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第一部―カナリアイエローの下剋上―

ep.5 嘘つきドワーフからチャーム奪還!

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 「ところで。アキラがこの世界に召喚された理由って、ひまわり組いわく『クリスタルチャームに閉じ込められた仲間達の魂を解放するためだ』っていってたよね?」

 話は本題へと切り替わった。実をいうと、これこそが最も重要な部分である。

 僕は「うん」と頷いた。
 すると、アゲハが顎をしゃくりながらサリバとイシュタを見る。

 「それって… もしかしたら、サリバ達が幼少期から感じ取っている、『魂の息吹』と何か関係があるかもしれない」

 魂の息吹?
 サリバとイシュタには一体、どんな力が秘められているのだろう? 芋を浮遊する以外。

 「2人はとても感受性が高くてね。霊感が強い、ともいうのかな? どこかから普段とは違うオーラを感じ取ったり、災害の夢を見てそれが的中したり」
 「そうなの?」
 「え? えへへ… えーと。前に、ドワーフおじさんの1人からこう、電流が走るような不思議なオーラを感じ取ってね。それで、近くに寄ってみたら、ただ女王様が身に着けているのと同じ様なアクセサリーをもって、それを見てニヤニヤしているだけだったんだけど」

 と、サリバが気恥ずかしそうに一例を語ってくれた。

 その発言には、幾つも無視できない情報が含まれていたのだ。
 アゲハが立ち上がった。

 「そのドワーフおじさんって、だれ!?」

 アゲハの表情は、至って真剣そのもの。
 僕もイシュタも、少しばかり戸惑うサリバへと目を向ける。

 そういえば… 外はもう夜が明け、日の出を迎えようとしているな。

 「ブーブさん。よくハーフリングの酒場で、早朝まで飲んでいる人」
 「あの人か…! もうすぐ夜が明ける。もしかしたら、今はちょうど帰りの途中かも」

 お? その様子だと、今からそのドワーフの自宅へ向かうのかな!?
 僕たちもここは立ち上がり、アゲハの後を追う事にした。
 ちょうどお茶を飲み終えたタイミングだし、外出にはもってこいの早朝である。



 ――――――――――



 アゲハを先頭に、僕たちが向かったのは王宮の裏の深い森。

 現実世界ではあまり見ないような、とてつもなくデカい樹木がたくさん生い茂るそこは、木の根っこや岩肌を伝って、人為的に穴が掘られている個所が幾つもあった。
 雨水が入ったら大変なんじゃないか、という利便性の悪さを一瞬危惧したものの、ここは異世界である。人間以外の種族が暮らしている時点で、現実のそれとはわけが違うのだ。

 「いた!」

 その問題のほら穴の前で、フラフラとした足取りで歩いている初老っぽい男性が1人。

 長い口ひげをたくわえ、頭にはノーム帽を被った、がっしりとした体形の小人。
 あれが、そのドワーフ族の「ブーブ」という方かな?

 僕はその人とサリバ、両者をチラチラと見た。サリバが、緊張した面持ちで呟いた。
 「あの時と、同じオーラを感じる」

 という事は、ブーブの手にはそれらしきもの・・・・・・・が握られている可能性があるんだな?
 僕はさらに、洞穴へ入ろうとするブーブの手元を注目してみた。

 片手には、ビール瓶らしきものと、もう片手には、キラキラとぶら下がったアクセサリー。
 それはよく見ると、六角柱のクリスタルが嵌められた銀の…

 て、クリスタルチャームそのものじゃないか!
 ビンゴ! 僕達は遂に見つけた!


 「ちょっとブーブさん! まって」
 先頭にいるアゲハが、そういってブーブの方向へと手をかざした。

 ブーブは、少しふらつきながらもこちらへ振り向く。すると、途端に驚きの声を上げた。

 「へ!? じょ、女王陛下!? まさか、こんな場所に陛下が来られるとは!」
 「ねぇブーブさん。大至急、その手に持っている水晶のアクセサリーを私に預からせて」
 なんて、藪から棒にクリスタルチャームを寄越すようねだるアゲハ。だが、
 「へ!? え、えーと? あっし、そんなもん持ってはいませんがね~。アハハハハ」

 といいながら、咄嗟にそのチャームを背中に隠し、自身の袖に入れ込もうとしたのだ。

 こいつ、平然とウソを吐きやがったな!
 そのチャームをどうするつもりか知らないが、アゲハ女王がその存在に気づいて頼んできたというのに、隠すとはいい度胸じゃないか。僕はブーブの横へと走っていった。

 「それー!」

 ガシッ!

 「どわああああああーっふ!?」
 ブーブをタックルする様な形で、チャームを、サッと奪う!
 その遠心力で、体が回転するブーブ!
 僅かな抵抗で身を投げ出されそうになるけど、そこもパルクールでカバーする僕!

 すたっ

 「よっと。チャームを手に入れた!」

 森の集落のはずれで、チャームがこの手にある事を証明する。
 もっと抵抗される可能性を想定して、思い切った行動をとって良かった。

 「「おー!」」
 サリバとイシュタが、揃って拍手をする要領で、僕のパフォーマンスを褒めた。
 「すごーい! あの屈強なドワーフから、アクセサリーをゲットするなんて」
 「そのアクセサリー。確かに、女王様が持っていたそれとほぼ一緒だ!」

 僕がもっているのも同じものなんだけどね。
 さて、そうなると気になるのが、グルグル回転させられたブーブだが…

(つづく)



※主人公の芹名アキラ、国から借りた紋付袴。
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