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ある日のりひしい(夏目理人×椎葉亮太)
Do you love me or…? (微※)
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理人side
「ねー、りっくん」
「なーに、しーくん」
俺のすぐ横で、イチャついてる2人。
凉空のスマホを2人で見ながら何か喋ってる。
…ちょっと近くない?
しーくんこと、椎葉亮太への恋心を自覚してからというもの、急激にしーくんの行動がいちいち目につくようになった。
好きな人が他の男と仲良くしてるのを見るのは気持ちのいいものではない。
例えそれが、同じメンバーで、例えそれが、あざと可愛い代表の凉空であっても。
なんだか女子同士がキャッキャウフフしてるようにも見えるが、今の俺にはこれを容認する心の広さはなかった。
かといって、俺はしーくんに「ちょっと近くない?」なんて言える立場でもない。
なぜなら、恋人じゃないから。
俺としーくんの関係は絶妙だ。
結論から言うと…ヤることはヤっている。
そもそものきっかけは…俺がふと、
「はぁ…キスとかしてなさすぎてもう感覚忘れたわ」と思わず呟いた事。
キス顔が見どころの振り付けの練習をしている時に、つい思った事が口に出た。
「ね~」
相槌打ってくれるしーくん。
「練習して思い出したいな~」
そう言ってしーくんを見る。
「えっ?今、俺に言った?」
目をパチパチさせて驚くしーくん。
今のはちょっとさすがに引かれたかな?
俺、キモかった? と、思ったけど
「お、俺でいいなら…」
ん!と目をつぶってキス顔を俺に見せてきた。
そんな簡単に目とか瞑っていいんですかァ!?
そーやって誰にでも唇許すんですかァ!?
思わず、別人格になってツッコミそうになったけど、冷静になって考えてみるとこれはかなりオイシイ状況。
好きな人がキス顔してきて、何もせず我慢出来るオトコなんている?
「じゃ、遠慮なく…」
俺は、気づけばそのまま唇を合わせてた。
しーくんはしーくんで冗談だったみたいで、本当にキスされてびっくりしてたけど、怒りはしなかった。
「なっつんに唇奪われちゃった!笑」
なんて、無防備に笑うしーくん。
『あれ?これ、もしかしてイケる…?』
ムラムラが限界突破した俺は、そこからキスの猛攻撃を開始。
2人になればキスを仕掛け、だんだん軽いキスから深いキスに…。
そのうちお願いすると、しーくんからもしてくれるようになった。
好きな人とのキスのみの行為で生殺しされ続け、段々と性欲のストッパーが壊れていった俺。
なんでも受け止めてくれるピュアなしーくんにつけ込んで、胸を触り、下を触り…と行為はどんどんエスカレートしていった。
そして、今では完全にオトナの関係だ。
今、それただのセフレじゃんって思いました?
でも単なるセフレじゃない。
だって俺はしーくんの事が本当に好き。
常々、生半可な関係を打破したいとは思ってる。
ちゃんと彼氏彼女っていう関係になりたい。彼氏の特権が欲しい。
けど、なにかアクションを起こすことで今の関係がもし壊れたら?
そもそもしーくんからは一度も好きなんて言われたことないのだ。
素直でオープンなしーくんの事だ。
もし、俺の事好きならすぐに言ってくれそうな気もする。
でもそんな素振りは全く見せない。
じゃあ、なんで体は許してくれるのか。
俺のことは別にそういう意味で好きとかじゃないけど、快楽欲しさに俺と関係を持っている…とか。
そんなこと思いたくないけど、気持ちいいことにめっぽう弱いしーくんを見ていると、その説も完全には否定できない。
しーくんに嫌われたくない。
変わってしまうことが怖くて、先に進めないままダラダラと関係を続けてしまっている。
ていうか、一体しーくんは俺の事をどう思ってるんだろう?
