純情令嬢は執事の大きすぎる愛に包まれる。

本編

隣にいない

マイラside

ルイが突然お屋敷を去ってから、早くも2年が経過した。


あれから、私はなにも変わらない日々を過ごしていて。

相変わらず、お見合いの話はお断りし続けている。

信じているの。
ルイが帰ってくるのを。

現実と向き合いなさい、なんてお兄様は言うけれど。

あの部屋で、誓ったのだから。
次の日、ルイはなんの挨拶もなく出て行ったけれど。


私の隣はルイだけなのよ。

不安がないといえば嘘になる。

急に胸が押しつぶされそうになって、訳もなく涙が出てくる時もあった。

だけど、一度私はルイの愛を疑って取り返しのつかない事をしかけたから。

もう疑わない。疑いたくない。ルイの愛を。

｢それにしても…今日は生憎のお天気だわ…｣
シャワーのように雨が降り続けている。

私の心みたいね、なんて思いながら、
ふと、外を見るとお庭いっぱいのバラ。

あぁ、こんな日は出会った頃を思い出すわね。

あの日から…私の運命の人はずっと、傍にいたなんて。

私たちが初めて言葉を交わした、お庭の隅っこを見ても今は誰もいない。

｢ね、ルールー。あなただけね｣

ニャーンと鳴くのはあの日私たちを引き合わせたキューピット。

｢はぁ、ルイ…今はどこで何をしているの…？｣