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34:集い
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もう、ずいぶんと前になるだろうか、聖の権能持ちだけが参加できるという集いを覚えているだろうか。
二姉さまの忘れ物を届けに行って、『主』の〝月〟と出会い、彼女の神力を簒奪したあれだ。
聖の集いがあるのならば、他の集いだってあるだろう。
当たり前だ。
今回誘われたのも、その手の集いである。
誘ってきた相手が相手だけに断ることはできず。誘ってきた相手が相手だけに、集うテーマが酷かった。
わたしの部屋に現れたのは、牙の生えたカラスの白骨。
はい『冥府』でございます。
兄貴を刺激しないように先にお伺いを立ててから赴くと、そのまま転移に巻き込まれて別の場所へ。
抵抗できないあたり、神力は想像以上に離れているようだ。
「よぉ待たせたな」
転移した先で軽く手を挙げ、同じく軽い挨拶をした『冥府』。
瞬間、会場が沸いた。
そして瞬間冷却。
彼らの視線がすべてわたしに向いていた。
ほぼ大半が怯え、少数が『だれだあいつ?』って感じだろうか。きっとわたしが内封する『主』の神力がそうさせたのだろう。
「こいつぁ『月』だ。見込みあるから連れてきた。
今日はヨロシクしてやってくれや」
「初めまして第六位『月』です」
で、ここどこ?
連れてきた相手が相手だけに、死の集いかと思ったけれど……
えー……、改めて言葉にしてみるとすごくいやな集いね。でもそっちじゃなくて、ここは闇の集いの方。
おかしい、どっちも嫌だわ。
気を取り直して、ここは闇の集いだ。
つまりこの場にいる神はすべて、〝闇〟の権能、もしくは〝常闇〟の権能を持っている。当然、衣装の色彩は暗め。何なら真っ黒の人だっている。対して肌は病的に白く、いや死人のようなのもいるわね……
黒の扇情的なナイトドレスのわたしが可愛く見えるほどの闇っぷりだ。
近場にいたわたしに恐れを抱いていない神が挨拶してくれた。
「俺は第五位『混沌』だ。よろしくな」
邪神じゃん!
一瞬そう思ったが、ここにわたしを連れてきたのが『冥府』だったと思い出した。『冥府』=邪神の頂点、居ないわけがなかったわ。
昔はともかく、今のわたしは直属に邪神『病』がいるから、邪神への嫌悪感はそれほど持っていない。急に言われるとまだ驚くけれどさ!
よくよく聞くと参加人数二〇数名、そのうち邪神は片手を超える三割ほどいるそうだ。参加自由のバザールでさえ遠慮して出てこない邪神が、そんなにいるのはちょっと不思議。
ああそうか。ここに『冥府』がいるからだ。
なんだ結構、アニキしてるじゃん!
少し構えていた邪神と負の性質の強い神たちは、わたしの『冥府』や『混沌』への態度を見て次第に軟化していった。
この『月』は違うぞと。
もう一人いる『座』の方は、闇持ちなのに聖の集いに混ざるような人だもん。きっと邪神なんて嫌悪してんじゃないかなー
そっちに誘って貰えないから僻んでるんじゃないからね!?
この会は集いなので、交流が目的だ。
顔見世が終われば、話題は最近創った【機能】の話になっていた。
彼らが興味を持ったのはもちろん『月』だ。『月』神は〝闇〟と〝聖〟を合わせ持つ希少な神性。二つを混ぜると一体どんな【機能】が生まれるのか?
答え、混ざりません。
超がっかりされた。
「もう少しちゃんと言うと、〝月〟には〝夜〟や〝闇〟の効果もあるから、〝月〟を主体にすると〝聖〟と混ぜることはできるわよ」
よく売れる『月光の聖剣』に始まり、兄貴に渡した『月の灯りを受けている間は死なない』なんてのもこの二つの権能を使った【機能】だ。
ただ彼らが創る世界に、聖剣といった類は相性が良くないらしい。しかしもう一つの月の下で死なない方は彼らの琴線に触れたらしく、注文が殺到した。
その後は〝常闇〟持ちが創った【機能】を見せてもらった。
簡単なのだと夜明けがこない『極夜』とか、使い道が判らない『暗黒物質』なんてものもあった。その中でもっとも興味を引き、技術的にすごいと思ったのは『混沌』が創った『空間』の【機能】だろう。
こちらは〝闇〟だけでは足りず、〝常闇〟でないとダメだとか。
つまり『混沌』は〝常闇〟持ちってことね。
闇ではなく常闇になると、〝永遠の闇〟、そして〝何物にも侵されることのない黒〟という意味に変わる。
決して変わらない黒だからその場所は安定していると言える。空間操作でもっとも苦労するのはその安定性なのだから……
なるほどそういうことか。原理は解ったわ。
それにしても上手い解釈をする。〝月〟の権能で〝重力〟や〝引力〟も使えたことだし、持っている権能を掘り下げたら、もっと行使できる力が増すんじゃないかしら?