あまりにも行為をする以前と態度が変わらない彼に、戸惑いを感じている。
凉空とイチャついてるしーくんを見たくなくて俺は席を立った。
しいside
「なっつん、行った?」とりっくん。
「うん」
「ちょっとイライラしてそうじゃなかった?」
「そう?俺、分かんなかったなぁ」
コソコソと話す俺たち。
「いやぁー、あれはヤキモチ妬いてたと思うけどな」
唯一なっつんとの関係を知っているりっくん。
楽屋でキスしてたの見られちゃってたらしい。
なっつんは知らないけど。
「う~ん…」
あのキス事件…。
あれが全ての始まりだった。
なんでもない会話から本当になっつんにキスされて。
本人は冷静を装えてる風だったけど、真っ赤になって柄にもなくテンパっている顔を見て、男相手なのにちょっとドキッとした。
『なんか、恥ずかしい…』
恋に全く疎い俺が、相手を意識するには十分すぎるきっかけだった。
冗談のキスで終わりかと思いきや、2人きりになればまたキスをされて。
不思議となんの嫌悪感もなくて、いつの間にかキスされるのを待っている自分がいた。
断る理由を見つけられないまま、経験豊富ななっつんのペースにグイグイ乗せられ、あっという間に体の関係にまでなった俺たち。
キスし始めた当初は『俺の事好きなのかな?そうじゃなかったらキスなんて…しないよね?告白とかされちゃうのかなぁ』なんて気楽に思っていた。
だけど、体の関係を何度も持った今も一向になっつんは気持ちを伝えてくれない。
気持ちを伝えあってないうえでの体の関係。
『これって…もしかしなくても、セフレってやつじゃん…』
俺の事どう思ってるの?これってどういう関係?
何度も聞こうとした。
だけど、もし望む答えじゃ無かったら…と思うと怖くて聞けない。
体を重ねる度に、俺の心はどんどんどんどんなっつんの事を好きになっていっていたから。
あぁ、好きだとなんにも聞けないんだな…と思い知った。
…なっつんからキスしたくせに。
「理人って呼んで」なんて行為中はまるで恋人のように扱うくせに。
いつも壊れ物を扱うように俺のこと優しく抱くくせに。
確信めいたことは何も言ってくれない。
たった一言、「好きだよ」って言ってほしい…。
いまいち関係をボヤかすなっつんに痺れを切らした俺は、「なっつんの本当の気持ちがわからない」とりっくんに相談した。
「そーいう時はねぇ、嫉妬させてみちゃうんだよ♪本能が出てくるから、それが一番分かりやすいよぉ」
キシシと笑う小悪魔りっくん。
それで始まった俺とりっくんのなっつんを嫉妬させよう作戦。
「…はぁ」
「そんな落ち込まないでよぉ、しーくん。でもさ、なっつんがしーくんに対して特別な思いを持って接してるっていうのは分かるでしょ?」
「でも俺、好きなんて…言われたことないし…」
「言葉はなくってもさぁ、なっつんの態度みてるとよく分かるよぉ?俺でも分かるもん。」
「俺はちゃんと言葉で言われないと確信出来ないっていうか…」
「そうだよね。じゃあ、もうちょっと攻めてみようよ♪」
「攻める?」
「うん。もーっと、ボディタッチ激しめでいくね。お互いにやろう」
「分かった!ありがとね、りっくん」
理人side
数日後。
歌番組で曲披露の前に番宣動画を撮る事になった。
本番30分前。
全員で動画を撮り始める。
開始早々、りっくんになぜか抱きつくしーくん。
その密着度の高さに、思わず横目で睨んでしまった。
アイドルらしからぬ表情だと思い、ハッとして顔を戻すが、まだ引きつってるのが自分でも分かる。
思わず、2人を凝視してしまう。
「なんか今日りくしい密着度高くない!?」
とななちゃん。
「しーくんとハグすると安心するんだよねぇ♪やっぱ生放送前はリラックスしないとだから~」
「犬がじゃれ合ってるようにしか見えない笑」
悠里や蓮が微笑ましく見守る中、
「りっくん~」
「しーくん~」
抱きしめあって背中をさすり合う2人。
えーーーーっと、どういう意図ですか?ソレは。
公共の電波でイチャイチャですか?
ファンサのつもり??
