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01:誕生
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幾光年続いたか分からない、いつもの日課を終えて一息ついたとき、一切の空間の歪みもなく二姉さまが転移していらした。
これほど美しい転移はまさしく神の御業。
まあ二姉さまは神なので当然。かく言うわたしも神……と名乗りたいが、残念ながらいまだ『見習い』がとれず、未熟者です。
神は生まれるときに神性を持たず、無色として生まれる。
しかし世界や理を創りだすと、それぞれの性格や性質に引きずられるように色見が生じてくる。
それゆえ『見習い』のわたしはまだまだ無色であるが、第五位の中神にまで至った二姉さまには色があった。
燃えるような赤い瞳に同じく燃えるような赤い髪、ただし髪の方は左右のこめかみに向けて二房の白いメッシュがあり大変お洒落。服は露出の激しい薄着を好み、褐色に染まった肌を露わにしている。
赤と褐色肌は火属性の特徴。彼女は俗にいう『脳筋炎神』だ。
脳筋ゆえに細かい管理や術式は苦手で大変大雑把。
そのお陰で細かい術式周りは大の得意になったので、二姉さまには感謝していますけどね。
「やっ。どう?」
「どうと言われましても千年ぽっちじゃあそんなに変わりませんよ」
すると二姉さまは判ってないなあと人差し指を立ててチッチッチッと舌を鳴らした。
うざい。
「ウチらにとって千年は『ぽっち』でも、彼らには『も』さ。なんせ数十年ぽっちで激変する世界もあるからねぇ~」
ぐぅ脳筋のくせに正論ぱんちとは猪口才な。
「確かにそうでした。失言をお詫びいたします」
「ふふっ判ればい~のだよ。でっ?」
「大陸の外洋に強大な魔物を配置。船の航行を妨げたところ一定数の【信仰】を確保できました。討伐用の武器を神託で与え、それを討伐。こちらも一定数の【信仰】を得ています」
「魔物の配置はおっけ。んでっ、それをど~やって【信仰】につなげたの?」
「古い書物を捏造しました。
遠い過去にもその魔物は顕現していて、神に祈ることで『聖剣』が遣わされるみたいな感じです」
「ふうん。『聖剣』を携えて仰々しく降臨すればも~っと【信仰】を得られたんじゃないかなぁ?」
得られたかもだが、降臨のコストは神託の五倍。とにかく高いし、面倒くさい。
しかしそのまま伝えるわけにはいかないので、オブラートに包んでやんわりと。
「降臨すると『聖剣』の価値が減ると考えました。
もちろん『聖剣』には細工を。信仰心に応じて輝きが減ります。それによって代々引き継ぐだろう『聖剣』を通して得られる継続的な【信仰】はバカになりません。
それらを考慮して神託の方が良いと判断しました」
信仰心が減ってくると聖剣の輝きが失われるように細工するのは、三姉さまから頂いたありがたい教え。
「それを教えたの『権』でしょ~?」
神位『権』はイコール三姉さま。ばれてーら。
「ご明察恐れ入りました」
「うんうん。まあいいっしょ。
ちょ~っと付き合ってくれるかな~っ?」
疑問文、だったはずなのに……
わたしは次の瞬間には二姉さまの転移に巻き込まれて別の空間に立っていた。
圧倒的な威圧感、いえ存在感。
それを発しているのは、光を思わせる薄い金髪に真っ白い肌を持つ瞳を閉じた乙女。
一姉さまだ。
色合いから判るように彼女の神性は〝光〟なのだが、光あれば影ありと言われるとおり少量だが〝闇〟の神性も合わせ持っていらっしゃる。
一姉さまと顔を会わせたのは今回で二度目だけど、相変わらず、ここは重い……
確か彼女の瞳が閉じられているのはあふれ出る神力を封じるためだと言うが、そろそろ二姉さまは『封じるの失敗してますよ』とお伝えすべきだと思う。
二姉さまの階位は中二位の『力』、一姉さまは上三位の『座』。神力は53万と嘯く二姉さまだが、一姉さまとは比べるべくもない。
中神と上神にはこれほど圧倒的な差があるとは驚きを通り越して恐怖だ。
え、わたし?
