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起きたらカエルになっていました

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 ぽかーん。

 いや、まじで、ぽかーん。

 夢か?夢なのか…?

 ほっぺを触ればぺちょりとした感触。

 うん、知ってる。手足は見えてた。指はよっつで何かヌメッとしてて変な色。

 とりあえず鏡……と立ち上がろうとして、普通に立てなかった。

 進もうとすると自然に足がバネのように床を押してぴょこりと跳ねる。跳ねる跳ねる。

 全身映るような鏡なんてないから勉強机の足に向かって飛び付いた。

 やだ、こわい。なんでカエルの移動の仕方がわかるのだろう?

 ゆっくりと直角な足を登っていって、机の上にある小さな卓上の鏡に自分を写す。



「やばー。まじでカエルだ。なにこれ何カエル?見たことない柄だな。高そう…それよりこんな近くでカエルみるの初めて~。意外とかわい…くねぇよ!何だよこれ!何でカエルなんだよ!意味わかんねぇよ!!」



 カエルカエルカエル。ほんとやだ。俺が何した?何かした?してねえよ!

 昨日も学校から帰って隣の家の幼なじみのコウヤとこの部屋でゲームして、バイバイして、飯食って風呂入って寝たわ!くそ!



 暫く鏡に写る自分に悪態をつくが、このままカエルだったらどうしよう…

 母ちゃん俺だって気づくかな?そこは母親の愛で気づく、に賭けよう。でも、母ちゃんは最後の手段だ。

 何だろう、意味もなくカエル姿を見られるのは恥ずかしい。

 もしも、万が一に気がつかなかった時の為に、一度ベッドに戻りスマホをタップ。このカエルの手で反応するか緊張したが大丈夫だった。

 逆に何でだよ!くそ!

 ぺったんぺったん頑張って母ちゃんにメッセージを送信。



「きょうもしかしたらかえらないかも。」



 お!すぐ既読。



「了解!ご飯作らないね!」



 いや、一応作っておいて欲しいぜ母ちゃん。

 まぁいいや。何もなかったらコウヤのとこで飯食お。

 何とか枕の下にスマホを隠す。



 暫くすると家のチャイムの音が響く。

 タンタンと軽やかに階段を上がってくる音。

 ノックなしでいきなり開けるのは母ちゃん。



「アイキ~コウ君来てるけど~?あ、やっぱりいないわ。コウ君、さっきアイキから帰らないかもって連絡来てたからどっか出掛けてるわ!」



 俺の部屋から玄関に向かって大声を出す。

 ふと、部屋を見渡してハァッてわざとらしくため息吐いて、ぐっちゃぐちゃなタオルケットに手を伸ばした母ちゃんと目が合った。

 最終手段だったのに、こんな姿がやけに恥ずかしく感じて、「よぅ。」と片手をあげ「イヤァァァァ!カエル!無理!!」た。



 悲鳴を上げながらタオルケットを放って、ティッシュ箱に手を伸ばす母ちゃんを見上げる。あ、そうだ。母ちゃんGとかは全然動じないけど、ヌメヌメ系一切だめだ。終わったな。





 諦めかけたその時、 息を切らしたコウヤがパシッと母ちゃんの腕を掴んだ。し、しんゆう~~!お前はただの幼なじみじゃない。心の友と書いて、心友だ。ピョコピョコと跳ねながらコウヤに近づくと空いている手をそっとベッドに乗せて「おいで。」と優しく囁く。



「コウヤ~~!」



 俺が叫びながらコウヤの大きな手のひらに飛び乗るとそろりと背中を撫でて母ちゃんに向かってその綺麗な形の口を開く。



「こいつ、俺のペットなんです。朝起きたらいなくて、探してもいなくて、ダメ元でアイキのとこに来たけどいて良かった。」



 は?



「あ、そうなの?取り乱してごめんね、アイキが勝手に連れてきたのかしら。後で叱っておくわね!」



 はぁ?