てか、抱きつくなら俺に抱きつけよ。
いよいよ表情作りもしんどくなって、ギギギ…と笑顔がひきつる一歩手前で動画が終了した。
あー!なんだこの気持ち!今から本番なのにテンションガタ落ち。
「ごめん、ちょっと俺トイレ」
一旦気持ちをリセットしようと、足早にトイレに向かう。
タッタッタッ…近づいて来る足音。
「なっつんっ」ぐっと腕を引き止められる。
声の主なんて振り向かなくてもわかる。
瞬間、その腕を引っ張ってトイレに連れ込んで、ダンッ!と個室に押し込んだ。
扉に押し当ててしーくんの足の間に膝を入れ込み、肩をグッと掴む。
「……ん?」
眉間にシワが寄る。
「ぁ、えと、なんか怒って…る?かなって…」
「別に。」
「……うそ。さっき俺の事、睨んでたじゃん…」
「ふーん。しーくん、気づいてたんだぁ。てことは、俺がイラついてんの分かっててわざと凉空とイチャついてたんだ?……ふーーーーん?」
「いや、わざとっていうか、あれは、その…」
「しーくんがそんな意地悪だったなんてねぇ……。じゃあ、俺も意地悪しちゃお」
「あっ、待っ…んんっ…」
グッと顎をつかみ深いキスを落とす。
こんないつ誰が入ってきてもおかしくない場所。
外からはガヤガヤと人の話し声も聞こえてくる。
「ふっ…ぁ…ん…んっ…ふぁ…」
胸板を押してくるしーくんは無視して、思う存分口内を犯す。
「なっつんー?しーくんー?」
すぐそこで俺らを探す凉空の声が聞こえた。
名残惜しくも唇を離すと、少し涙目なしーくん。
「なっつん…っ」
「勃ってるね。本番いける?」
服越しに下を触りながらそう耳元で囁くと、
「なっつんのバカッ」
と俺の体を押し、先に出ていってしまった。
・
・
・
収録後。
帰り支度をすると、俺の隣に来たしーくん。
「なっつん…」
「…おつかれ、しーくん」
「今日、なっつん家行っていい?」
「いいよ」
いつもと違うしーくんの表情。
なにか話したいことがあるんだろう。
俺たちはコンビニで簡単なご飯を買って、家へ向かった。
しいside
収録直前、勃つまでキスされた俺はすぐにりっくんに気づかれた。
「しーくん!ちょ、それやばい笑 早く治めて治めて。」
「笑わないでよぉ!」
「なっつんの気持ち分かったでしょ?さっきのなっつんの顔みた?今にも飛びかかってきそうなケモノの目だったよぉ」
りっくんが顔を押さえてキャー!とか言ってる。
「も~俺怒った!今日絶対ハッキリさせる!」
「お!しーくんが攻めモードに入った!」
そんなやり取りをして、今。
ご飯を食べ終わってくつろいでるなっつんが横にいる。
よし、言うぞ。さりげなく、さりげなく…。
ふーっと深呼吸する。
「なっつん!」
「うわっ、ビックリした!」
思ったより大きい声の出た俺に体がビクッとなるなっつん。
「あ、ごめん…。じゃなくて!なっつん!俺の事どう思ってるのっ?」
「えっ?どしたの急に」
「急じゃないっ…。初めてキスした時から思ってた…。俺、なっつんにとってなんなんだろうって。俺はっ…こんな曖昧な関係もういやだ。ハッキリさせたいの」
「…………」
「なっつん、全然気持ち伝えてくれないし…俺の事遊びなの?もしそうなら…もう、俺辛くて…っ。だから、なっつんと関係を持つのは止め……っうわ!」
ドサッと床に押し倒された。
両手を強い力で抑え込まれる。
「………俺の気持ち…言わなきゃわかんない?」
「…わっ、かんない…」
ギラリと光る眼に見つめられて思わず声が小さくなる。
「しーくんこそどうなの?俺の事どう思ってる?」
「…え?俺?」
「いっつも誰とでもイチャついて。特に凉空。しかも今日のはわざとだよね?しーくんは俺の気持ち…本当は分かってるでしょ?気づいてるでしょ?なのに、俺の気持ち試すような真似して。」
「~~っ、それは…」
「なに?」
今にもキスできそうな至近距離になっつんの顔があるってだけで、心臓がバクバクなのに囁くような声がまるで情事中のようで、体の奥が疼いてくる。
「だって、…なっつんが悪いんだよ?ハッキリしてくれないから!」
駄々をこねる子供みたいに、吐き捨てるように顔を背けて言った。
うぅ…言ってしまった…。
「じゃあ言うね?俺の気持ち」
「…う、ん」
「………好きだよ。しーくんの事。」
「…っ!」
「好き。大好き。初めてキスした時よりずっと前から。他の奴と話してるだけで嫉妬ですげーイラつく。特別な存在になりたい。独占したい。ずっと俺だけ見ててほしい。…そんくらい好き」
「…な、つ」
