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第二章
我、魔王のマオぞ!
しおりを挟む「我、魔王のマオぞ!」
「は?」
それはとても急な出来事だった。
「…え。え、今マオさんお話した…?えぇ!リオ!マオさんがお話した!」
『ムムムムムイッ!』
ハイ可愛い。驚いてるシズカは変わらず可愛い。ここでの生活を始めてからも可愛さは日に日に増している。
「あー、話したというよりな、姿も変化してるな。」
「マオさん…すごい…」
ここで凄いと言えるのがシズカ。確かに嫌な感じはしないが、一度は自分を捕まえて首輪してベッドに繋ぎたいと言った奴なんだが。あー、思い出したら殺したくなってきた。
「消しとくか?」
「えぇっ!だめだよ!マオさんはメルさんのお友だちだし、もう黒くないもの。綺麗な白いほわほわだったでしょう?ね?マオさんはもう意地悪しないよね?」
あれはシズカの中ではただの意地悪なのか…まぁ、害がなければシズカが決めれば良い事か。
「我は魔王のマオぞ。意地悪などもちろんするぞ!」
「…え、そうなの?意地悪されたら嫌です。」
『ムーイー』
「む。そうなのか…」
「マオさんの意地悪ってどんな事ですか?」
「我は魔王だからな、朝食のパンを先に食べたりメルの夜光草を黄色に染めたりするぞ!」
「わ!メルさんは黄色の花びらが好きですもんね。マオさんは優しい魔王さまですね。」
『ムイ。』
「む。そう言えばメルは黄色が好きだったな。むむ。まぁ良いか。…ふぁ。」
マオさんおねむみたいだからベッドを用意しないと……と箱を探しにうろうろするシズカに気が抜ける。
「リオ、この林檎が入っている木箱とこっちのブランケット使っても良い?」
「あぁ、良い。中の林檎は出しておくか。」
「うん!丁度アップルパイを焼こうとしてたの。」
「シズカのアップルパイ好き。シズカの方が好きだけど。」
「ぼくも、すき。」
えへへ、とはにかみながらぎゅっと抱きついてくれるシズカの髪は以前より伸びて一つに括れるようになった。揃いの髪紐が嬉しい。
「我は魔王だからな、んむ、んん…あっぷるぱいも独り占めするぞ……ふぁぁ」
「マオさんおめめが閉じそうですよ?アップルパイは起きたら皆で食べましょうね。皆で食べた方が何倍も美味しいです。」
「ん…そうなのか。ならば、良いぞ……んむむ…」
木箱にブランケットを敷き詰めて、シズカはそっと元魔王であるマオを抱き上げて寝かせる。トントンと胸を叩けばすぴすぴと即寝。まじか…改めて、まじか。
「優しいマオさんで良かったぁ。白いほわほわな光のマオさんも可愛かったけど、この、小さな子鬼さんみたいなマオさんも可愛い。」
子鬼はわからないが、褐色の肌に小さな角と漆黒の翼……30センチくらいだけど。魔力も感じないし、力もないだろうな。魔王だとは理解しているのか…元だけど。アップルパイを焼くと言うシズカに何かあれば転移としつこく告げてからマリアとニコラスに声をかけて、ヤサを探しに行くことにした。
「害のあるようには見えんな。魔法もほぼほぼ使えんだろう。」
「あぁ。これからもだと思うか?」
「恐らく。聖なる光を浴びて、空っぽになった魔王としての器にその後も聖人であるシズカの魔力とステラリオの魔力を浴び続けて変化したのではないか?話してみてどうだった?」
「クソわがままな餓鬼って感じ。善悪の違いどころかあいつの考える悪は悪戯程度。」
「ぶは!そりゃあ良い。お前さんの幼い頃より幾分もマシだのう、ステラリオ?」
「うっせぇ。」
「メルロは警戒しているか?」
「いや、全然だな。木箱に潜り込んで一緒に昼寝してたし、俺やニコラスへの態度の方が酷い。」
「ぶはは!ならば心配はなかろうな。良き子育てをしてくれ。」
「シズカが嬉しそうだからな、教育はしたい。」
シズカを裏切る事のないように、シズカが悲しい思いをしないように。
「まぁ、赤子のようなものであるし気長にな。シズカは何してるんだ?」
「アップルパイ焼いてくれてる。ヤサには羊型にするって言ってた。」
「なんと…!可愛い孫だのう。」
「保護者うぜぇ。」
シズカにこづかいとメルロたちの寝床用に羊の毛玉を持って来ると一度戻るというヤサを見送った。
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