純情令嬢は執事の大きすぎる愛に包まれる。

本編

疑惑、そして怒り

マイラside

あれから幾度となくルイと口付けを交わしている。

2人きりになればどちらからともなくキスをして。
チュッと軽いものから、舌が食べられそうなほど深いものまで…

すっかりルイとキスすることは当たり前になっていた。

でも、初めてキスをしたあの日のように体を触られることはない。

キスの時間が長ければ長いほど、『触って欲しい』と思いが強くなる。
だけど、｢触ってちょうだい｣なんて言えっこないし…。

キスの後にルイを見つめても、ニコッと微笑むだけ。

『あの日の夜のようなルイ、もう1回見たいわ』

日に日にそんな思いが強くなる。
しまいには、なかなか手を出してこないルイにもどかしさすら感じ始めた。

『結婚もしてないのに、ルイに襲われてもいいだなんて…私どうかしてるのかしら』

｢マイラ様、本日もたくさんのお手紙が届いていますよ｣
｢あら、ありがとう｣

メイドの持ってきた貴族の男性達からのお手紙。
交際の申し込みやデートの申し込み…

どれもこれも興味がなくて最近では返事もワンパターンになってきた。

『めんどくさいなぁ…ルイはどこかしら』

席をたち、部屋の外へ出る。

どこへ行くわけでもなく歩いていると、

｢ルイ様っ…｣

『あ…』
咄嗟に隠れる。

キッチンの前の扉の隅っこ。
ルイの後ろ姿と、またあの女の子。

『なにしてるのかしら、こんな隅っこで…』

こっそり2人の様子を見る。

｢…………｣
｢………｣

ぼそぼそ喋っていて声が聞こえない。

『あっ……！』

ルイが女の子の頬に手を当て、顔を近づけた。
目を見開いている女の子。

『えっ、えっ、？？？？』
頭がパニックになる。

キス…してるの？

ドクン…ドクン…
心臓が大きく揺れ動く。

…目眩がするわ。

『大変…ここにいたらバレる』
震える足で、その場を後にした。

『どういう事？？なに今の？？？？』
思わず走り出す。

ルイって誰にでもキスするの？私だけじゃないの？？

信じられないけれど、見てしまった以上あれは事実。

『ひどいわ、ひどいわ……私だけって言ったじゃない…』
部屋に入った瞬間、涙がこぼれ落ちる。

ひとしきり涙を流すと、だんだん頭にきた。

私、騙されてたの？弄ばれていたの？嘘でしょ？？？

『許せない！ルイがそうするなら、私だって…！』

ちょうど今夜はパーティ。
ルイに仕返しをしてやるわ。

そうと決まれば…！

さっそくメイドを呼んで、メイクを始めた。