ひきこもぐりん

まつぼっくり

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ちっさなもぐらの大きな一歩

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「……不本意ながら、リューの中の心地好さに堪えきれず…すみません。」

 しょんぼりするジズが可愛すぎてどうしよう。

「っくふ。くふふふふ。」

「ふふ、ふは!」

 ふたりでにこにこ。思っていたような初体験ではなかったけど、幸せ!全力でしあわせ!

「名器でごめんね。」

 漫画の中の受けちゃんはみんな名器なの。だからしょうがないの。ごめんね。

「ふふ。そうですね。私専用の名器です。……少し動いても?」

「なんで!?」

 今の話の流れで何で?動きやすいの?出したから、動きやすいの?

「んっんんっ、」

 小刻みに少しだけ。

「力が抜けて、柔らかいです。頑張れそうですか?」

「…ん。」

 ここまできたら初えっちテンプレなあれをしたい。



「あっ、だめ、ジズのでちゃうぅ。」

 洩れちゃう。やだ。なんか、やだ、だめ。

「可愛い。またすぐに注ぐので、安心して大丈夫ですよ。」

「やあぁ、ぼくのだもの…んあッ、」

 ズクズクと控えめに、でも最初よりも確実に奥まできてる。

「痛くないですか?」

「んん。おなか、くるしい…けどいたくないよ。ちゅーして?」

 ぼくのおっぱいはでないので、おっぱいちゅっちゅしないでキスしてください。

「んやあぁ!」

 ちゅうするのに、身を乗り出した反動でぐりっと奥まで…ふあ、痛くない。きもちいい。

「ジズ…ジズ…きもちーね?」

「…はい。とても。今ので全部挿りましたよ。ちょっと馴染むまで待ちますね?」

 そう言って、からだを起こしたジズが髪をかきあげる。かっこいー。
 ふぅ、今からやるこれはね、一回しかやらないよ。やっちゃだめじゃないけど、初体験でやるからこそ攻めがね、ぎゅんってしちゃうから。
 僕はそっと右手を下腹に添える。……えっ、待って…待って怖くて見れない。ぼっこり…ぼっこりしてる。やだ、想像と違う。微笑んで、ここまできてるってしたいの。それだけしたいの。やだなんかちがう。

「ジズ、むりぃ。ぼこぼこしてる、やだ、こわい、こんなとこまで…挿るなんて、しらなかった。だって…だって…こんな、おへその下まで…ううう、こわいよぉ。しんじゃう、ッやああああ!」

 勢い良く引き起こされて、座ったジズに跨がるかたち。対面座位。やだ、これ、奥までささる。ねぇ、待って?翼…翼がばっさばっさしてる…なんで?そんな、感情で動く感じ?犬獣人のしっぽ的な?あ、やだ、その振動でおしり、きもちい。

