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02:閑話

歌劇

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 本日はお義母様に誘われて、歌劇を観に街の中心部に有る劇場へやってきました。
 公演時間と場所が決まっていますので、今日の私はギュンツベルク家から直接馬車で向かっています。
 劇場前の馬車の停留所で首尾よくお義母様と合流しました。


 お義母様がこの日の為にと準備された二階のロココ調の部屋はかなり広めで、どうやら5~6人程度がゆったりと観れるように設計されているようです。

 ちなみに本日は、私とお義母様、そして婚約者のアウグスト様の三名のみ。
 う~ん、広すぎですね……


 部屋に入ると早々に、お義母様より一番良く観えるというソファを薦められまして、私は薦められるままそこに座りました。
 その隣にはスッとお義母様が座られます。

 あれ、今軽くブロックしませんでしたか?
 しぶしぶ顔でアウグスト様はお隣のソファに座られましたよね!?


 本日の歌劇は、市民の方から大層人気のある題材です。
 以前、お義母様と本のお話をした際に話したのもこの題材の書籍でした。
 簡単に言えば、ただの市民だった侍女に王子様が一目惚れし、周りの反対を押し切って結婚すると言う話です。
 まぁ良くある設定のお話ですが、実はこれが本当にあった話だというから驚きです。
 何でも四代前の国王様の実話だとか。
 王族に一般市民の血が混ざったのは初めてだと言う話でした。

 この時代以降は、王族でさえ~と大義名分が手に入るようになりまして、それ以来は貴族の間でも一般市民との婚礼が公に行われるようになったと言います。
 やはり婚礼と言うのは人に祝われてなんぼですからねー
 そう思えば、四代前の国王様は良くやったと、日本の一般市民を代表して言わせて頂きます。


 歌劇が始まりますと、それはもうどこから声出てるんですか? と言わんばかりの声が劇場一杯に響きます。
 いやはや、マイクも無いのに凄いわ~!

 役者さんの声量に感動していると、お義母様から建物の構造で声が反響するのよ、とご教授頂きました。
 へぇ~、ちなみにこの部屋は特に反響する一番良い場所だそうですよ。
 きっとお高いんでしょうね……


 肝心の歌劇はと言うと、色々と本と違っているようです。

 まずですね、一般市民の侍女役の女優さんがどう見ても私より派手で美しいのです。私が負けることは良くあることなのですが……
 あの女優さんは一般市民出身の侍女には確実に見えませんよね?


 そして王子様役ですが……
 この人チャラくないですかね?

 確かに公演時間内にグイグイ行かなければならないのでしょうが、その押し方はチャラ過ぎる。本で言うところの心理描写がかなりカットされている模様です。

 しかしながら、まぁこれはこれかな~と、私は割り切って大層楽しんで観ていたようです。

 ふと視線を感じて隣を見ると、お義母様がにこやかに私を見ており、さらに隣のソファではアウグスト様が微笑みながら私を見ていました。

 いやいや、劇観ましょうよ、ね?



 ここから佳境に入るぞーと言うところで、緞帳が降りてきます。
 どうやら公演は前後半構成だそうで、前半にあたる本日はここで終了。

 だったらもう少し王子のチャラさを減らしても良かったのでは? と、疑問が残ります。
 少しばかり疑問はありましたが、中々に面白いものでした。

「リンデちゃん、どうだったかしら?」
 だからお義母様の問いかけに、私は「とても、面白かったです」と、笑顔で返しました。
 ご満悦のお義母様でした。

「また行きましょうね!」
 笑顔のお義母様に見送られて、私は呼んでおいたギュンツベルク家の馬車に乗りました。

 馬車に乗ってから、気づいた事。
 あ、そう言えばアウグスト様と話してないわ……
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