上 下
21 / 36
ある日のはるなな(城崎遥陽×七瀬葵)

ゼロ距離フレンド 最終話

しおりを挟む
遥陽side

新しい学校。新しい顔ぶれ。新しい環境。

1週間もすれば、女子からラブレターや呼び出しが始まって。
昔なら無視していたけど、今は違う。

心の穴を埋めるように、俺は手当り次第付き合った。
適当に遊んで、適当に生きて。

なんの刺激もなくて、死んだような毎日が過ぎていった。


あっという間に月日が流れていく。
そして、高2になった時、瑠衣くんに出会った。

「あの、君!名前、なんていうんですか!?」そう声をかけられ、アイドルにならないかと持ちかけられた。

なにか刺激を求めていた俺。
やってみてもいいな、と思えた。

「まぁ…別にいいけど」
「え!?ほんとに!?ありがとう~!今日はすごい日だ!1日で2人もスターを見つけちゃったよ!あの子には感謝しないとなぁ」
「あの子?」
「君のこと教えてくれたんだ!七瀬葵くんって言うんだけど!」
「は…っ???」

ななちゃん?

「城崎遥陽ってスゴいかっこいい人がいるって教えてくれたんだよ!いや~すぐに分かったよ!ほんとにかっこ良かった!想像以上だった!」
「………………あの、やっぱ俺パスで」
「え!!!?どうして?!」
「すいません」

びっくりする瑠衣くんを振り切って、家に入った。

心臓がドキドキする。

ななちゃんが俺の名前を口に出した。
それだけで、舞い上がっていく感情。

「ななちゃん………」

1年ぶりにその名を口に出すと、閉じ込めていた気持ちがどんどん溢れてくる。

「…ななちゃん、ななちゃん、ななちゃん。」

あぁ。ダメだ。もう我慢できない。会いたい。会いたい。

外へ出ると瑠衣くんはもういなかった。
俺はななちゃんの家へ向かった。


30分、1時間、1時間半……
無心でななちゃんの家の前で立ちつくす。

そして、もう夕日も沈みあたりも暗くなってきたころ…

「はる…ひ?」
不意に懐かしい声が聞こえた。

「な、なちゃん…」
「遥陽!」
気づくと同時に、ななちゃんの体は俺の腕の中にあった。

「遥陽っ…!久しぶり…!」
そういう声は震えてて。

抱きしめると、1年前とは少し変化があって。
背が少し伸びたね。体格も良くなった。
髪型も前とは違うんだね。声も大人っぽく感じる。

でも、匂いは変わらない。お日様のような体温も。

あぁ…。やっぱり。この温もりがないと俺は。

「ななちゃん…会いたかった」
「俺も…っ、会いたかった!」

ここが外だということも気にせずに、きつく抱きしめる。

何分経ったか分からない。
会わなかったこの1年の空白を埋めるように、お互いの温度を交換した。

「ななちゃん、俺、やっぱりななちゃんいないとダメだ」
素直な思いを口にした。

「遥陽…っ。寂しかった!俺、ごめんね…遥陽の気持ち…分かってなくて…」
「ななちゃん。」

頬に手を添え、上を向かせる。

「俺さ、ななちゃんとただの幼なじみに戻りたくて来たんじゃないんだ」

そう言って、ななちゃんに触れるだけのキスをした。

「…………………っ」
みるみるうちにななちゃんの顔が赤くなっていく。
「ごめん、俺、こういう意味でななちゃんの事を好きって気づいたの」
「えっ、え…と、それは、つまり…」
「ななちゃん、今の嫌だった?」

ななちゃんは戸惑いつつも「ううん」と首を横に振った。

じっと目を見据える。

「じゃあ…ゆっくりでいいから俺の事、受け入れてくれる?」
「待って。遥陽…俺ね、俺もハッキリ言っておきたいことがある。」
「なに?」

ななちゃんが俺の目をじっと見つめる。

「あのね…離れてみてわかったんだ…。遥陽は俺にお世話されてる、なんて言ってたけど…実際は、俺の方が…遥陽に依存してたんだってこと。ずっと寂しかった。遥陽がそばにいないとなにかいつも不安だった。誰といても一人ぼっちな気がして。遥陽を突き放すようなことを言っといて、いざ離れられるとどうしようもなく怖くなっちゃった」
「ななちゃん……」

「思い知ったの。あぁ、俺、遥陽がいないと全然ダメなんだなぁって。」

結衣ちゃんにも、「七瀬くんっていつもほかの何かを考えてるよね。それがなにか、言わなくても分かってるでしょ?」なんて言われてさ。

結局フラれたしね。と、眉を下げて困ったように笑う。

「もう、あんなに辛い思いはしたくない…。なにかが足りなくて、毎日が退屈だった。どんな形であれ…俺は遥陽のそばにいたい。だから、俺のお願い。幼なじみでも…親友でも…恋人でも…遥陽の望む形でいいから…俺を…遥陽のそばにいさせて…っ」
「---っ!!」

言葉が終わるか終わらないか、待てずにななちゃんを抱きしめる。

「ななちゃん、ななちゃん…!」

自分が夢にまで見た言葉を、自分の大切な人が言ってくれた。現実に。
言い表せないエクスタシーを感じる。

あぁ……頭がマヒしそう…。

もう戻れない。
間違っていたとしても、普通じゃないとしても。
どんな世界がこれから待っていようとも。
これが俺たちの正解。

「部屋、行こ?」
そう言うと、ななちゃんはコクンと頷いた。


俺らの間にもう距離はない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

[R18] ヤンデレ彼氏のお仕置き

ねねこ
BL
優しいと思って付き合った彼氏が実はヤンデレで、お仕置きされています。

彼女ができたら義理の兄にめちゃくちゃにされた

おみなしづき
BL
小学生の時に母が再婚して義理の兄ができた。 それが嬉しくて、幼い頃はよく兄の側にいようとした。 俺の自慢の兄だった。 高二の夏、初めて彼女ができた俺に兄は言った。 「ねぇ、ハル。なんで彼女なんて作ったの?」 俺は兄にめちゃくちゃにされた。 ※最初からエロです。R18シーンは*表示しておきます。 ※R18シーンの境界がわからず*が無くともR18があるかもしれません。ほぼR18だと思って頂ければ幸いです。 ※いきなり拘束、無理矢理あります。苦手な方はご注意を。 ※こんなタイトルですが、愛はあります。 ※追記……涼の兄の話をスピンオフとして投稿しました。二人のその後も出てきます。よろしければ、そちらも見てみて下さい。 ※作者の無駄話……無くていいかなと思い削除しました。お礼等はあとがきでさせて頂きます。

おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話

こじらせた処女
BL
 網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。  ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

処理中です...