「こんな本音言ってしーくんに嫌われたくなかった。1%でもフられる可能性があると思うと前に進めなくて…。ごめん、今まで曖昧で。臆病で。…しーくんは?気持ち、聞かせて?」
少し震えたようななっつんの声。
賢くて器用で、いつも余裕があって大人びているなっつん。
今はまるで、捨てられた子犬のように弱々しく見える。
まっすぐ俺を見て、…やっと気持ちを教えてくれた。
「俺…も、好き。大好き。ずっと、彼氏、としてそばにいて欲しい」
「ほんとに…?」
「うん。」
「俺、結構重いよ?すげー嫉妬するし、こんなに本気の恋は初めてだから色々ブレーキ効かないかも」
「俺がっ、どんななっつんでも100%受け止めるからっ…」
「しーくん…」
愛おしそうになっつんの手が頬を撫でる。
チュ…。唇が重なる。
「もう自分の気持ち隠さない。これからは全部ぶつけてくね?…離さない。だから約束。もうしーくんは俺のものだよ。」
「う、うん」
ギラリと熱い瞳。
今までのどこか遠慮しがちななっつんじゃなく、完全に主導権を掴んだような…雄のオーラが溢れ出てる。
…あぁ、全て持っていかれる。俺の心も体も全部丸ごと。
欲を孕んだ鋭い視線を感じながら、服の中に滑り込んでくる手が与える快感に、身を委ねた。
理人side
俺の下で、可愛く乱れ喘ぐしーくん。
やっと。俺たちちゃんと両思いだね。
「あっ、…り、…理人っ…!あっ、あぁっ♡」
「しーくん、好きだよ。」
「俺っ…俺もっ…好きっ、好きぃ♡あっ!あぁっ!」
快感の渦に呑み込まれて頭はぐちゃぐちゃだろうに、必死に俺を見て想いを伝えようとしてくれる。
あぁ、愛しい。愛しい人。もう離してやれない。
こんなに俺を虜にしてどうするの。責任、取ってよね。
「だ、いじょぶ…んん゛っ…!りひ…っ、俺も理人の…っ虜…っ」
どうやら自分の考えていたことが言葉に出てたようだ。
「しーくん、愛してる」
くすりと笑って口付けた。
俺らの物語はまだ始まったばかり。
「ねー、りっくん」
「なーに、しーくん」
俺のすぐ横で、イチャついてる2人。
凉空のスマホを2人で見ながら何か喋ってる。
…ちょっと近くない?
しーくんこと、椎葉亮太への恋心を自覚してからというもの、急激にしーくんの行動がいちいち目につくようになった。
好きな人が他の男と仲良くしてるのを見るのは気持ちのいいものではない。
例えそれが、同じメンバーで、例えそれが、あざと可愛い代表の凉空であっても。
なんだか女子同士がキャッキャウフフしてるようにも見えるが、今の俺にはこれを容認する心の広さはなかった。
かといって、俺はしーくんに「ちょっと近くない?」なんて言える立場でもない。
なぜなら、恋人じゃないから。
俺としーくんの関係は絶妙だ。
結論から言うと…ヤることはヤっている。
そもそものきっかけは…俺がふと、
「はぁ…キスとかしてなさすぎてもう感覚忘れたわ」と思わず呟いた事。
キス顔が見どころの振り付けの練習をしている時に、つい思った事が口に出た。
「ね~」
相槌打ってくれるしーくん。
「練習して思い出したいな~」
そう言ってしーくんを見る。
「えっ?今、俺に言った?」
目をパチパチさせて驚くしーくん。
今のはちょっとさすがに引かれたかな?
俺、キモかった? と、思ったけど
「お、俺でいいなら…」
ん!と目をつぶってキス顔を俺に見せてきた。
そんな簡単に目とか瞑っていいんですかァ!?
そーやって誰にでも唇許すんですかァ!?
思わず、別人格になってツッコミそうになったけど、冷静になって考えてみるとこれはかなりオイシイ状況。
好きな人がキス顔してきて、何もせず我慢出来るオトコなんている?
「じゃ、遠慮なく…」
俺は、気づけばそのまま唇を合わせてた。
しーくんはしーくんで冗談だったみたいで、本当にキスされてびっくりしてたけど、怒りはしなかった。
「なっつんに唇奪われちゃった!笑」
なんて、無防備に笑うしーくん。
『あれ?これ、もしかしてイケる…?』
ムラムラが限界突破した俺は、そこからキスの猛攻撃を開始。
2人になればキスを仕掛け、だんだん軽いキスから深いキスに…。
そのうちお願いすると、しーくんからもしてくれるようになった。
好きな人とのキスのみの行為で生殺しされ続け、段々と性欲のストッパーが壊れていった俺。
なんでも受け止めてくれるピュアなしーくんにつけ込んで、胸を触り、下を触り…と行為はどんどんエスカレートしていった。
そして、今では完全にオトナの関係だ。
今、それただのセフレじゃんって思いました?