「んーん。いつもこの部屋で遊んでるし昨日俺にくっついて来ちゃったのかも。んじゃ、帰ります。お邪魔しました。」



「まてまてまて!俺だよ!アイキだよ!コウヤ~!」



 頑張って叫ぶけどコウヤはチラリとこちらを見てふわりと笑うと無情にも告げる。



「今日はやけにケロケロ鳴くね?怖かった?」



 言葉…通じねえのかよ!あーまじでどうしよ。

 ずんずんと進んですぐ隣の家の二階の奥の部屋。入るのは小学生以来のコウヤの部屋。

 やっぱり…いる。

 こいつは爬虫類が好きなんだ。トカゲとかヤモリとかカメとか。

「もう安心だよ。」って入れられた湿った土と水場がある水槽は…ヘビの水槽の真横だった。そう、この部屋に来なくなった理由はこのヘビだ。

 俺はヘビが凄く苦手だ。その目も牙も舌も全てが怖いのだ。

 そんなヘビの隣…じーっと見てくるし怖すぎる。



「ごはんかえってきた…」



「ヒィッ!俺の事、ごはんって言った?言ったよね?違うよ!やだよ!」



 え、まじでこのヘビさんの餌じゃないよね?コウヤ~!

 俺の声が届いたのか届かないのかコウヤは俺の水槽の蓋を少しずらすとポイっと何かを落とす。



「ヒィィッ!」

「ヒィィィッ!」



 どちらがどちらの悲鳴かわからない。怯える小さなカエルの俺と、俺よりも小さなコオロギ。



「た、たべないでっ!」

「たべたくないたべたくない!こっちにこないでぇっ!」







「ごめん。コオロギさんってGにちょっぴし似てるから・・・苦手・・・」



 お互い少し落ち着いて、水槽の端と端で離れてそう告げると、凄く落ち込んだ。



「なんだろう。いのちびろいしたはずなのに、このくやしいきもち。」



 くぅ



「お腹すいたなー。」

「ヒィッ!」

「大丈夫…食べないから…」



 それから俺はコオロギさんにポツリポツリと話し始めた。

 起きたらカエルで、母ちゃんに叩かれそうになって、ここにいる。

 5分で終わった。コオロギさんが信じたかは謎。

 コオロギさんは「アイキの餌」って書いてある箱から来たって話してくれる。なに、アイキって…あ、このカエルの名前なの?そうなの?

 こいつペットに幼なじみの名前つけてんの?こわ…

 え?こわ…



 その後もコオロギさんは誇らし気に語り出す。



「アイキの餌になるのは大変なんだよ!まずぼくたちは高級コオロギで栄養価バッチリだし、そこからアイキが食べやすいサイズのものがニンゲンに厳選されるんだ。」



 あ、うん。すごいすごい。凄い誇らしげに話してる。餌なのに。



「それでね、規格外の大きめな個体は…となりに入れられるんだ…おやつに。」

「…となりか、」

「…うん。」



 お互いに頷いて、そっと隣を覗けば変わらず見つめられてる。



「ごはん…おやつ…」



 そっと目線を外して下を向いてコオロギさんに告げる。



「とりあえずさ、そこの家みたいなところに隠れなよ。共存しよ。俺が人間に戻れたら助けてやれるし。」

「わぁ、いいの?ありがとう。でも、どうやって人間に戻るの?」

「あー、それなんだよなぁ。」



 ベタなのはお姫様のキスとか?いや、無理だろう!こっちはカエルだぞ!そして姫なんていない。



「童話とかで良く聞くのはキスとかなんだよな~」

「きすってなにさ。」

「えー。接吻?唇?虫に唇ないか。口と口をくっつけるんだよ。」



 きもちわるって顔すんなよ!コオロギみたいに羽鳴らして求愛も人間からしたら意味わかんないし!



「…しょうがない。いいよ?」

「は?」

「キス、してもいいよ?」

「…ないわー。絶対コオロギさんとのキスじゃ戻れないわー。あと、近くで顔みるのこわい。」



「ぐぬぬ。こっちだってしたくないのに、なんだろうこのくやしいきもち。」



 コオロギさんがぐぬぬってしてると部屋のドアが空いてコウヤが入ってきた。昼飯食ってきたんだろう。くそ。お腹すいた。

 水槽のガラスをぺたぺたしてアピールしてみる。とりあえずここから出ないと話しにならん。



「どうしたの。まだお腹すいてる?コオロギは?」



 コオロギさん隠れてないし…ぐぬぬしてるし…

 コウヤは少し悩んで今度はドライフード的なものをパラパラと入れてくれた。これなら食べられそう!ありがとう心の友!



