ひきこもぐりん

まつぼっくり

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大丈夫です死にません

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「ジズ、結婚しますってしに行こうね。」

 正体不明の事務員設定の男が受け入れられるかはわからないけど、ふたりが大丈夫って言うなら大丈夫。大丈夫…だよね?だいじょうぶ…?
 うーん…だめだったらかけおち…かけおちしちゃう?え…何か新しい扉が開いちゃう時くらいドキドキする…ちゃんとジズの事を養えるようにしなくちゃ。どうしようもなかったら、この世界には無さそうなあの部屋のカップラーメンとかを売り払おう…漫画…漫画は踏ん切りつかないかもだけど…ジズの方が大切!よし!売ろう!買い手が居るかはわからないけど!よし!路頭に迷うことはない。大丈夫!安心は出来ないけど、心を込めてちゃんとジズの家族に伝えよう。

「息子さんを僕にくださいって格好良く言えるように練習するね。」

 もじもじ禁止で頑張ります。…王様相手に発言する許可が貰えたらだけれど。

 えぇ、何かまた隊長に爆笑されているし、ジズからはとろける微笑みを頂いた。ほっぺすりすりとちゅっちゅっが止まらない。…あんまりくっつかれると僕も男なんだから、やめてよもぅ。

「結婚…つがい?認めて貰えなかったら駆け落ちしよ?」

「愛の逃避行ですか。それは良い。認めないように先に伝えておきます。死ぬまでふたりきり…理想すぎます。」

「崖の上とかにある大きな木のところに巣作りしてさ、ジズが翼ハグしてくれたらもう最高。」

「天才です。手頃な崖がある土地を買いましょうか。」

「……馬鹿か。おいリュート、王族も今では自由恋愛推奨だからな?まぁ、次期国王なんかにたまたま出会う事は中々難しいが。それにしてもジズがこのように恋愛脳になるとは思わなかったなぁ。ただの馬鹿で好感が持てる。」

 普段はすました顔して何でもそつなくこなす嫌味な奴だからとニヤニヤな隊長。

「僕にはいつでもニコニコふわふわ優しいよ?」

「リューにだけです。」
「お前だからだろ。」

 顔は似てないけど、同時に答えるその姿はやっぱり兄弟。

「兄弟って良いよねぇ。」

 心の中で兄嫁ちゃんにでれでれしている兄たちを思い出す。もぐらじゃなくて、格好良いおにぃ。元気かなぁ。ちょっぴりしんみり。
 兄弟かぁ。兄弟BL良いよね…義兄弟とかでさ、将来的に大丈夫だとハッピーエンドで更に良いよね。血の繋がった本当の兄弟ものも読むけど、結構切ないから…僕はハッピーエンド至上主義なので。

「隊長はリューの兄でもありますよ。」
「もう俺の弟だろ?」

 妄想に浸っていたけど、二人の言葉に現実に引き戻される。ふあ、うれしい。二人の気持ちが嬉しいなぁ。

「…ありがと、ございます。」

 ずび、と出てきた鼻をすすって、ぺこりとお辞儀。

「ぶは、何泣いてんだよ。…ジズよりリュートの方が弟って感じでいいな。ちっせーし、可愛い。」

 大きな手でぐりぐりよしよし。嬉しい…けど、少し痛いです。…頭もげちゃう。

「あまり見ないで貰えます?あと、触らないでください。」

「ハイハイ。それで、挨拶はどうするんだ?」

「…リューが行こうと言ってくれるなら行きましょうか。暗幕でくるんで飛びます。」

 いける?その距離いける?落ちない?ジズが落とすことはないだろうけど、本当にいける?

「荷物じゃねぇんだから。」

 …う、だよねぇ。僕荷物みたいに軽くない。

「あぁ、でも太陽がありますね…雨だと濡れてしまうし、曇りの日を狙いましょう。」

「いや濡れ厳禁な荷物じゃねぇんだから。馬車くらい使えよ。体力持たないだろ。」

「いえ。リューを連れていくのに一番信用出来るのは私自身なので。」

「…リュートの方も疲れるぞ。」

「それこそ私が見落とすとでも?きちんと休憩しながら行きます。それでも馬車よりも速いはずです。」

「…………頑張れよ。」

 諦めたな隊長。諦めないでよ隊長。が、がんばって…無理かな。ジズとはたまに屋根まで飛んで貰って星空見ながらぎゅうしてお話するけど、長距離飛行はないなぁ。どれくらいいけるんだろう。長距離だったらずーっとジズの腕の中に入れるよね…何それ最高…あー、でも暗幕でくるんで飛ぶってジズが大変だよね。そもそも二人とも太陽浴びたら瀕死だと思っているし…うん。苦手なだけ…そろそろ白状しないと後が辛い。

「ジズにぎゅってしてもらって飛ぶの、好きだよ。」

 あ、照れた。くふ、可愛いなぁ。

「あと、僕…言わなきゃいけないことがある。」

 そう伝えれば、ぴしりと空気が凍った?ジズ、隠し事とかダメそうだもんね。いや、誰でも嫌だよね…

「あ~、じゃあ俺は戻るわ。」

「隊長にも謝りたいからここに居て?」

 うわぁって顔。

「俺を巻き込むな。」

「真剣な話。」

 真顔で見詰めれば、途端に真っ暗。あったかくて、お日様の匂い。

「そんなに隊長を見つめないでください。見るなら私を見てくださいね。」

 バサリと翼に囲われて、ジズの腕が後ろからぎゅうって抱き締めてくれる。それに安心しきって、真実を告げた。





「太陽…大丈夫です。言葉が伝わらないから大袈裟に言いましたごめんなさい。苦手な…だけ、です。はい。ごめんなさい。暗いところと狭いところが落ち着くし大好きだけど、太陽浴びても死にません。眩しいし、人の目がこわいけど、大丈夫です死にません。ごめんなさい。ジズの翼ハグだいすきです。」




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