神力300ほどのひよっこ。階位にも含まれていない見習いのザコです。
「座姉さま、ご機嫌麗しく」
「慣れない言葉を無理して使わなくていいわ『力』」
二姉さまは苦笑を漏らしつつ平服する。
「そちらの子?」
「はいっ」
一姉さまはは「そう」とつぶやきこちらを視た。先ほどと変わらず瞳は開いていない。しかし視られたのはよくわかった。
果たしてどこまで深く視ているのやら……
「良いでしょう。許可します」
「ありがとうございますっ。
よ~し座姉の許可がでたぞ。おめでっとう! 見習いは卒業だ、今から第九位『無』を名乗るといいよっ!」
振り返った二姉さまが笑みを浮かべてそう言った。
わたしが神?
えっ良いんですか? わたし神力300ほどのザコですよ? ぶっちゃけ何も創り出せませんけど?
下三位にして第九位は『無』であるから、ないない尽くしのわたしにはある意味お似合いではあるけども……
「さ~て伝統と言うか習わしだ。
さっきまで代理で管理していた世界で得た【信仰】の半分は『無』のものだ。そしてウチからのご祝儀。そ~だなぁ神力500を贈るよっ」
「ありがとうございます」
驚き過ぎてお礼の声色が平坦になってしまったが、心の中では大歓喜です!
ええっ本当に500も頂いてもいいんですか!?
世界で得ていた【信仰】は400ほどの黒字だったから半分なら200。それを軽く超える500をポンと出せる二姉さま! そこにしびれるあこがれる!
もう一生付いていきます!
「合わせても1000では困るでしょう。私からもお祝いを、そうね。2000もあればきっといい世界が創れるはずね」
「ありがとうございます!」
一姉さま素敵! 一生付いていきます! 二姉さま短い間でしたがありがとうございました!
二姉さまが微妙な表情を見せているけど落ち着いてください。二姉さまは一姉さまの眷属じゃないですか。一姉さまの下には二姉さまがいらっしゃる。
神々の世界は縦社会。
ならば何ら問題なしです!
これほど美しい転移はまさしく神の御業。
まあ二姉さまは神なので当然。かく言うわたしも神……と名乗りたいが、残念ながらいまだ『見習い』がとれず、未熟者です。
神は生まれるときに神性を持たず、無色として生まれる。
しかし世界や理を創りだすと、それぞれの性格や性質に引きずられるように色見が生じてくる。
それゆえ『見習い』のわたしはまだまだ無色であるが、第五位の中神にまで至った二姉さまには色があった。
燃えるような赤い瞳に同じく燃えるような赤い髪、ただし髪の方は左右のこめかみに向けて二房の白いメッシュがあり大変お洒落。服は露出の激しい薄着を好み、褐色に染まった肌を露わにしている。
赤と褐色肌は火属性の特徴。彼女は俗にいう『脳筋炎神』だ。
脳筋ゆえに細かい管理や術式は苦手で大変大雑把。
そのお陰で細かい術式周りは大の得意になったので、二姉さまには感謝していますけどね。
「やっ。どう?」
「どうと言われましても千年ぽっちじゃあそんなに変わりませんよ」
すると二姉さまは判ってないなあと人差し指を立ててチッチッチッと舌を鳴らした。
うざい。
「ウチらにとって千年は『ぽっち』でも、彼らには『も』さ。なんせ数十年ぽっちで激変する世界もあるからねぇ~」
ぐぅ脳筋のくせに正論ぱんちとは猪口才な。
「確かにそうでした。失言をお詫びいたします」
「ふふっ判ればい~のだよ。でっ?」
「大陸の外洋に強大な魔物を配置。船の航行を妨げたところ一定数の【信仰】を確保できました。討伐用の武器を神託で与え、それを討伐。こちらも一定数の【信仰】を得ています」
「魔物の配置はおっけ。んでっ、それをど~やって【信仰】につなげたの?」
「古い書物を捏造しました。
遠い過去にもその魔物は顕現していて、神に祈ることで『聖剣』が遣わされるみたいな感じです」
「ふうん。『聖剣』を携えて仰々しく降臨すればも~っと【信仰】を得られたんじゃないかなぁ?」
