32 / 32
32:甘いひと時
しおりを挟む
仕事を終えて家に帰るところで今日は少しだけ寄り道をする。
家に帰るといつも通りベリーが出迎えてくれる。あれほど気恥ずかしかったキスも最近は自然にできるようになった。
ベリーが身を放したところで寄り道で入手した小さな箱を手渡した。
もし俺がこれを突然渡されればきっと首を傾げただろう。しかしベリーはそれがなんだかわかったようで、
「あらケーキ」
「日頃のお礼だ、受け取ってくれ」
「お礼と言われても。私はお礼を言われるようなことは何もしていませんわ」
そんなことはないぞと言いかけてハッと気づく。
もしやベリーは……N
「ケーキ……嫌いだったか?」
「い、いえ。大好きです」
俺を勘違いさせたことに慌てて、両手を上げて全力で否定する姿が大変可愛らしい。
「なら良かった。食後にでも食べてほしい」
「ありがとうございます」
ベリーは微笑みつつ箱を受け取ってくれた。
食後、ベリーがケーキを皿に乗せてきた。
落とさないように両手で皿を持ち、ことさら慎重に歩く様はなんだか微笑ましい。
「なんで笑ってるんですか?」
「む。笑っていたか」
「ええしっかり笑ってましたわ」
「そうだったかすまん」
前はよく表情が読めないと言われたものだが、ベリーとの生活は新鮮で楽しいから、その影響で表情に現れるようになったのだろうか?
お皿の上にはフルーツが乗った小さな三角の物体。
それをベリーは小さく切って口に運ぶ。
その仕草はさすがは貴族のご令嬢。優雅だし綺麗だし動きには一切の無駄がない。
ケーキの良し悪しは俺にはわからんので、周りの女性騎士らに聞いて一番多く名前が上がった店で買ってきた。
多分間違いはないだろう。
そしてベリーの頬が緩み、よし! と心の中で手を握り締める。
「……どうかしましたか?」
「いや何でもないぞ」
まさか観察していたなどと言うわけにもいかず、慌てて視線を反らす。
すると入れ違いにこちらを凝視していたベリーは、ことさら大きくケーキを切り分けると、それをフォークに乗せ下に手を添えながらこちらへ差し出してきた。
いわゆる『あーん』という姿勢だ。
「決して食べたかったわけではないぞ」
そもそも食べたければケーキは一つじゃなくて、二つ買ってきている。
「違いましたか」
「ああ。取ったりしないから安心して食べてくれ」
「これはお裾分けです。
さっ、あーん」
ことさら大きく切り分けたケーキの塊を見たあと、彼女は口角を上げてすごく楽しそうな笑みを浮かべた。
それは悪戯心満載の笑み。
俺は視線をケーキとベリーの間で何度も行き来させた。
だが彼女の手は微動だにしない。
「むう、どうしても食べないとダメか」
「ケーキはお嫌いですか」
「普通だな」
「ああっどうしましょう! 手が疲れてきました」
体を倒して口を近づけると、ケーキがそっと入ってきた。
「……むぐ。甘いな」
「ふふっ。じゃあ今度甘さ控えめのケーキを焼きますね」
「すごいな。ベリーはケーキまで焼けるのか」
「はい。ぜひご期待ください」
「ああ楽しみに待っていよう」
「あら今日は素直ですね」
「もちろんだ。ベリーも楽しみにしていろよ」
「私ですか?」
「ああ次は俺があーんをしてやろう」
「っ!? そ、それは、はい。お待ちしてます、ね」
頬を染める可愛らしいベリーにあてられて、こっちまで赤面させられた。
家に帰るといつも通りベリーが出迎えてくれる。あれほど気恥ずかしかったキスも最近は自然にできるようになった。
ベリーが身を放したところで寄り道で入手した小さな箱を手渡した。
もし俺がこれを突然渡されればきっと首を傾げただろう。しかしベリーはそれがなんだかわかったようで、
「あらケーキ」
「日頃のお礼だ、受け取ってくれ」
「お礼と言われても。私はお礼を言われるようなことは何もしていませんわ」
そんなことはないぞと言いかけてハッと気づく。
もしやベリーは……N
「ケーキ……嫌いだったか?」
「い、いえ。大好きです」
俺を勘違いさせたことに慌てて、両手を上げて全力で否定する姿が大変可愛らしい。
「なら良かった。食後にでも食べてほしい」
「ありがとうございます」
ベリーは微笑みつつ箱を受け取ってくれた。
食後、ベリーがケーキを皿に乗せてきた。
落とさないように両手で皿を持ち、ことさら慎重に歩く様はなんだか微笑ましい。
「なんで笑ってるんですか?」
「む。笑っていたか」
「ええしっかり笑ってましたわ」
「そうだったかすまん」
前はよく表情が読めないと言われたものだが、ベリーとの生活は新鮮で楽しいから、その影響で表情に現れるようになったのだろうか?
