純情令嬢は執事の大きすぎる愛に包まれる。

本編

言えない、素直な気持ち

マイラside

苦しいわ。胸が苦しい。どうにかなりそうだわ。

私を見つめる目の前のルイは、今までのルイじゃない。

小さい頃私の後ろをついて回っていたルイでも、執事になってスマートに私を守ってくれるルイでもない。

ただ、私をまっすぐに求めている1人の男性。

ガルシア卿の時の胸の高鳴りとはまた少し違う。
ドキドキするけど、安心感があって…今すぐにでも全てを委ねたい。

あぁ、今まで見ないふりをしていただけでやっぱりルイは理想の男性だったのだわ。

なにも考えずに、この恋に身を投げたい。
ルイが必ず守ってくれる。少しの心配も要らない。

｢私も貴方のこと好きみたいだわ｣
そう言いたい。
きっとルイは喜んでくれる。

言いたい。言いたいのに……

言えない。
頭の片隅にある鎖が私を縛っている。

それがなにかは、認めたくない。でも分かる。

『この気持ちは一体どうすればいいの…』

東屋の中、2人きり。

昔のように自分の思いを素直に言えたらどんなに素敵かしら。

貴方と一緒に走り出したい。

だけど今は。この美しい時間に浸るだけ。