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もふもふさんたちとお買い物

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 そんなこんなの帰り道、僕は着せ替え人形にされています。

「これはどうだ?こっちは?」

「チッチはねぇ、チッチはねぇ!これがいいと思うよ!」

 子ども食堂のある場所は立入禁止区域に近い。魔獣のせいで人手が足りないからどうしても孤児たちもこちら側での生活になる。対してチッチの家は街中の方であった。僕たちは帰りにチッチの服や日用品を選びに来た筈だったのだけど…

「シュロ、もういらないよ。寝間着と普段着とエプロンを買って貰ったんだからもう必要ない。」

「ヒトの物が置いてある店はこの辺まで来ないとないからな。買っておいて損はない。」

「買ったその分は損が生じているよ?」

「損なものか。ほら、これはヒト用の石鹸だぞ。どんな香りが好みだ?」

「シュロのじゃ駄目なの?一緒で良いよ。」

 わざわざヒト用なんて勿体ない。

「そもそもの肌の質が違うし分けたほうが良い。俺等は毛皮があるから繊細なヒカルの肌には合わない。」

 その言葉にシュロの腕を取って顔をぐりぐり。

「この匂い落ち着くのになぁ…」

「あ!この匂いおにーちゃんにぴったりだよぉ!」

 それってどんな匂いだろう?ぴこぴこ飛び跳ねるチッチが可愛くてシュロの腕から顔を外してそちらへ向かう。

「あ、お花の香りだね。良い匂い~、シュロはどう思う?」

 先程の場所から動かないシュロを不思議に思って振り返れば…

「ふはっ!」

 お耳がぴーんでした。

「シュロ!この香りどうかな?チッチが選んでくれたからこれも…良い?もういらないって言いながらごめんね。」

「いや、構わない。チェチリが選んだものは肌用の石鹸だな。では髪用は俺が選んでも?髪用の香油やブラシも欲しい。」

「え?うーん…いらないと思うけど…」

 髪なんて適当に体用の石鹸で十分だ。

「必要だ。」

「え、」

「必要だな?」

「え、うん?」

 ヨシ、と満足気にしっぽをパタつかせるシュロにはもう何も言えない。…だって可愛過ぎる。

 大きな紙袋を片手で持って、反対の手でチッチを抱き上げる。僕の手や顔や頭はずっとしっぽがさわさわしていてくすぐったい。

「あのねぇ、チッチねぇ、お腹いっぱいだよ。」

「沢山食べたもんね。明日は何を作ろうかなぁ。」

 子どもたちが喜ぶもの…あ、ハンバーグならシュロも好きかな。お肉だもの!付け合わせにポテトとかも良いよね。

「チッチなんでもたべられるよ!」

「チッチは優しくて何でも食べられて偉いねぇ。」

 うん!と元気にお返事をしてしばらくするとすぴすぴと寝息が聞こえてくる。僕はしっぽを優しくつんつん。

「荷物持つよ。それかチッチ抱っこする。」

「こんなの軽いから大丈夫だ。」

「軽いなら僕持ちたい。」

「俺には軽いがヒカルのような細腕で荷物なんて持ったら折れてしまう。」

「ふふっ、もう、そんなので折れないよ。」

 首が取れると思っていたり、腕が折れると思っていたり極端過ぎる。

「それに服がメインだから僕にも持てるよ。シュロの片手が空いたら僕また腕をもふもふしたい。」

「帰ったらな。」

 荷物を持たせてくれない事がわかり、ちょっぴり悲しい。獣人さんに比べたらヒトは非力過ぎる。

「…くふふっ、」

 何度目かの鼻先をしっぽがこしょこしょ。そのまましっぽで体をぐいっとシュロの隣へ引き寄せられる。うん、シャツ1枚じゃこのもふもふは隠せない。シャツの上からでもふかふかだ。

「はやく帰ろう。」

「……うん。」

 帰ろうと言われるのが嬉しい。
 心がぽかぽかと暖かい。







「食堂の隣が家だ。」

「通勤3分だね。」

 何故隣なのに3分かかるかと言うと、単純に庭が広い。家も大きいけれど、庭が広いのだ。

「あー、とりあえず今夜のベッドは一緒でも良いか?明日客間のリネン何かを買いに行こう。」

「え?」

「絶対にヒカルが嫌なことは何もしないと誓う。」

 失念していた…と大きなベッドにチッチを寝かせてぺしょり。かわいい。…じゃなくて。

「え、あの…これからは別のお部屋?一緒はだめ?」

 うん、当たり前だよね…お互いに成人男性。別の部屋で寝るのは当たり前…いやでも、あの魔力を流し合ってから本当に離れたくないんだよ。しっぽに触れていると特に。離れていればそれなりに我慢出来ると思う。でも、近くにいるのに離れるのはさみしい。はぁ、もう、何でこんなさみしんぼになってしまったんだ。今まで…シュロに出会うまでこんな事はなかったのに。

「ヒカルが嫌でなければこれからも一緒の部屋が良い。良いのか?」

「ん。一緒が良いな。わがままごめんなさい。」

「こんなにも可愛い提案が我儘だなんて事があるものか。さて、今日はもう疲れただろう?風呂に入って寝よう。」

 やり方を教えてくれるというシュロに付いていき、買った石鹸などもついでに設置させて貰う。
 お湯を出す事なども問題なく行う事が出来た。普通の生活魔法に対しては、何となくフィーリングというのがわかってきたと思う。
 そのまま先にお風呂を頂いてさっぱり。
 獣人さん専用の体毛乾かしマシーンは危ないから使用禁止との事で、自分でわしゃわしゃ。

「シュロ~、お風呂ありがとう。気持ち良かったよ。」

「あぁ、良かった。その寝間着はサイズも丁度良いしとても似合っているな。俺も入って来るから先にチェチリのところで眠っていてくれ。」

「あの機械で乾かすところ見たいです!」

「はは!気になっていたもんな。では乾かす時に呼ぼうな。」





 腰にタオルを巻いて、温風が出るという機械を通ろうとするシュロは大きな狼さんで格好良くて、可愛いくて……

 僕は服を脱いだもふもふさんの格好良いのと可愛いのをなめていたのだ。












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