十七歳の狸さん

まつぼっくり

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少しだけ、待っててね

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「よし!じゃあ楓は寝ましょうね。」

氷雨姉のおかげですっかり綺麗になった小屋のお布団にまた横になるように促す。

「俺が今までどれだけ寝てたと思ってるんだ?もう眠くない。」

「眠くなくても寝るの。傷は治ってお熱も下がったけど、体力はなくなってるんだから。明日は、沢山歩くことになるよ。」

「んじゃ、一緒に寝るか。」

先に布団に入って僕の入るスペースを空けてポンポンと布団を叩いてニヤリと笑う。
その魅力的な誘いに乗ることにして、隣に滑り込んだ。
硬い胸元に横顔をつけて瞳を閉じれば、聞こえてくる心音に安心して身体から力が抜ける。それを見て、楓が話し出す。

「本音を言えば、」

「ん?」

「帰りたくない。」

「うん。」

「更に本音を言えば、」

「ん、」

「連れて帰りたい。」

「…」

僕も帰って欲しくないよ。着いていきたいよ。

「ここなら人が来ないから安全なのはわかるし、こっちの国に来たら獣人として大切にされるだろうが、俺の立場からして狙われたりすることもあるかもしれない。」

堪えきれずにむぎゅむぎゅしちゃうと、クスリと笑われたのに気づく。

「本当に雪は可愛いなァ。可愛いだけだったんだけどな、出会ったばかりだし。今は愛おしくて、堪らない。」

楓の胸の中から見上げると、困ったような悲しそうな表情で思わず首に腕をかけて頭を引き寄せて唇を合わせた。

「んふふっ!」

一瞬で離れたけど、ポカンと呆気にとられた少し間抜けな顔がみれて思わず笑ってしまう。笑った事で我に返ったのか、噛みつくような口付けをされて、息も絶え絶えに二人の唇を繋ぐ銀の糸を見た。

「っ、ハァ、あのね、僕、凄く弱い個体で家族や村の皆に心配ばっかりかけてて、恩返しがしたいの。」

「、あぁ。」

「だから明日一緒に行くことは出来ない。」

フゥーッと静かに息を吐く音を聞いて、痛いくらいに抱き締められた。

「でもね、沢山ありがとうを伝えて家族に許して貰えたら、貰えたらじゃなくて、絶対許して貰うから。そうしたら楓のところに行ってもいい?ね、だから、泣かないで?」

ぎゅっと抱き締める腕が震えているからわかるよ。そう言ったら泣いてないって言われると思ったのに。見るなって言うから、思わず言葉が出る。

「楓、好き。」

「、ハァ。俺を試しているのか?」

「試してるわけではないけど、暫く会えないし、楓が欲しいなって思う。」

こんな恥ずかしい事を言うなんて!とポポポっとほっぺが赤くなるのがわかる。でも、あんまり時間がないから我慢なんてしてられない。

「後悔しても止められないからな。」










「アッ、やぁ、、あァッ」

グチュグチュと楓の太い指が僕のお尻の穴をかき混ぜる。

「何でこんなに濡れて、溢れてくるんだ?子狸だからか?」

「ひゃあぁっ、だ、からっ、もう大人、だものッ。子だぬきじゃ、ないぃっ」

ジュポっと卑猥な音をたてて指を抜くとパクパクとはしたなく動くそこに楓の舌が捩じ込まれる。

「ん、やあっ、もう、だいじょうぶ、だからっ、」

楓の大きくて太いのがぴとりと当てられる。

「雪、好きだ。待ってるから、早く来いよ。」

「ん、うんっ。すき。楓だいすきぃ」

「あぁ、もう本当に雪は可愛いなァ!」

ちょっぴり強引に奥まで押し込まれた楓のをとろとろになるまで解かされた僕のそれは少しの抵抗だけで受け止める。
ゴリゴリと気持ちいい出っぱりを責められて頭が真っ白になって僕は初めてなのに何度も何度も高みに昇ってしまったのだ。



目が覚めたらお外は真っ暗。

「楓、僕寝ちゃってた?せっかく氷雨姉がくれた時間なのに勿体ないことしちゃった。」

「少しだけな。大分無理させてしまったなぁ。雪が可愛い過ぎて。悪かった。」

「んーん!僕の方が楓のこと欲しがったんだもの。それに、気持ち良くて幸せだったよ。」

ぐぐっと強い力で引き寄せられる。

「そういうとこ、可愛い過ぎる。」

「えへ。楓からの可愛い、嬉しい。」

「明日は発つ前に雪の家族に挨拶がしたい。出来るか?」

あいさつ…

「出来るけど、獣人ってね基本的に本人が決めた相手なら口出さないの。でも僕の家族は、カカと氷雨姉以外は反対するかもしれない。」

「だろうなァ。俺も雪の父親だったら結婚は中々許せないな。殴られても、罵倒されてもお願いする。」









翌朝楓は、怒りを隠さないトトと陽兄に土下座して僕との事をお願いした。僕も隣で同じように頭を下げる。

トトと陽兄は一発ずつ楓を殴った。それでも頭を下げ続ける楓と、そもそも関係を持ったのは僕の方からだという訴えと、カカと氷雨姉が味方になってくれた事から、最終的には条件付きで村から出ることを許してくれた。
条件は、一年はこの森で生活すること。その間会わないこと。それでも気持ちが離れなかったら、という事らしい。


氷雨姉と一緒に楓と浪を送っていく。

「楓、痛くない?大丈夫?本当にごめんなさい。」

「雪との事を認めてくれただけで嬉しい。それだけだ。」

よしよしと撫でてくれるその手を取って繋ぐ。

「浪も、ありがとう。」

「いや、俺は何も出来なかった。お前たちには感謝しかない。救ってくれて本当にありがとう。楓が浮気しないように、俺が目を光らせとくからな。早く来いよ!」

ぐじゃぐじゃに頭を強く混ぜられ、直ぐに楓に手を叩かれている。

「ふふ。僕も氷雨姉が浮気しないように目を光らせといてあげるね。」

「は!?」
「雪ちゃん!」

二人とも照れちゃって可愛いなあ。




「それじゃあ楓。また、一年後。」

「あぁ。今日から丁度一年後、ここに迎えに来る。」

触れるだけの口付けをして、歩きだした背中に向かってそっと呟いた。

「一年後には、僕だけじゃないかも、ね?」






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