でも単なるセフレじゃない。
だって俺はしーくんの事が本当に好き。
常々、生半可な関係を打破したいとは思ってる。
ちゃんと彼氏彼女っていう関係になりたい。彼氏の特権が欲しい。
けど、なにかアクションを起こすことで今の関係がもし壊れたら?
そもそもしーくんからは一度も好きなんて言われたことないのだ。
素直でオープンなしーくんの事だ。
もし、俺の事好きならすぐに言ってくれそうな気もする。
でもそんな素振りは全く見せない。
じゃあ、なんで体は許してくれるのか。
俺のことは別にそういう意味で好きとかじゃないけど、快楽欲しさに俺と関係を持っている…とか。
そんなこと思いたくないけど、気持ちいいことにめっぽう弱いしーくんを見ていると、その説も完全には否定できない。
しーくんに嫌われたくない。
変わってしまうことが怖くて、先に進めないままダラダラと関係を続けてしまっている。
ていうか、一体しーくんは俺の事をどう思ってるんだろう?
あまりにも行為をする以前と態度が変わらない彼に、戸惑いを感じている。
凉空とイチャついてるしーくんを見たくなくて俺は席を立った。
しいside
「なっつん、行った?」とりっくん。
「うん」
「ちょっとイライラしてそうじゃなかった?」
「そう?俺、分かんなかったなぁ」
コソコソと話す俺たち。
「いやぁー、あれはヤキモチ妬いてたと思うけどな」
唯一なっつんとの関係を知っているりっくん。
楽屋でキスしてたの見られちゃってたらしい。
なっつんは知らないけど。
「う~ん…」
あのキス事件…。
あれが全ての始まりだった。
なんでもない会話から本当になっつんにキスされて。
本人は冷静を装えてる風だったけど、真っ赤になって柄にもなくテンパっている顔を見て、男相手なのにちょっとドキッとした。
『なんか、恥ずかしい…』
恋に全く疎い俺が、相手を意識するには十分すぎるきっかけだった。
冗談のキスで終わりかと思いきや、2人きりになればまたキスをされて。
不思議となんの嫌悪感もなくて、いつの間にかキスされるのを待っている自分がいた。
断る理由を見つけられないまま、経験豊富ななっつんのペースにグイグイ乗せられ、あっという間に体の関係にまでなった俺たち。
キスし始めた当初は『俺の事好きなのかな?そうじゃなかったらキスなんて…しないよね?告白とかされちゃうのかなぁ』なんて気楽に思っていた。
だけど、体の関係を何度も持った今も一向になっつんは気持ちを伝えてくれない。
気持ちを伝えあってないうえでの体の関係。
『これって…もしかしなくても、セフレってやつじゃん…』
俺の事どう思ってるの?これってどういう関係?
何度も聞こうとした。
だけど、もし望む答えじゃ無かったら…と思うと怖くて聞けない。
体を重ねる度に、俺の心はどんどんどんどんなっつんの事を好きになっていっていたから。
あぁ、好きだとなんにも聞けないんだな…と思い知った。
…なっつんからキスしたくせに。
「理人って呼んで」なんて行為中はまるで恋人のように扱うくせに。
いつも壊れ物を扱うように俺のこと優しく抱くくせに。
確信めいたことは何も言ってくれない。
たった一言、「好きだよ」って言ってほしい…。
いまいち関係をボヤかすなっつんに痺れを切らした俺は、「なっつんの本当の気持ちがわからない」とりっくんに相談した。
「そーいう時はねぇ、嫉妬させてみちゃうんだよ♪本能が出てくるから、それが一番分かりやすいよぉ」
キシシと笑う小悪魔りっくん。
それで始まった俺とりっくんのなっつんを嫉妬させよう作戦。
「…はぁ」
「そんな落ち込まないでよぉ、しーくん。でもさ、なっつんがしーくんに対して特別な思いを持って接してるっていうのは分かるでしょ?」
「でも俺、好きなんて…言われたことないし…」
「言葉はなくってもさぁ、なっつんの態度みてるとよく分かるよぉ?俺でも分かるもん。」
「俺はちゃんと言葉で言われないと確信出来ないっていうか…」
「そうだよね。じゃあ、もうちょっと攻めてみようよ♪」
「攻める?」
「うん。もーっと、ボディタッチ激しめでいくね。お互いにやろう」
「分かった!ありがとね、りっくん」
理人side
数日後。
歌番組で曲披露の前に番宣動画を撮る事になった。
本番30分前。
全員で動画を撮り始める。
開始早々、りっくんになぜか抱きつくしーくん。
その密着度の高さに、思わず横目で睨んでしまった。
アイドルらしからぬ表情だと思い、ハッとして顔を戻すが、まだ引きつってるのが自分でも分かる。
思わず、2人を凝視してしまう。
「なんか今日りくしい密着度高くない!?」
とななちゃん。
「しーくんとハグすると安心するんだよねぇ♪やっぱ生放送前はリラックスしないとだから~」
「犬がじゃれ合ってるようにしか見えない笑」
悠里や蓮が微笑ましく見守る中、
「りっくん~」
「しーくん~」
抱きしめあって背中をさすり合う2人。
えーーーーっと、どういう意図ですか?ソレは。
公共の電波でイチャイチャですか?
