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3 お花屋さんにホームステイ

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 書類を差し出され目を通す。
 理美容室、食堂、飲み屋、花屋、治療院事務

「悩むけど…花屋が良い。」

「花が好きなんですか?」

 また意外そうな顔をされる。

「好きではないけど色なんかの合わせ方は学んでたからな。出来なそうだったら無難に飲食店とか考えてみる。」

 父親が茶道の家元だったから華道もある程度は学んでいた。
 まぁ俺は妾の子だから本当に習っていた程度だけれど。

「そうですね。出来そうなものからやっていくのも良いでしょう。それでは早速行ってみましょうか?」

「…?」

「あなたのホームステイ先です。」

 展開はやいな。

「花屋はすぐそこですし緊張せずとも大丈夫ですよ。それに奥様に当たる方は落ち人です。」

 こういうのは勢いが大事ですよ?とにっこりして立ち上がる俺の担当と名乗るこの美人な奴、リオンに促され、立ち上がり着いていった。









「、天使だ。」

「見かけは天使ですが、中身はただのチンピラですので。」

「あぁッ?リオン、テメエ表へ出な!」

 綺麗なブロンドの巻き毛。
 女の子のような幼げな可愛らしい顔。
 そして紛うことなき純白の翼。
 どこからどうみても天使だ。

 まぁまぁ、と柔らかい声で二人を嗜めるのは声とは逆に強面の大男。二メートルはこえてるだろう。それよりも…

「浮いてる…」

「えぇ。大層立派な羽がついていますが、この天人の血を継ぐ者は飛べませんし、見てわかる通り浮くことしか出来ません。」

「この、クソが!俺たちはふよふよ浮いてるのがめちゃくちゃ可愛いらしいって人気なんだよ!」

「確かに…」

「「え?」」

「確かに、浮いてるの可愛らしいし、癒されます…俺はただの人間だから浮くことは出来ないし、ただただ羨ましいです。」

 天人とか、凄いと単純に思う。飛べなくたって浮いてるし、可愛い天使だし。口は悪いけどサバサバ系の奥さまで良かった。

「本日よりこちらでホームステイさせて頂きます、本城ほんじょう雪兎ゆきとと申します。いきなりの事で気持ちが追い付かず、ご迷惑をおかけすることもあるかもしれませんがよろしくお願いいたします。」

 とりあえず基本の挨拶と、笑顔。明らかに異世界っぽい天使とどうみても熊の獣人であるだろう旦那さん。
 うん。もう、受け入れよう。どうせ戻ったって良いことなんてない。だったらここで、第2の人生を謳歌したい。まだ後ろ向きになってしまう事もあるだろうけど…とりあえず生きていくためには仕事だ。

「あー、リオン、なんか、珍しく良い子連れてきたね。びっくりしたわ。落ち人はまぁ、しゃあないけど悲観してるし挨拶どころじゃねーし。辛いこととかあったらこのクソでも良いし俺でも、愛妻にでもいいから溜め込まずに気軽にいこーや。俺はこの国出身のニコ。んで妻はジロマニ。見ての通り獣人で落ち人だよ。よろしくな。」
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