ひきこもぐりん

まつぼっくり

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オタクは早口

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「ちょ、ちょちょちょ、まってまって。」

 落ち着こう、一旦落ち着こう。僕のちっぽけな朝勃ちではジズも気がつかないかもしれない。なんたって、副隊長様ですし…!ちっさいのなんてみたことないかも!知らないけど!

「…生理現象ですか。」

「ぐふっ!」

 大丈夫ですよ、と微笑んで頭なでなで。これはアレですか。私に身を任せて的な?

「…初めてですか?やり方わかります?」

 こくこくと頷けば抱っこで立ち上がる。大丈夫です。やり方わかりますー。普通にわかりますー。
 抱き上げられた時に触れられた腰がビクリと跳ねて、そろりとジズを見上げれば、苦笑い。

「さすがに寝起きをいきなりは襲いませんよ。……かなり我慢してますけど。……しても良いならしますけど。」

 ふるふると首を振れば、降ろされたのはジズの部屋についている無駄に広いトイレ。いってらっしゃいと送り出され、正直もう…半分萎えているけどこの際一応だしとこうかと心を無にする。いやだってさ、定期的に出さないと勃っちゃうじゃん。あっちでは成人したばかりの18歳だもん。あ…そういえばこっちの成人は何歳なんだろ。ジズは27歳って言ってた。27で役職ついてるの、凄い。本当に僕とは正反対…凄いなぁ。綺麗で、格好良くて、ちゅっちゅしてくるけど無理強いはしないし。僕の大好きな溺愛、執着、スパダリ…スパダリは…うーん…なぁんか、副隊長って響きがちょっとなぁ…今まで読んできた副隊長攻めは皆ちょっとほの暗いというか、監禁とかしちゃう系だったんだよなぁ…まぁ、雑食だから何でも美味しく頂いたけど。ジズのように美しい副隊長は黒い首輪と足輪持って頬染めながらガチムチ受けちゃんを裸で監禁お世話しちゃうんだ…ふぁ…想像するだけで無理。ジズ似合う。それでさ、バイブとか突っ込んでお出かけしちゃったり、仕事させたり…もうやめて…お願い挿れて…ってお願いされて嬉しそうに笑うの。やっばぁ…似合う…超似合う…あー…でもジズは俺が笑うだけで笑ってくれるし、俺がおやすみするだけでちゅっちゅしてくるな…
 はぁ。手についた白濁を雑に紙で拭う。丁寧に手を洗って、そっと扉を開ければ、少し離れたところの壁に寄りかかってる。気まずい。よく考えたら人様のトイレでオナった僕。
 これもアレじゃん。攻めのベッドとかでムラムラしちゃってシーツとか服とかの匂い嗅ぎながらひとりエッチして、獣人だから匂いでバレるやつじゃん…違うのは、こっそりじゃないってとこ。最初からバレてるもん。それでカラスって嗅覚どうなんだろ…えー…どうなんだろ。ちょっと匂いとか大丈夫…?

「ちゃんと出せました?」

「…う、はい、だす、した。」

 良い子、と頭なでなで。そして呟く。

「…精通…してるのか。」

 してるわ!何なら僕のBLはえろ本よりえろいわ…!そういえば、本の中身を見せたことないな。この世界はえろ本とかあるのだろうか…うーん、もう少し言葉覚えてシャルに確認しよう。


「ジズ、ごめん。」

「謝る事なんて一つもありませんよ。ただ、私の理性を試しているのかとドキドキはしましたが。それに、精通していると知れて良かったです。リューは年齢を教えてくれませんしね?」

 いやそれは成人の年齢を聞かないと怖いでしょうよ。大抵、獣人さんたちはさ、15,6歳で成人して婚姻可能になるよね?そんな話が多いよね?
 あとさ、こんなに良くして貰って、夜も一緒に寝て貰って、ちゅっちゅされても怒らないで、やっぱりジズとは~って言うのアリなの?恐ろしい事にやっぱりつがい補正なのか何なのか…ジズといると心がぽわんとしちゃうんだよ…何なのこれ…無理でしょ…抗えないでしょ…いや、抗うけど、一応抗うけど。…一応って何だよ。ハァ、チョロインな受けちゃんは大好物だけど何でそんなに直ぐに好きになれるのって思ってた。…BLはファンタジーだからって納得してたの。違かった。違くないかもしれないけど、やっぱり抗えなかった。いや、抗うけど!


「うあーー!」

「吠えても可愛くて愛おしいだけですので、朝食を食べてシャルのところ行きましょう?」

「そういうとこ!そういうとこぉ…帰る方法探すってのもモヤモヤしちゃうし…はぁ。」

 あ、こっちの言葉で話したから眉下げてる。かわいい。

「リューの言葉の意味も知りたいです。教えてくれますか?」

「そういうとこぉ…」

 優しいんだよ、もう!









「っていう事がありまして~、」

 聞いてないけど。シャルさん聞いてないけど。
 鼻押さえて目をカッと開いて暗い部屋で蝋燭つけてBL本を読むコウモリさん。
 いいんだ、言いたいだけだから。吐き出したいだけだったから。途中で話しかけたりはしないよ?ゆっくり読んでください。そして僕に言葉を教えてください…


「…ぐす、凄い、凄かった…エッチなのにこんなに純愛ッ、うぅ、ひぐッ、」

 うんうん。わかる。最初は血を飲ませて貰う代わりに守ってあげてただけなのに、いつしか関係なく守りたくなる心情の変化がやっばいよね…!

「こんなに素敵な物を読ませて頂いて、ありがとうございました。」

「シャル、くさる、なかま。」

「…?、では、言葉のお勉強しましょうか。」

「…はい。ことば、おぼえる、する。」

 そして腐った会話をするのだ。攻めと受けの解釈の違いを語り合うのだ。

「シャルぅ、」

「はい?」

「シャル、つがい、なんで?」

 語彙力…語彙力が無さすぎる。

「うーん…何で、つがいになったかという質問ですか?」

「…はい。」

「出会い頭に口説かれて、求愛されて、好きになったからですかねぇ…」

「…つがい?」

「力が強いとつがいだと感じるのも強いみたいですね。私はあまり感じなくて…求愛の果物が美味しくて美味しくて…好きになりました。」

「……?おいしーくて?」

「ふふ。理屈じゃないって事ですかねぇ。」

 何かシャルとだと会話がスムーズに出来てる気がする。

「ぼく、ことば、わかる?」

「私はコウモリですからね。コウモリは心を読むのが得意なんです。」

「えすぱー?チートじゃん。」

 よし、とりあえずシャルをしっかり腐らせて、仲良くなって、僕が書いた同人誌も読んで貰おう。








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