と。いまは『空間』の方だ。
理論は解った。しかしそこから同じ【機能】を創ろうとするとかなり苦労しそう。
ひとつ買って分解する許可を貰おうかな~?
コピー販売するとマナー違反だが、自分で使う分にはマナー違反ではなかったよね。
「『空間』の【機能】を分解して解析させてもらっていいかしら?」
「それは構わんが、その【機能】は〝常闇〟の権能がなければ再現できんぞ」
「それなら大丈夫、わたし〝常闇〟持ちだから」
それを聞き留めていた周りから驚きの声が上がった。
そして姐さん呼びに変わった……
姐さんに比べてアニキのほうが格が下に思えるのでやめてほしいと思っていたら、『冥府』はここでは頭と呼ばれていた。
いつから極道の世界に迷い込んだのだろう、とても止めてほしいと思う。
その後、最高位の邪神とともに闇の集いに参加し、参加者から姐さんと慕われたという噂が流れた。
この噂が流れるや、知らない神からの先触れが大量に届くようになった。その相手はもちろん負の性質が強い人たち、もしくはそれさえも振り切れた邪神である。
ほぼ【機能】の買い付けや継続的買い付けの契約だったが、ほんの僅かな一部は眷属化の打診だったりした。
だが眷属になりますと言われて、はいどうぞとはいかない。
当然のように、「第二位『冥府』が良いと言ったらね」と断りの常套句を告げて追い返していた。それなのに、まさか『冥府』が「いーんじゃねえか、テメェの好きにしな」なんていう投げやりな、斜め下な返答をするとは思わないじゃん!?
晴れてわたしの傘下に入った神たちは、トップは全員『権』で、負の性質が強い男神一枝と、邪神が男女一枝ずつ……
せめて逆が良かったなぁ
邪神に対する嫌悪感は薄れているだけで、まだ少しはあるんだよー!
とは言えど、『病』の預け先が決まったのは助かったかも。
二姉さまの忘れ物を届けに行って、『主』の〝月〟と出会い、彼女の神力を簒奪したあれだ。
聖の集いがあるのならば、他の集いだってあるだろう。
当たり前だ。
今回誘われたのも、その手の集いである。
誘ってきた相手が相手だけに断ることはできず。誘ってきた相手が相手だけに、集うテーマが酷かった。
わたしの部屋に現れたのは、牙の生えたカラスの白骨。
はい『冥府』でございます。
兄貴を刺激しないように先にお伺いを立ててから赴くと、そのまま転移に巻き込まれて別の場所へ。
抵抗できないあたり、神力は想像以上に離れているようだ。
「よぉ待たせたな」
転移した先で軽く手を挙げ、同じく軽い挨拶をした『冥府』。
瞬間、会場が沸いた。
そして瞬間冷却。
彼らの視線がすべてわたしに向いていた。
ほぼ大半が怯え、少数が『だれだあいつ?』って感じだろうか。きっとわたしが内封する『主』の神力がそうさせたのだろう。
「こいつぁ『月』だ。見込みあるから連れてきた。
今日はヨロシクしてやってくれや」
「初めまして第六位『月』です」
で、ここどこ?
連れてきた相手が相手だけに、死の集いかと思ったけれど……
えー……、改めて言葉にしてみるとすごくいやな集いね。でもそっちじゃなくて、ここは闇の集いの方。
おかしい、どっちも嫌だわ。
気を取り直して、ここは闇の集いだ。
つまりこの場にいる神はすべて、〝闇〟の権能、もしくは〝常闇〟の権能を持っている。当然、衣装の色彩は暗め。何なら真っ黒の人だっている。対して肌は病的に白く、いや死人のようなのもいるわね……
黒の扇情的なナイトドレスのわたしが可愛く見えるほどの闇っぷりだ。
近場にいたわたしに恐れを抱いていない神が挨拶してくれた。
「俺は第五位『混沌』だ。よろしくな」
邪神じゃん!