「ふぅ、すみません。動いても?」

 それでも確認を取ってくれるジズは優しい。

「翼ハグ、ください。」

 バサリとまた、暗闇の中。腕はきつく抱き締められて、繋がったところが熱い。
 翼の中でお返しとばかりに、首に噛みつく。

「だいすき。」

「…リューは私の理性を焼き切る才能があり過ぎます。」

 ガツガツとした下からの突き上げに体が浮いてしまうのに、ジズの腕がそれを許さないとぎゅっと抱き締めた。











 チュンチュンと小鳥の声…は聞こえないけど、優しく頭を撫でられて起きた。からだはサラサラ。パジャマも着てる。でも夢だったとは思えないような腰の重み。

「きのう、しあわせ、でした。」

 んん、声ががっすがす。すかさず差し出されたはちみつれもんが沁みる。

「私も…今まで生きてきた中で2番目に幸せでした。」

 むぅ。なにそれ。なんで2番目?表情で語ってしまったのか、突き出した唇をむにゅりと掴まれる。

「1番は、竜斗に出逢えた事です。」

「…え。いま、名前…」

「発音が難しくて何度も練習しました。里心に拍車をかけるようで、中々呼べずにすみません。」

 どうですか?と不安そうな顔。

「ばっちり。」

 ちょっと驚いて、反応悪いけど。リューかリュートだったから、もう、竜斗と呼ばれる事はないと思ってた。だから、嬉しい。ぽろりと涙が落ちてシーツにシミを作る。

「あのね、竜斗の竜はね、ドラゴンとも読めるんだよ。」

「それは…格好良いですね。もぐらではないのですか?」

「…土の竜で、もぐらって読むの。」

「それは可愛いですね。」

 うん。もぐらが可愛いのは知ってる。先祖返りで家族の中でひとりだけもぐらだった僕はその事をからかわれて、本当はもぐら、好きだったのに少しずつ学校に行けなくなった。不倫の子だなんて言われて、悲しかった。もぐらはかわいい。家族皆に言って貰えたから知ってる。僕も知ってる。でも、玄関から出られなくなって、もぐらだから眩しいところが苦手。太陽浴びたらしんじゃう。だなんて言い訳ばっかりして。家族もそれを知ってるから、無理強いしないで自宅学習に切り替えてくれた。もぐらだから無理ですって。あの日、外に出られなくなった小学3年生の時からやっと成長出来るかもしれない。

「ジズがもぐら可愛いって言ってくれたら、嬉しい。」

「うん?当たり前ですよ。竜斗の描いたもぐらの絵も可愛かったです。」

「僕、お外行けると思う。窓からじゃなくて、朝になったらちゃんと玄関から出る。」

「それは…わざわざしなくても良いと思いますが、竜斗がしたいなら、一緒に行きましょうか。」

「ほんとうは、太陽すきだよ。明るいのも。」

「好きなのなら、太陽浴びましょう。翼ハグで日向ぼっこも気持ち良いですよ。」

「…うん。まだ人はこわい、から一緒にいてくれる?」

「どんな時も一緒です。」

「すき。」

 だいすき。ジズと一緒なら、どこでも行ける。ジズがもぐら可愛いと言ってくれるから、もぐらで良かったって思える。

「少し寝て、起きたら朝陽を浴びに行きましょうか。少し先に綺麗な泉があります。」

「うん。行きたい!」

「朝食は市場へ行ってみましょう。隊長が言っていたドーナツも買いましょうね。」

「うん、うん!」




 ベタな世界に転移して、素敵なつがいができて、トラウマを克服したちっさなもぐらの未来は明るい。トコロテンもアヘ顔もしなかったけど、陥没ちくびさんは開発されちゃうだろうね。テンプレだもの。





「行ってきます!」

 隊長や仲良くなった皆に手を振る。
 ジズと手を繋いで新しい一歩を踏み出した。





おしまい



以下、作者の中での裏設定です
気になる方だけどうぞ!




*もぐらくんは普通に元気な男の子だったけど、小学生になってからレアで家族にもいないモグラな事をからかわれるようになる。「モグラかわいいもん。気にしてないよー」と笑いながらも少しずつ少しずつ学校に行けなくなる。ある時玄関から出る事すら出来なくなって、以来引きこもり

*隊長は受け。アイくんから何年も何年も押し倒されて、その度にぶん殴ってたんだけど、隊長引退する日にちゃんと押し倒されてあげる。「婚期逃してまでこんなおっさん追いかけてあほだなぁ」って誘い受け。


*兄嫁ちゃんたちは男。
長男のお嫁ちゃんは美人でハキハキタイプ。獣性はひみつ。義弟が可愛くて可愛くて、カップラーメンは運び込むし、兄たちと年も離れてるもぐらくんを養子に迎え入れて養いたかった。

次男のお嫁ちゃんはうさぎくん。獣性は、発情のところが色濃く残ってしまっていて、夫と触れ合うと発情しちゃう。耳なししっぽありうさぎくん。義弟の事は本当の兄弟のように仲良しだった。


*もぐらくんは毎日家族に日記みたいなお手紙を書いています。その日あった事とお外に出れたよ、幸せだよって。
自分の部屋だったりジズとのお出かけだったり、旅先だったり、ギルドだったり、ポストだったり、新居だったり。一生のうち、何通かは何かの弾みで家族の元に…送れていたら…いいなぁ。


読んでくださりありがとうございました!













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