得られたかもだが、降臨のコストは神託の五倍。とにかく高いし、面倒くさい。
しかしそのまま伝えるわけにはいかないので、オブラートに包んでやんわりと。
「降臨すると『聖剣』の価値が減ると考えました。
もちろん『聖剣』には細工を。信仰心に応じて輝きが減ります。それによって代々引き継ぐだろう『聖剣』を通して得られる継続的な【信仰】はバカになりません。
それらを考慮して神託の方が良いと判断しました」
信仰心が減ってくると聖剣の輝きが失われるように細工するのは、三姉さまから頂いたありがたい教え。
「それを教えたの『権』でしょ~?」
神位『権』はイコール三姉さま。ばれてーら。
「ご明察恐れ入りました」
「うんうん。まあいいっしょ。
ちょ~っと付き合ってくれるかな~っ?」
疑問文、だったはずなのに……
わたしは次の瞬間には二姉さまの転移に巻き込まれて別の空間に立っていた。
圧倒的な威圧感、いえ存在感。
それを発しているのは、光を思わせる薄い金髪に真っ白い肌を持つ瞳を閉じた乙女。
一姉さまだ。
色合いから判るように彼女の神性は〝光〟なのだが、光あれば影ありと言われるとおり少量だが〝闇〟の神性も合わせ持っていらっしゃる。
一姉さまと顔を会わせたのは今回で二度目だけど、相変わらず、ここは重い……
確か彼女の瞳が閉じられているのはあふれ出る神力を封じるためだと言うが、そろそろ二姉さまは『封じるの失敗してますよ』とお伝えすべきだと思う。
二姉さまの階位は中二位の『力』、一姉さまは上三位の『座』。神力は53万と嘯く二姉さまだが、一姉さまとは比べるべくもない。
中神と上神にはこれほど圧倒的な差があるとは驚きを通り越して恐怖だ。
え、わたし?
神力300ほどのひよっこ。階位にも含まれていない見習いのザコです。
「座姉さま、ご機嫌麗しく」
「慣れない言葉を無理して使わなくていいわ『力』」
二姉さまは苦笑を漏らしつつ平服する。
「そちらの子?」
「はいっ」
一姉さまはは「そう」とつぶやきこちらを視た。先ほどと変わらず瞳は開いていない。しかし視られたのはよくわかった。
果たしてどこまで深く視ているのやら……
「良いでしょう。許可します」
「ありがとうございますっ。
よ~し座姉の許可がでたぞ。おめでっとう! 見習いは卒業だ、今から第九位『無』を名乗るといいよっ!」
振り返った二姉さまが笑みを浮かべてそう言った。
わたしが神?
えっ良いんですか? わたし神力300ほどのザコですよ? ぶっちゃけ何も創り出せませんけど?
下三位にして第九位は『無』であるから、ないない尽くしのわたしにはある意味お似合いではあるけども……
「さ~て伝統と言うか習わしだ。
さっきまで代理で管理していた世界で得た【信仰】の半分は『無』のものだ。そしてウチからのご祝儀。そ~だなぁ神力500を贈るよっ」
「ありがとうございます」
驚き過ぎてお礼の声色が平坦になってしまったが、心の中では大歓喜です!
ええっ本当に500も頂いてもいいんですか!?
世界で得ていた【信仰】は400ほどの黒字だったから半分なら200。それを軽く超える500をポンと出せる二姉さま! そこにしびれるあこがれる!
もう一生付いていきます!
「合わせても1000では困るでしょう。私からもお祝いを、そうね。2000もあればきっといい世界が創れるはずね」
「ありがとうございます!」
一姉さま素敵! 一生付いていきます! 二姉さま短い間でしたがありがとうございました!
二姉さまが微妙な表情を見せているけど落ち着いてください。二姉さまは一姉さまの眷属じゃないですか。一姉さまの下には二姉さまがいらっしゃる。
神々の世界は縦社会。
ならば何ら問題なしです!
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