お皿の上にはフルーツが乗った小さな三角の物体。
それをベリーは小さく切って口に運ぶ。
その仕草はさすがは貴族のご令嬢。優雅だし綺麗だし動きには一切の無駄がない。
ケーキの良し悪しは俺にはわからんので、周りの女性騎士らに聞いて一番多く名前が上がった店で買ってきた。
多分間違いはないだろう。
そしてベリーの頬が緩み、よし! と心の中で手を握り締める。
「……どうかしましたか?」
「いや何でもないぞ」
まさか観察していたなどと言うわけにもいかず、慌てて視線を反らす。
すると入れ違いにこちらを凝視していたベリーは、ことさら大きくケーキを切り分けると、それをフォークに乗せ下に手を添えながらこちらへ差し出してきた。
いわゆる『あーん』という姿勢だ。
「決して食べたかったわけではないぞ」
そもそも食べたければケーキは一つじゃなくて、二つ買ってきている。
「違いましたか」
「ああ。取ったりしないから安心して食べてくれ」
「これはお裾分けです。
さっ、あーん」
ことさら大きく切り分けたケーキの塊を見たあと、彼女は口角を上げてすごく楽しそうな笑みを浮かべた。
それは悪戯心満載の笑み。
俺は視線をケーキとベリーの間で何度も行き来させた。
だが彼女の手は微動だにしない。
「むう、どうしても食べないとダメか」
「ケーキはお嫌いですか」
「普通だな」
「ああっどうしましょう! 手が疲れてきました」
体を倒して口を近づけると、ケーキがそっと入ってきた。
「……むぐ。甘いな」
「ふふっ。じゃあ今度甘さ控えめのケーキを焼きますね」
「すごいな。ベリーはケーキまで焼けるのか」
「はい。ぜひご期待ください」
「ああ楽しみに待っていよう」
「あら今日は素直ですね」
「もちろんだ。ベリーも楽しみにしていろよ」
「私ですか?」
「ああ次は俺があーんをしてやろう」
「っ!? そ、それは、はい。お待ちしてます、ね」
頬を染める可愛らしいベリーにあてられて、こっちまで赤面させられた。
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
あなたより年上ですが、愛してくれますか?
Ruhuna
恋愛
シャーロット・ロックフェラーは今年25歳を迎える
5年前から7歳年下の第3王子の教育係に任命され弟のように大事に大事に接してきた
結婚してほしい、と言われるまでは
7/23 完結予定
6/11 「第3王子の教育係は翻弄される」から題名を変更させて頂きました。
*直接的な表現はなるべく避けておりますが、男女の営みを連想させるような場面があります
*誤字脱字には気をつけておりますが見逃している部分もあるかと思いますが暖かい目で見守ってください
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
【完結】大変申し訳ありませんが、うちのお嬢様に貴方は不釣り合いのようです。
リラ
恋愛
婚約破棄から始まる、有能執事の溺愛…いや、過保護?
お嬢様を絶対守るマンが本気を出したらすごいんです。
ミリアス帝国首都の一等地に屋敷を構える資産家のコルチエット伯爵家で執事として勤めているロバートは、あらゆる事を完璧にこなす有能な執事だ。
そんな彼が生涯を捧げてでも大切に守ろうと誓った伯爵家のご令嬢エミリー・コルチエットがある日、婚約者に一方的に婚約破棄を告げられる事件が起こる。
その事実を知ったロバートは……この執事を怒らせたら怖いぞ!
後に後悔しエミリーとの復縁を望む元婚約者や、彼女に恋心を抱く男達を前に、お嬢様の婿に相応しいか見極めるロバートだったが…?
果たして、ロバートに認められるようなエミリーお嬢様のお婿候補は現れるのだろうか!?
【物語補足情報】
世界観:貴族社会はあるものの、財を成した平民が貴族位を買い新興貴族(ブルジョア)として活躍している時代。
由緒正しい貴族の力は弱まりつつあり、借金を抱える高位貴族も増えていった。
コルチエット家:帝国一の大商会を持つ一族。元々平民だが、エミリーの祖父の代に伯爵位を買い貴族となった資産家。
好感度0になるまで終われません。
チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳)
子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。
愛され続けて4度目の転生。
そろそろ……愛されるのに疲れたのですが…
登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。
5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。
いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。
そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題…
自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。
あっ、追放されちゃった…。
satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。
母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。
ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。
そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。
精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
皇帝とおばちゃん姫の恋物語
ひとみん
恋愛
二階堂有里は52歳の主婦。ある日事故に巻き込まれ死んじゃったけど、女神様に拾われある人のお世話係を頼まれ第二の人生を送る事に。
そこは異世界で、年若いアルフォンス皇帝陛下が治めるユリアナ帝国へと降り立つ。
てっきり子供のお世話だと思っていたら、なんとその皇帝陛下のお世話をすることに。
まぁ、異世界での息子と思えば・・・と生活し始めるけれど、周りはただのお世話係とは見てくれない。
女神様に若返らせてもらったけれど、これといって何の能力もない中身はただのおばちゃんの、ほんわか恋愛物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
一作目(というのか?)の「伯爵閣下の~」も好きですが、この(あ)も面白いです。
淡々と進むのに、何だかクセになります。
今後も楽しみにしています。
読んで頂きましてありがとうございます。
前の方ともどもよろしくお願いします。