 食べたいと思ったら普通に舌がぴゅって飛び出て、気がついたら口の中に餌が入ってた。カエルこわ。コオロギさんがちょっと怯えてる。無理もないな、自分でもよく分からないくらい速かった。んー、旨い!普通に旨い!原材料は見ちゃいけない味がする!



 ひとつはコオロギさんに残しておこ。食べるかわからないけどな。



「あー、アイキかわい。アイキ癒される。それにしてもあっちのアイキはどこいったの。帰らないかもって、泊まるくらい仲良い奴俺以外にいたの?もしかして…男できた?」



 こわ。コウヤこわ。そしてアイキアイキうるさい。そしてせめて男じゃなくて女って言えくそ。ちなみに泊まるくらい仲が良いのはお前以外いない。言ってて寂しいがいない。友達はいる。でも何故かそこまで深く仲良くなれないのだ…

 まぁ、コウヤがうざいくらい構ってくるので他の奴と遊ぶ暇もないから良いけど。

 水槽を覗き込むコウヤに出してとテレパシーを送りながら、ずっと視界に入っていたけど、脳みそがシャットアウトしていた壁際に視線を向けた。

 そう、気づいてたけど、気づきたくなかった。コウヤの部屋には俺の写真が多すぎる。

 俺も写真は部屋に貼ってるけど、コルクボードにコーヤとのツーショット一枚と、中学生の時の部活の最後の大会でメンバーみんなで撮ったやつ一枚と、高校の文化祭のクラス写真一枚の計三枚だけだ。

 コーヤの部屋はほぼ俺だ。普通サイズからコピー用紙くらいまでの大きさの俺が綺麗に並んで貼られている。



 これさ、コウヤさ、俺の事好きすぎだろう。いや、怖すぎだろう。

 ストーカーか。ストーカーなのか。俺のストーカーなのか。

 コウヤさん、あなたの好みがわからんよ…

 こんなちんちくりんがいいのか心の友よ。

 俺が部屋をキョロキョロと眺めていると、本棚から一冊のフォトアルバムを取り出した。

 ここからじゃ良くわからないけど、たぶん俺だな。むしろこんだけ俺の写真貼っておいて俺じゃなかったら何か悔しいわ。



 ベッドに寝転んでパラパラとめくっていく手が一枚の写真で止まる。写真を抜き出して、ファイルを枕元に置く仕草はとても丁寧で、うっかりそのしなやかで割と筋肉質な腕に見惚れてしまって後悔した。

 その写真っ、プール行ったときの!



「ハァ、アイキ、可愛いなあ。」



 やめろ。俺の乳首さわるな。写真だけど、写真だけどやだ。何かが減るわ!



「ん…かわい。」



 ほんとやめろ。下半身さわるな。俺をオカズにすんなよお!無理だろ!わかるよ!?好きな子をオカズにしたい気持ち、でも、俺はダメだ!

 居たたまれなくなった俺は餌を入れるときに少し開いた隙間から身を乗り出す。

 幼なじみのひとりえっちなんてみてられん!むり!もう帰る!何かハァハァ聞こえる!むり!

 水槽から出て気持ち的には一目散にぴょこぴょこ跳ねてコウヤの勉強机へ。

 疲れた。少し休憩、そのとたんに大きな手のひらに包まれた。



「こらアイキ、出ちゃだめだよ?もう、本当に困った子だな。」



 お前がな!

 お前のえげつないちんこのが困った子だよコノヤロウ!

 丸出しだよ!隠せよ!



 水槽に戻されるかと思いきや、コウヤは俺を手にのせたままベッドに戻る。



「アイキ可愛いなあ、目がそっくり。」



 まじか…俺ってカエルっぽかったんだ。何か、つらい。

 しかもカエル顔に惚れる幼なじみって、こわい。

 カエルに似てる俺が好きらしいこの幼なじみなら人間に戻してくれるんじゃないかという考えが頭を過る。

 思い付いたら即行動!ぴょんぴょこ跳ねて唇に飛び付いた。



「ちゅっ」



 驚いたコウヤが僅かに仰け反り、その反動で小さな俺は後ろへ落ちる。





 …戻らねえのかよ!くそ!変態にファーストキスあげたのに!

