17 / 18
トントンと、ちゅう
しおりを挟む結界はなるべく早くが良いから、明日は一日作り置きをして、明後日には転移で王都まで行くことになった。
ココさんはチッチの部屋の隣の部屋にお泊り。僕はチッチが寝付くまでは隣にいたくてトントン。
「おにーちゃん!」
「うん?眠れない?」
「チッチねぇ!もうとんとんいらないよぉ!」
ぷんぷんしてるの可愛いでしかない…
「聞いてますか!」
「ふふ。うん、聞いてるよ?でも淋しいし可愛いしで…だめ?」
「だめです!おにーちゃんはだんちょーさんのおよめさんでしょう?だんちょーさんからはなれちゃだめだよ!」
「ええ…家の中にいるんだから大丈夫だよ…」
「つがいはいっしょなんだよ!おうちはずっと!」
だからはやくあっち行ってと言わんばかりにしっぽがうねうね。
「あああ…チッチ可愛い。チッチ大好き。」
「チッチもおにーちゃんだいすき!おにーちゃんかわいい!でもだめですぅ。チッチはひとりでねるの!もー、いっかいだけすはすはしていーよぉ。」
チッチからお許しが出たから抱き上げてむぎゅう。顔をふかふか毛並みに埋めさせて貰う。はぁ、幸せ。
ココさんにもドア越しに挨拶をして寝室のシュロの元へ。チッチは反抗期とかあるのかな…?僕しぬかも…と真顔で告げれば苦笑いのシュロ。手招きされてシュロの、チッチよりもふかふかな胸に囲い込まれる。
「獣人は親離れがはやいぞ。」
「…ん。覚悟しとく。でも僕兄だから。」
親でなければ親離れもなにもないのではないか。
「チェチリは素直に成長しそうだが…なんせ山猫だしな…」
「え!猫とか関係あるの?」
「猫の中でも山猫は気まぐれで我が道を行くタイプが多い。ただ、好きなものには一直線だ。」
なるほど。
「シュロは?」
「俺は狼だからな…番を囲い込みたいし、一緒に生きたいし、一緒に死にたい。」
「…なるほど。」
「まぁ、前にも言ったかもしれないが…重いんだ。」
「ふふ。」
耳をぺしょりとしながらも僕に巻き付くしっぽ。
「ヒカル以外いらないなんて生易しい感情じゃなくてだな、ヒカルだけが欲しいんだ。」
「くふっ」
「あぁ、可愛いな。ほら、もう寝ような。」
さっきまでチッチを抱っこしていたけれど、今度は僕が抱き上げられてぽすり。
「胸を叩いてやろう。」
「…トントンはいらないけど。聞こえてたの?」
え、どれだけ…どれだけ耳が良いんだ?
「…怒ったか?」
「別に怒らないけどさ、凄いなって。」
「意識しなければ音や声は聞こえないのだが無意識にヒカルの動向を探ってしまっていた…すまない。」
嫌いにならないでくれと呟くシュロ。
「可愛すぎる。」
「可愛くはないだろう…」
「とても可愛いです。」
「何で真顔なんだ…」
真顔にもなってしまう可愛さ。言ってる事が可愛いのにおまけにもふもふだなんて。格好良くて可愛いシュロと婚姻を結んだ事がまだ信じられない。
「あれ、もしかして今日が僕たちの結婚記念日になるの?」
「うん?記念日か…あまり気にする者はいないが、ヒカルの国では祝うのか?番などはないと言っていたが。」
「うーん、入籍した日をお祝いしたりはすると思う。人それぞれだろうけど、ささやかなプレゼント交換とか、美味しいもの食べたり、何年経ってもその日を思い出したりするの、素敵じゃない?」
うむ、と悩むシュロ。所変わればってやつだなぁ。
「何年経っても思い出すというかな、毎日毎朝毎晩いつでもヒカルを想っていつでもこの日を思い出すだろうな。」
「え。」
「初めて出逢った日も一緒に眠った日も、手を繋いだ事も尻尾を掴ませた事も、常に何度でも思い出す。…もちろん、番となった日もな?」
きっと近々つがいとなる僕たち。ちょっと…顔があっつい。
「可愛いな。」
「可愛くないです…顔、あつい。」
シュロの言葉は真っ直ぐで熱い。
「ほら、今日はもう寝ような。」
トントンではなくぎゅっと抱き締めて背中を優しく撫でられる。
「ヒカル、毎年この日はどんな事があっても抱き合って眠ろう。」
「…ん。」
「美味いものを食べたり、互いに贈り物をしたりもしよう。」
「…ん。」
結婚記念日という風習がなくても寄り添ってくれるのが嬉しい。
寝転んだまま、首に腕を回してシュロの鼻先に口づける。
「んんっ、」
鼻にちょんとキスをしたのに、ペロリと唇を舐められて舌が入ってくる。
「ふっ、あ…」
大きな舌が歯列をなぞって口の中を行ったり来たり。僕はどうにも出来なくてシュロの胸のもふもふを握りしめるしか出来ない。
「んんー!」
クチュリと最後に水音がして、僅かに離れたシュロの首筋にぽすり。はふはふと息を整えていれば、指の間にシュロのふかふかの毛がついている。
ごめんね、と伝えたいのに呼吸は乱れているし、シュロの首に埋めた顔をあげたくない。少しも離れたくないのもあるけれど、きっと真っ赤。
「ヒカル?嫌だったか?」
そんな僕にお構いなく、頭をぽんぽん。
「…なでてて。」
「承知した。」
頭と背中を優しく撫でられ、やっと一息。
「たくさん毛抜いちゃった…ごめんね?」
「そんなの良い。これくらい痛みも感じない。」
シュロの鼻先も僕の髪に埋まるのを感じる。ぴったりとくっついていることにひどく安堵してやっと顔をあげることが出来た。
「すき。」
「俺も好きだ。…もう一度しても?」
「…ん。」
ほっぺをがじがじとされながら了承した。
22
お気に入りに追加
1,112
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたアルフォン伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
アルフォンのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました! 時間有る時にでも読んでください
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します
バナナ男さん
BL
享年59歳、ハッピーエンドで人生の幕を閉じた大樹は、生前の善行から神様の幹部候補に選ばれたがそれを断りあの世に行く事を望んだ。
しかし自分の人生を変えてくれた「アルバード英雄記」がこれから起こる未来を綴った予言書であった事を知り、その本の主人公である呪われた英雄<レオンハルト>を助けたいと望むも、運命を変えることはできないときっぱり告げられてしまう。
しかしそれでも自分なりのハッピーエンドを目指すと誓い転生───しかし平凡の代名詞である大樹が転生したのは平凡な平民ではなく……?
少年マンガとBLの半々の作品が読みたくてコツコツ書いていたら物凄い量になってしまったため投稿してみることにしました。
(後に)美形の英雄 ✕ (中身おじいちゃん)平凡、攻ヤンデレ注意です。
文章を書くことに関して素人ですので、変な言い回しや文章はソッと目を滑らして頂けると幸いです。
また歴史的な知識や出てくる施設などの設定も作者の無知ゆえの全てファンタジーのものだと思って下さい。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる