十七歳の狸さん

まつぼっくり

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楓夜と雪成

毎朝すること

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 楓と雪の生まれ変わりである楓夜ふうや雪成ゆきなりは今日もらぶらぶでいちゃいちゃである。



 目が覚めて、一番にすることは雪成の胸に耳をあてて心臓が動いているかチェックすることだ。
 前世では、起きたときはまだ暖かかった。なのに息をしていなくて、次第に冷たくなっていって。
 今ではしっかりトラウマで朝はもちろん夜中に思い出して飛び起きることもある。そんな時は雪の胸の音を聞くと良く眠れるのだ。

 雪は昔から可愛い。狸の姿も人間の姿も可愛いかった。昔から華奢で小柄で何度も言うが可愛い。それに加えて今では梅雨時には喘息が強く出て少々辛そうだが、それ以外では健康体である。夏には日焼けして海で遊べるし、冬には着込んで雪景色を見に行ける。
 先に待っていると思い込んでいた雪が今世で十も年下なのには驚いたが、俺と同じ世界、そして国に生まれる為に神のところで働いていたようで…胸が熱くなった。

 俺の今世はというとこの国の一番の都で生まれ育ち、物心ついたときから待ち合わせスポットで雪を待っていた。中々現れない雪に寂しさや時折苛立ちを感じながら、都内の待ち合わせスポットを回る日々。
 ただ、諦めるという選択肢はなくて。必ず雪も来るという確信はこの地に生を受け、前世の記憶があることからひとつも疑うことはなかった。





 トクトクという心臓の音とスゥスゥと穏やかな寝息。
 とても幸せな音を噛み締めてるとそっと回った腕にぎゅっと力がこもる。
 むにゃむにゃと笑みを浮かべて寝言を言うものだから、可愛くて耳を当てていた胸に顔を押し付けた。

「んむ?ふうちゃん、せっちゃ、また、おっぱいなのお…?ぼ…く、ねむい。から、すきにのんでもいいよ…」

 瞳は閉じたまま、楓花と雪花の夢をみているのか。
 可愛い雪の可愛い寝言。そんな雪が飲んで良いと言いながらパジャマ代わりの緩いTシャツをぺろりと捲ったものだから、白い肌に映える薄紅色のぷっくりとした果実に吸い付いた。


「ひっ、あぁぁぁぁ!」
 ジュッジュッと何も出ないそこに執拗に吸い付き、もう片方は二本の指でキツく摘まむ。
 摘まんだそれを転がして、引っ張って。薄い紅色から濃い紅色に変化したら優しく舐めて。

 腰に響く声をあげてはいるが、まだ夢の中なのか俺の頭を撫でる手つきはそろりと優しく、夢の中で二人を撫でているのだろう。幼子を残して逝かなければならなかった雪を想うと胸が締め付けられて、ぎゅっと抱き締めた。



「ん…?あれ?楓夜だ。」

「雪成、はよ。」

「わ!」

 驚いた声をあげてモゾモゾと布団に隠れる雪。
 これは朝勃ちだと思ってるな。

「あのね…えっちなゆめ、みた…」

「ん?」

「楓花と雪花におっぱいあげてたんだけどね、途中から楓とえっちしてる夢みちゃった…楓夜じゃなくて楓。金髪で、ドキドキしちゃった。えへ。」

「金髪にするか?」

「ふふ。何で?金髪の楓も黒髪の楓夜も変わらず大好きだよ?」

 僕ももう狸には変化できないよ。

 そう言って微笑む雪をやっぱりキツくキツく抱き締めた。



「…子狸の雪も今の雪成も愛してる。生きてさえいてくれれば何でもいい。」

「もうっ、子狸じゃないってば!大人だよ!…大人だから、ね?夢の続き、して?」

「あぁ、もう可愛いなァ。」



 この後、三度繋がって未だにベッドの中。
 休日って最高だ。


「楓夜、子供たちのこと教えて?」

 雪はいつも子供たちの話をせがむ。

 カカに会いたいと泣く二人を抱き締めて眠ったこと。

 毎年雪の誕生日には墓標に向かって話しかけていたこと。

 初めての恋も初めての恋人も俺にじゃなくて氷雨さんに報告していたこと。

 おねしょを二人して隠したり、二人が悪戯に入れ替わって学校へ行き、先生たちに雷を落とされたこと。

 どんなに小さな話でも泣いたり笑ったりしながら楽しそうに聞き入る雪。


 何度も中に吐き出した、この薄い腹に手を当てて、強く願う。
 もう一度、家族になりたい。

 自分の家族を持って、幸せに暮らしたであろう子供たち。
 前世に未練はないかもしれない。
 でも、あいつらも俺と似ていて雪が大好きだったから。
 もしかしたら…なんて思ってしまうのは。
 思いを馳せるのだけは許して欲しい。

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