 それにしても、落ちたとこちくちく痛い。ぴょこりと体制を整えて、顔を上げたら目の前はバッキバキビッキビキの肉棒でした。



「やば。アイキにキスされた。可愛い。そんで凄い反応してるから、そこにいて?」



 まじか。こいつやべーよ。ほんとこえーよ。気持ち悪くて、イライラして目の前の凶器を思い切り殴った。



 わかってたけど全然効かない。それどころかハァハァして喜んでるよ…だめだこいつ。諦めよう。

 

 そうだ、目の前の肉棒によじ登って、先端から飛ぼう。



 俺は非現実的な状況から頭がおかしくなっていた。

 毛もちくちくするし、抜け出せないし。

 反り返って登りにくいちんこをよじよじと進んで行く。

 もう少しで、頂上だ。丁度足をかけやすいところがあるしと、後ろ足をかけて力を込めて先端に着いた瞬間何かに押しやられて息が出来なくなった。







「オエッ、うあ、なに、これ。にがいしねばねばえ、これ、精子?は?うそ、むり。え、こいつカエルで射精したの…?へんたい。きも。まじむり…」



 ペッペッとベッドの上だろうが気にせず吐き出す。あー、くそ。





「顔射…アイキ可愛い。」



 へ ん た い



 ドン引いた顔を向けたと思う。あれ、目線近くね?

 もっと見上げてた感じだったような?



「んっ、んあッ、おい、へんたい、や、めろッ!」



 何故押し倒されてべろを口に突っ込まれてるんだ。

 ぐにゅぐにゅ動く舌と送り込まれる唾液に息が出来ない。

 ってか!キスじゃなくて、精液で人間に戻るとか、何なの?

 呪いなの?淫魔からの呪いなの?んなもんいねーよ!



「あぁ、アイキ可愛い。本物が顔射されて俺の部屋にいるって何のご褒美?」



「しらねーよ!顔射したのはお前だよ、変態!どけ!服脱がせんな!」



「何言ってるの?逃がすわけないでしょ。次にアイキがこの部屋に入ったら絶対犯すって決めてたんだから。本物の乳首、かわい。頂きます。」



「ちょっ、まじやめろって!ひぁッ、変態っ!噛むな、舐めるな、離れろ!」



 うっとりとした顔で俺の乳首を転がして、キュッと強めに摘まむ。舐めて、甘噛みして、嫌なのに感じてしまう。



「ん、嫌なのに、感じちゃってるのに変態って罵ってくるの…ゾクゾクする。可愛い。」



 あーッくそ!こいつなんなん!頭おかしい。

 誰かに助けを求めようとして、思わずコオロギさんを見た。

 …めっちゃこっちみてる。ガラスに顔つけてこっちみてる。

 もう言葉はわからないだろうけど、「がんばれ」って聞こえた気がした…



「が、がんばれないぃ。」

「大丈夫。痛くないようにしっかり解すから。一緒にがんばろ?」



 お前には言ってないぃ!































「アッ、アッ、やァっ!も、だめ。コ、ヤ。お、ねが。」

「ふふ。快楽に弱いのは想像通り。本当に可愛い。俺以外にこんな姿、見せちゃだめだ、よッ?」

「イヤァッ、んっ、アァッ、こーや、だけ。こーやだけだからッ、もお、イかせてえッ、くるし、よおっ」



 ガツガツと打ち込んでくるのに俺のちんこはコーヤに塞き止められていて、出せなくて苦しい。



「アイキ、出したい時は何て言うんだっけ?」

「ひゃあッ、んっ、こーや、のおっきいちんぽでっ、アイキの、なか、いっぱ、いに、してェッ!」



「あー、もう、アイキが可愛すぎて心配が尽きないなぁ。じゃ、お望み通り沢山イかせてあげるね♪」





























 スマホのアラームで目が覚める。自分の部屋だ。

 あれは…夢?

 何となく重い腰を庇って、母ちゃんの朝飯食って、歯磨いて、制服に着替えて学校へ行く。

 いつもより1時間も早い。朝練に燃えてる奴等を横目に教室に入った。

 チラホラと登校してくるクラスメート。



「はよ。」

「おー。」



 中学からの俺とコウヤの友達。コウヤは特進クラスだけど、こいつとは高校もずっと同じクラスで、席も前後。



「どした?元気の塊が元気ねーな。」

「幼なじみで心の友が変態でストーカーだったんですが…俺の。」

「…え?今さら?」

「、え?」

「え?ほら、今日も特進クラスからわざわざ来てるじゃん。遠いのに。」







 微笑む変態と目が合って、尻の穴が疼いたのは気のせいだと思いたい。
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