能力を解放して、今度はその力を使った未開の地へ行けるようにすれば、そこからデータを集め、何かしら対策を練る事ができるかもしれないだろ?」
「たしかに。つまり、それで将来的に人が住めるようにし、領地をどんどん広げていくと」
「そういうこと。アキラ達の能力を解放するだけでなく、それらの能力はこの国全体における、新たな可能性の発見にも繋がるわけだ。その―― どうしてこの星が存在し、仲間達が揃ってこの星へと散らばったのか。その『謎解き』も含めてね」
そういって、アゲハは哀愁を帯びた表情で、サリイシュの2人をみた。
2人は最初の時のように、揃って「?」と首をかしげている。
アゲハがここで、自分の耳に着けている、ピンクの宝石のイヤリングを触りながらいった。
「2人がいったように、これであのフェデュートを降伏させて、世界が平和になった暁には―― 天国にいるご両親にも、漸く顔向けが出来るのかな」
あっ… サリバとイシュタって、ともに孤児だったんだな。
そして、アゲハのその台詞からして―― きっと僕がここへ来るまでの間に、この国では敵対勢力との争いがあって、犠牲者も多数出たのだろう。悲しい歴史が見えてくる瞬間だ。
しかし、その話と、さっきアゲハが触れたピンクのイヤリングに、一体どんな関係があるんだろう? そこはちょっと気になる所であった。
そういえば、アゲハの両耳と両手首には、同じ雫型のピンクの宝石があしらわれたアクセサリーが計4つ、装飾されているが…
もしかして、この星で採掘されたレアな宝石なのかも?
「――話の続きは、また明日。アキラも急な旅路に駆り出されて疲れているだろうから、今日はもう、ここで休みなよ。マリアも。それに、サリバとイシュタも帰って寝な」
「「はい」」
アゲハによる、今度の任務の概要と、敵の存在がちらつく裏話はここで終了となった。
サリイシュは揃って立ち上がり、笑顔で王宮を後にする。
彼女たちと会うのは、また明日以降だろう。
クリスタルチャームに眠る魂を解放させるには、2人の力が必要不可欠だからだ。
さて、アガーレールへの旅、初日にしていきなりの王宮お泊りだな。
まぁ、泊まる家がないから、ここはアゲハも「やむなし」といった判断を下したのだろう。
それはマリアも一緒だけど、これだけ広い王宮だから、寝床は沢山ありそうである。
1つの部屋に、僕たち皆がギュウギュウ詰めになって寝るなんて事は、まずない。
だけど――。僕は、アゲハと隣同士で寝てもいいかな?
1日が20分という、とても短い世界線で、たった5~10分程度の仮眠になるのかは分からないけど、1人で眠るのは少し心許ない。
だから、今日くらいは――。
【クリスタルの魂を全解放まで、残り 24 個】
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