1 / 40
プロローグ
ep.1 神々が生んだ息子、芹名アキラ。
しおりを挟む【夢の世界とアガーレール!】
作 ハイカ
――ませ。
遠くから、声が響く。
――だ… 覚ませ…
聞き覚えのある声だ。
そして、僕の視界は、段々と明るくなってきて…
――――――――――
「起きるんだ。目を覚ませ」
声が、鮮明になった。
重い瞼を、ゆっくりと開く。
光が、眩しい。
けど、段々と鮮明になってきたそこは、光の反射もないような、とても暗い空間だった。
側面には、無数の… モニターだろうか?
そして、そんな僕の目の前には、
「やっと目覚めたか。あ~長かったぁ」
「もう、目覚めなかったらどうしようって、心配だったんだから」
濃い灰色をベースに、チュール生地のアクセントが入ったブレザー姿の、若い男女。
僕が目覚めた場所はなぜか、黒くて特殊な素材でできたベッド。
男女2人に、向かいあって見下ろされる形で、僕は仰向けに寝かされていたのだ。
僕はゆっくり上体を起こした。
辺りを見渡してみる。部屋は黒く、壁があるのかないのか怪しい。
「ねぇ。あなた、ここで目が覚める前に、どこで何をしていたか覚えてる? 名前は?」
僕にそう聞いてくるってことは、あれからかなりの日数が経過しているのか。
いや。その前に自分が何者なのか、ここで言わなきゃダメだ。
きっと相手は、僕が長い眠りによって記憶喪失に陥っているのではないかと疑っている。
もちろん、こうして冷静にいられるくらいには、僕の記憶は飛んでいないのだと信じたいけど… ぶっちゃけ今の状況も気になるが、まずは深呼吸をしてからだな。
「セリナ――。芹名アキラ」
それが、僕の名前だ。
続けて、さらに細かいプロフィールの紹介もしていく。
「1997年4月2日生まれ、東京都出身。本職は自営業で、在宅ワーカーの個人事業主なのと… あとは、夢の世界で皆に出会ったことかな。
夢の世界での俺は、中高一貫に在籍する高校生で、虹色蝶の魔法というか、奇跡が使えていた。夢の世界での暮らしが終わるその瞬間まで、公民館を貸し切り、神様同士みんなでパーティーをしていた事は覚えている」
僕はまるで本を読み上げる様に、目を瞑りながら、相手に伝えるべき要所要所を口にだした。
そして目を開け、彼らの反応を待つ。
「ふむ… その様子だと、長い眠りで記憶が飛んでるって事は、なさそうだな」
「えぇ。ところで、私達のことは分かる?」
彼らは更にそう訊いてきたので、僕は「うん」と頷いた。
「イングリッドと、ミネルヴァ。通称『ひまわり組』。2021年度の、神の跡取りゲームにおいて選抜された、新しい神様2人。日向英才と、葵井莢」
僕はそう答えた。
この男女の事は、夢の世界とやらで何度も会ったから、覚えている。
「「!!」」
二人の肩が、一瞬だけピクリと上がった。出てきた返事は、
「なんだよ。まさか、本名まで言い当てるとは思わなかったぞ」
「でも良かった。私達の事もちゃんと覚えているみたいで」
だった。安堵したところは共通か。
でも、これで僕自身も陰で安堵したのは事実だ。だって、自分の頭のネジがこれで吹っ飛んでいないという事が、彼らの証言で分かったから。
でも、その前に気になる事がある――。ここは一体、どこだろう?
そんな僕を前に、イングリッドの口から、こんな経緯が。
「起きたらこんな殺風景な所で、驚くのも無理はない。ここは上界にある、天国と地獄の狭間。つまり『あの世』の一端だ。もちろんお前は生きている。地獄に行っていないからな」
「ん? えーと」
「セリナ、落ち着いてよく聞くんだ。神の跡取りゲームが終わり、俺達の魂が夢と現実の二世界で分離した“あの日”から―― お前は、地球時間の基準で3年も眠っていたんだよ」
「え… 3年!?」
「それともう1つ、残念な知らせがある。俺たちが一同を介し、寝ている間の『夢』として過ごしていたあの夢の世界は、消滅した可能性が高い。探しても見つからないんだ」
「うそ」
次から次へと、衝撃的な事実を告げられた。
僕はそれが、どれほどショッキングな出来事なのか想像できる。手が、僅かに震えだした。
「他のみんなは? どうして、世界が消滅なんてしたの!? 皆の元きた世界は!!?」
僕は、自分がここにいる理由よりも先に、他の皆の安否が心配になった。
「それらも消えたかどうかさえ分からない。夢の世界が突然散って、俺たちが半ば強制的に上界へ飛ばされた時に、こうして体が見つかったのがセリナ。お前1人だけだったんだよ」
「そんな」
「ねぇイングリッド。その言い方だと、まるで皆死んでしまったみたいじゃない。やっとそれらしき波長を捉え、出所である惑星も特定できたのだから、まだ希望が残ってるはずよ」
ミネルヴァが、顎をしゃくりながらそういう。
今の言葉は、この絶望的な状況の中で差す、一筋の小さな“光”のように感じられた。
「波長って? 惑星って?」
僕がそれらを反芻すると、ミネルヴァがここで、部屋の一角にあるモニターの1画面を指さした。
それは、地球―― によく似た、水、雲、そして緑の大地に覆われた岩石惑星だった。
(つづく)
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~
丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月
働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。
いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震!
悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。
対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。
・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。
もう少しマシな奴いませんかね?
あっ、出てきた。
男前ですね・・・落ち着いてください。
あっ、やっぱり神様なのね。
転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。
ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。
不定期更新
誤字脱字
理解不能
読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる