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03:終章
翌の初朝
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昨晩は「こちらが奥様の自室です」と案内された部屋で休み、朝になると侍女が二人部屋に入ってきて、私を起こしてくれました。
お一人の年配の女性の方は以前から見知った顔で、侯爵家の侍女長だったはずです。もう一人の若い女性の方は、始めましてでしょうか、一度も会ったことが無いと思います。
「「おはようございます。奥様」」
お二人とも計ったようにきっちり同じ角度の綺麗な礼でした。
流石は侯爵家の侍女ですね……
私も「おはようございます」と返した後、少々気になることを聞いてみました。
「私が奥様と言うのはどうなんでしょうか?」
確かに私はアウグスト様の奥様ですが、爵位はまだお義父様であるフェスカ侯爵にありますし、フェスカ侯爵夫人がいらっしゃいます。従ってその呼び方は不適切ではないかと思ったのです。
「フェスカ侯爵夫人は、大奥様でございます」
侍女長は私が問い掛けた意味を理解してくれ、欲しかった答えをくれました。
「と言うことは、アウグスト様は旦那様ですか?」
「左様でございます」
我や家とは違いますが、ここではそうなのだと理解しました。
侍女長から「他には何かございますか?」と聞かれたので、もう何も無いですよーと伝えると彼女より、若い方の侍女の紹介がありました。
「こちらは奥様の身の回りのお世話を担当させて頂きます、ドロテーと申します」
「ドロテーです。至らない点があるかと思いますが、一生懸命お仕えさせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」と、言った後に「ところでドロテーは他には誰のお世話をするの?」と、侍女長に確認しておきます。
彼女の担当スケジュールもある程度把握しておかないと困りますからね。
すると今度の質問は意図が正しく伝わらなかったようで、
「奥様のお世話をさせていただくだけですが?」と、不思議な顔をされました。
……ん?
「えーと、私達は少しばかりお互いを知るべきだと思うの」そう前置いて、我や家の話を伝えました。
私のお世話をしてくれていた侍女は、私と弟のディートリヒの二人を担当していました。もう一人居た侍女はお父様とお母様担当です。それを束ねるのが侍女長のイレーネでしたよと。
侍女長は私の説明を聞いてどうやら理解してくれたようで、
「奥様だけにお仕えする専用の侍女でございます」と教えてくれました。さらに最初のうちはドロテーと自分の二人でお世話させていただきますと言われます。
そして「二人でご不便でしたら他にも侍女をつけますが?」と……。
専属二人なんて勿体無い! と、思いましたが参考までにと、お義母様の侍女の数を聞いてみました。なんとびっくり全員で三人いると教えて貰いました。
そう言えば使用人の数が段違いだったことを思い出し、改めて子爵と侯爵の常識の差を思い知ったのです。
お互いの自己紹介を終えると、早速ドロテーに身嗜みを整えて貰います。
実家から持ってきた衣装は昨日の内にすでに収納されており、ドロテーからどれを着るかと質問がありました。
どれも似たような着易いワンピースばかりですから、正直どれでも良いのですが……
最初は仕方ないわよね~と、ドロテーに案内されるまま隣の部屋へ向かいました。
あれ、なんで隣の部屋?
寝室の隣のドアを開けますと、部屋一杯にずらずらずら~っとこれでもかと衣装が並んでいたのです。
たぶん普段着と思われる簡易なドレスに始まり、夜会用と思わしき豪華なドレスなどなど……、むしろ私が持ってきたような普通の服の方が少ない模様です。
「へ!?」
余りにも凄い数の衣装に気圧されます。
出来る女の侍女長には私の疑問などはお見通しだったようで、
「こちらの衣装は、大奥様が奥様の為にとお揃えになっておられます」
あ、そうですかお義母様が……
どれにしますか? と、目をキラキラさせて待っているドロテーに、私は。後で土いじりする予定もあるので汚れても良い、自宅から持ってきたワンピースを指して……
ちょっと待て自分と、我に返ります。
折角用意して頂いた衣装を着なかった時、あのお義母様ならどう思うか?
きっと、「気に入らなかったのね、じゃあ一緒に服を買いに行きましょう!」となるはずで、服に無頓着な私にとってそれは精神的によろしくない。
「えっと、この辺の服でお願いします……」
ドレスではないけど、どこか高級そうな服の一群を指しました。
袖を通すと、造りの丁寧さや生地の良さから、そこはかとない高級感を味わいます。
うぅこれで土いじりは出来ないわ……
身支度を終えれば、私はドロテーと侍女長を伴って食堂へ向かいました。
その途中では侍女長より、侯爵家では家族揃って食事をするのが決まりだと説明されます。確かに以前から侯爵夫妻とご一緒する事が多かったのですが、決まりだったのですねと、納得しました。
食堂へ入ると、沢山の使用人が綺麗に整列して立っていました。
あれ、前はこんな風じゃなかったのに? と、首を傾げていると、
「「「おはようございます。奥様!」」」
全員が声を揃えて、綺麗な礼を見せられました。
こちらは住み込みではない使用人の方々だそうで、昨夜は帰宅しておりまだ挨拶をしていなかったと言う話でした。
侯爵家には一体何人の使用人がいるんですかね!?
お一人の年配の女性の方は以前から見知った顔で、侯爵家の侍女長だったはずです。もう一人の若い女性の方は、始めましてでしょうか、一度も会ったことが無いと思います。
「「おはようございます。奥様」」
お二人とも計ったようにきっちり同じ角度の綺麗な礼でした。
流石は侯爵家の侍女ですね……
私も「おはようございます」と返した後、少々気になることを聞いてみました。
「私が奥様と言うのはどうなんでしょうか?」
確かに私はアウグスト様の奥様ですが、爵位はまだお義父様であるフェスカ侯爵にありますし、フェスカ侯爵夫人がいらっしゃいます。従ってその呼び方は不適切ではないかと思ったのです。
「フェスカ侯爵夫人は、大奥様でございます」
侍女長は私が問い掛けた意味を理解してくれ、欲しかった答えをくれました。
「と言うことは、アウグスト様は旦那様ですか?」
「左様でございます」
我や家とは違いますが、ここではそうなのだと理解しました。
侍女長から「他には何かございますか?」と聞かれたので、もう何も無いですよーと伝えると彼女より、若い方の侍女の紹介がありました。
「こちらは奥様の身の回りのお世話を担当させて頂きます、ドロテーと申します」
「ドロテーです。至らない点があるかと思いますが、一生懸命お仕えさせて頂きます」
「はい、よろしくお願いします」と、言った後に「ところでドロテーは他には誰のお世話をするの?」と、侍女長に確認しておきます。
彼女の担当スケジュールもある程度把握しておかないと困りますからね。
すると今度の質問は意図が正しく伝わらなかったようで、
「奥様のお世話をさせていただくだけですが?」と、不思議な顔をされました。
……ん?
「えーと、私達は少しばかりお互いを知るべきだと思うの」そう前置いて、我や家の話を伝えました。
私のお世話をしてくれていた侍女は、私と弟のディートリヒの二人を担当していました。もう一人居た侍女はお父様とお母様担当です。それを束ねるのが侍女長のイレーネでしたよと。
侍女長は私の説明を聞いてどうやら理解してくれたようで、
「奥様だけにお仕えする専用の侍女でございます」と教えてくれました。さらに最初のうちはドロテーと自分の二人でお世話させていただきますと言われます。
そして「二人でご不便でしたら他にも侍女をつけますが?」と……。
専属二人なんて勿体無い! と、思いましたが参考までにと、お義母様の侍女の数を聞いてみました。なんとびっくり全員で三人いると教えて貰いました。
そう言えば使用人の数が段違いだったことを思い出し、改めて子爵と侯爵の常識の差を思い知ったのです。
お互いの自己紹介を終えると、早速ドロテーに身嗜みを整えて貰います。
実家から持ってきた衣装は昨日の内にすでに収納されており、ドロテーからどれを着るかと質問がありました。
どれも似たような着易いワンピースばかりですから、正直どれでも良いのですが……
最初は仕方ないわよね~と、ドロテーに案内されるまま隣の部屋へ向かいました。
あれ、なんで隣の部屋?
寝室の隣のドアを開けますと、部屋一杯にずらずらずら~っとこれでもかと衣装が並んでいたのです。
たぶん普段着と思われる簡易なドレスに始まり、夜会用と思わしき豪華なドレスなどなど……、むしろ私が持ってきたような普通の服の方が少ない模様です。
「へ!?」
余りにも凄い数の衣装に気圧されます。
出来る女の侍女長には私の疑問などはお見通しだったようで、
「こちらの衣装は、大奥様が奥様の為にとお揃えになっておられます」
あ、そうですかお義母様が……
どれにしますか? と、目をキラキラさせて待っているドロテーに、私は。後で土いじりする予定もあるので汚れても良い、自宅から持ってきたワンピースを指して……
ちょっと待て自分と、我に返ります。
折角用意して頂いた衣装を着なかった時、あのお義母様ならどう思うか?
きっと、「気に入らなかったのね、じゃあ一緒に服を買いに行きましょう!」となるはずで、服に無頓着な私にとってそれは精神的によろしくない。
「えっと、この辺の服でお願いします……」
ドレスではないけど、どこか高級そうな服の一群を指しました。
袖を通すと、造りの丁寧さや生地の良さから、そこはかとない高級感を味わいます。
うぅこれで土いじりは出来ないわ……
身支度を終えれば、私はドロテーと侍女長を伴って食堂へ向かいました。
その途中では侍女長より、侯爵家では家族揃って食事をするのが決まりだと説明されます。確かに以前から侯爵夫妻とご一緒する事が多かったのですが、決まりだったのですねと、納得しました。
食堂へ入ると、沢山の使用人が綺麗に整列して立っていました。
あれ、前はこんな風じゃなかったのに? と、首を傾げていると、
「「「おはようございます。奥様!」」」
全員が声を揃えて、綺麗な礼を見せられました。
こちらは住み込みではない使用人の方々だそうで、昨夜は帰宅しておりまだ挨拶をしていなかったと言う話でした。
侯爵家には一体何人の使用人がいるんですかね!?
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