一瞬そう思ったが、ここにわたしを連れてきたのが『冥府』だったと思い出した。『冥府』=邪神の頂点、居ないわけがなかったわ。
昔はともかく、今のわたしは直属に邪神『病』がいるから、邪神への嫌悪感はそれほど持っていない。急に言われるとまだ驚くけれどさ!
よくよく聞くと参加人数二〇数名、そのうち邪神は片手を超える三割ほどいるそうだ。参加自由のバザールでさえ遠慮して出てこない邪神が、そんなにいるのはちょっと不思議。
ああそうか。ここに『冥府』がいるからだ。
なんだ結構、アニキしてるじゃん!
少し構えていた邪神と負の性質の強い神たちは、わたしの『冥府』や『混沌』への態度を見て次第に軟化していった。
この『月』は違うぞと。
もう一人いる『座』の方は、闇持ちなのに聖の集いに混ざるような人だもん。きっと邪神なんて嫌悪してんじゃないかなー
そっちに誘って貰えないから僻んでるんじゃないからね!?
この会は集いなので、交流が目的だ。
顔見世が終われば、話題は最近創った【機能】の話になっていた。
彼らが興味を持ったのはもちろん『月』だ。『月』神は〝闇〟と〝聖〟を合わせ持つ希少な神性。二つを混ぜると一体どんな【機能】が生まれるのか?
答え、混ざりません。
超がっかりされた。
「もう少しちゃんと言うと、〝月〟には〝夜〟や〝闇〟の効果もあるから、〝月〟を主体にすると〝聖〟と混ぜることはできるわよ」
よく売れる『月光の聖剣』に始まり、兄貴に渡した『月の灯りを受けている間は死なない』なんてのもこの二つの権能を使った【機能】だ。
ただ彼らが創る世界に、聖剣といった類は相性が良くないらしい。しかしもう一つの月の下で死なない方は彼らの琴線に触れたらしく、注文が殺到した。
その後は〝常闇〟持ちが創った【機能】を見せてもらった。
簡単なのだと夜明けがこない『極夜』とか、使い道が判らない『暗黒物質』なんてものもあった。その中でもっとも興味を引き、技術的にすごいと思ったのは『混沌』が創った『空間』の【機能】だろう。
こちらは〝闇〟だけでは足りず、〝常闇〟でないとダメだとか。
つまり『混沌』は〝常闇〟持ちってことね。
闇ではなく常闇になると、〝永遠の闇〟、そして〝何物にも侵されることのない黒〟という意味に変わる。
決して変わらない黒だからその場所は安定していると言える。空間操作でもっとも苦労するのはその安定性なのだから……
なるほどそういうことか。原理は解ったわ。
それにしても上手い解釈をする。〝月〟の権能で〝重力〟や〝引力〟も使えたことだし、持っている権能を掘り下げたら、もっと行使できる力が増すんじゃないかしら?
と。いまは『空間』の方だ。
理論は解った。しかしそこから同じ【機能】を創ろうとするとかなり苦労しそう。
ひとつ買って分解する許可を貰おうかな~?
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「『空間』の【機能】を分解して解析させてもらっていいかしら?」
「それは構わんが、その【機能】は〝常闇〟の権能がなければ再現できんぞ」
「それなら大丈夫、わたし〝常闇〟持ちだから」
それを聞き留めていた周りから驚きの声が上がった。
そして姐さん呼びに変わった……
姐さんに比べてアニキのほうが格が下に思えるのでやめてほしいと思っていたら、『冥府』はここでは頭と呼ばれていた。
いつから極道の世界に迷い込んだのだろう、とても止めてほしいと思う。
その後、最高位の邪神とともに闇の集いに参加し、参加者から姐さんと慕われたという噂が流れた。
この噂が流れるや、知らない神からの先触れが大量に届くようになった。その相手はもちろん負の性質が強い人たち、もしくはそれさえも振り切れた邪神である。
ほぼ【機能】の買い付けや継続的買い付けの契約だったが、ほんの僅かな一部は眷属化の打診だったりした。
だが眷属になりますと言われて、はいどうぞとはいかない。
当然のように、「第二位『冥府』が良いと言ったらね」と断りの常套句を告げて追い返していた。それなのに、まさか『冥府』が「いーんじゃねえか、テメェの好きにしな」なんていう投げやりな、斜め下な返答をするとは思わないじゃん!?
晴れてわたしの傘下に入った神たちは、トップは全員『権』で、負の性質が強い男神一枝と、邪神が男女一枝ずつ……
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