異世界で子ども食堂始めました。

まつぼっくり

文字の大きさ
上 下
10 / 18

かわいいし、きもちいい

しおりを挟む
 
 日々は穏やかに過ぎて行く。
 子ども食堂の人気メニューはハンバーグに唐揚げにオムレツ。好きなメニューの時だけ来る子や、文字の勉強の時間だけ来る子もいるから、掲示板を作って一週間のメニューと勉強スケジュールを提示するようにした。
 お弁当代わりのサンドイッチは今では子どもたちだけでなく大人にも人気が出て、大事な収入源になった。そのお金で市場で食材を買ったりお店で惣菜を買ったりと、元から商売をしている人たちとも上手くやれていると思う。

 この街の獣人さんたちは皆優しくて愛情深い。子どもたちに食事を提供し続けるのを見て、子どもたちへ古着や勉強道具の寄付も頂けるようになった。



 今のところ子ども食堂については順調である。…が、チッチの母親の情報は何もない。それに結界もうまく出来ない。
 大きな魔力の使い方がまだうまく出来ないから、シュロに沢山魔力を流して貰うと良いと、王様やシュロのお兄さんがいるところから来てくれた魔法使いのねずみ獣人さんが教えてくれて、実践中。魔力の通り道を大きくしておかないと大きな魔法は使えないらしい。でもこれが厄介でシュロから離れたくなくなるし、ぺったりくっつきたいし、甘えたいし甘えられたいし……とにかく触れたくなるのだ。




「ヒカル、魔力を流しても良いか?」

「うーん…」

「大丈夫だ、嫌ならやらない。」

「嫌じゃない。でも魔力流すと迷惑かけちゃうし…あ、チッチは?」

「迷惑なものか。ヒカルに触れられるのはとても嬉しい。チェチリはとっくに寝たぞ?最近は食堂の手伝いと勉強で寝付きが良い。」

 確かに…寝付きが良いし夜泣きもしない。

「無理させてるかな?やらせ過ぎ?」

「丁度良いんじゃないか?色々と考えないで済む。」

「うん…そうだね。」

 チッチのお母さん…チッチはもうおかしゃんと泣かない。お手伝いをしてくれるし、近所にお友達もできたし、お勉強もしている。つい先日は孤児院に行くとまで言い出した。僕が思わず泣いてしまったら取り消してくれたけれど。
 その時を思い出して涙が込み上げてくる。

「あぁ、ほら、ヒカルこっちへおいで。」

 いつも通りフカフカな胸にそっと埋まれば脇に手を差し入れて、ぐんと持ち上げられて膝の上。

「ううう…」

「チェチリの母親は絶対に大丈夫だとは言えない。冒険者の世界はそんなに甘くはない。だが、まだ何もわかっていない。死んだとは限らない。」

「うん…」

「あの子は強い。無理し過ぎないように見守っていこうな。」

「うん…」

 大きな手のひらが頭を撫でる。鋭い爪が僕を傷つける事はない。
 顔を胸に押し付けて、頭をなでなで。
 もっと…もっと隙間なくくっつきたくて、首へ腕を伸ばして引き寄せる。もっと…足も…

「こら。」

 足を腰に巻き付けたところでシュロから声がかかった。

「だめ…?もっと…お腹もくっつきたい。」

 座るシュロを跨ぐようにしてシュロの太腿に座り、顔をフカフカに埋めて腕は首に回す。足で腰を固定して、お腹もシュロのバキバキに割れているのにフカフカな腹筋へ。

「魔力も流して…?」

「こちらから言っておいてなんだが、それはやめておかないか?」

「だめ?」

「襲わない自信がない。」

「ふはっ!」

「笑うな。」

 あぐあぐと頬を甘噛み。これは最近のシュロのお気に入り。僕のほっぺが食べられてしまう。

「しゅろ、ほっぺ、やぁ。」

 鼻先を手のひらでぐいぐい押して離してもらう。

「くっついてるのも、体の中もシュロが良い。だから、まりょく流してぇ…」

「誘われているみたいだな。」

「んん?」

 誘う…?

「誘ってるよ?」

 魔力流して欲しい。もっとくっついて離れたくない。

「違う意味でな?ほら、流すぞ。痛かったら言ってくれ。」

 心臓がドクドクして、痛いようで、冷たくて、熱い。最近やっと慣れ親しんできた痛いくらいの多幸感。ぎゅっとくっついているのにもっともっと近づきたくて、ぐいぐいと体を押し付ける。

「もっとぉ…」

「もっと?大丈夫か?ヒカルからも魔力を流し返してくれ。」

「んんんっ…」

 意識して、シュロへと魔力を流す。
 その間もシュロに触れていたくて、心臓が痛くて頭はふわふわ。

「んあ、」

 何だか今日は一段と気持ちが良い…

「ヒカル、押し付けるな。反応してしまう。」

 ハッハッと細かく息を吐いて、胸に埋めていた顔をあげて首筋をスンスン。

「んん、いい匂い…きもちい…」

「…流しすぎたか?ヒカル、少し待ってくれ。」

「やぁ。」

「こら」

 ぎゅうぎゅうにくっついてるけど、足でシュロの腰をぎゅうってして、ぐりぐりってぼくの腰を動かすと…きもちい…

「ん、なんか、かたい。」

「ヒカル、お前に嫌われたくない。」

「シュロなんかもってるぅ。」

「聞いてないな?ヒカル、お前魔力に酔っている。少し離れような。」

 腰あたりのかたいやつに手を伸ばしたところで手を取られて、諭される。

「んぅ…」

「あぁ、何だこの可愛い生き物は…」

「もふもふかわいー!」


 もふもふかわいい。もふもふは至福。
 鼻ちょんもかわいい。シュロの鼻をがしっと掴んでお鼻にキス。

「…くふっ」

「何だこの可愛い生き物は…」



















しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。 ※(3/14)ストック更新終わりました!幕間を挟みます。また本筋練り終わりましたら再開します。待っててくださいね♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

処理中です...