ファンサのつもり??
てか、抱きつくなら俺に抱きつけよ。
いよいよ表情作りもしんどくなって、ギギギ…と笑顔がひきつる一歩手前で動画が終了した。
あー!なんだこの気持ち!今から本番なのにテンションガタ落ち。
「ごめん、ちょっと俺トイレ」
一旦気持ちをリセットしようと、足早にトイレに向かう。
タッタッタッ…近づいて来る足音。
「なっつんっ」ぐっと腕を引き止められる。
声の主なんて振り向かなくてもわかる。
瞬間、その腕を引っ張ってトイレに連れ込んで、ダンッ!と個室に押し込んだ。
扉に押し当ててしーくんの足の間に膝を入れ込み、肩をグッと掴む。
「……ん?」
眉間にシワが寄る。
「ぁ、えと、なんか怒って…る?かなって…」
「別に。」
「……うそ。さっき俺の事、睨んでたじゃん…」
「ふーん。しーくん、気づいてたんだぁ。てことは、俺がイラついてんの分かっててわざと凉空とイチャついてたんだ?……ふーーーーん?」
「いや、わざとっていうか、あれは、その…」
「しーくんがそんな意地悪だったなんてねぇ……。じゃあ、俺も意地悪しちゃお」
「あっ、待っ…んんっ…」
グッと顎をつかみ深いキスを落とす。
こんないつ誰が入ってきてもおかしくない場所。
外からはガヤガヤと人の話し声も聞こえてくる。
「ふっ…ぁ…ん…んっ…ふぁ…」
胸板を押してくるしーくんは無視して、思う存分口内を犯す。
「なっつんー?しーくんー?」
すぐそこで俺らを探す凉空の声が聞こえた。
名残惜しくも唇を離すと、少し涙目なしーくん。
「なっつん…っ」
「勃ってるね。本番いける?」
服越しに下を触りながらそう耳元で囁くと、
「なっつんのバカッ」
と俺の体を押し、先に出ていってしまった。
・
・
・
収録後。
帰り支度をすると、俺の隣に来たしーくん。
「なっつん…」
「…おつかれ、しーくん」
「今日、なっつん家行っていい?」
「いいよ」
いつもと違うしーくんの表情。
なにか話したいことがあるんだろう。
俺たちはコンビニで簡単なご飯を買って、家へ向かった。
しいside
収録直前、勃つまでキスされた俺はすぐにりっくんに気づかれた。
「しーくん!ちょ、それやばい笑 早く治めて治めて。」
「笑わないでよぉ!」
「なっつんの気持ち分かったでしょ?さっきのなっつんの顔みた?今にも飛びかかってきそうなケモノの目だったよぉ」
りっくんが顔を押さえてキャー!とか言ってる。
「も~俺怒った!今日絶対ハッキリさせる!」
「お!しーくんが攻めモードに入った!」
そんなやり取りをして、今。
ご飯を食べ終わってくつろいでるなっつんが横にいる。
よし、言うぞ。さりげなく、さりげなく…。
ふーっと深呼吸する。
「なっつん!」
「うわっ、ビックリした!」
思ったより大きい声の出た俺に体がビクッとなるなっつん。
「あ、ごめん…。じゃなくて!なっつん!俺の事どう思ってるのっ?」
「えっ?どしたの急に」
「急じゃないっ…。初めてキスした時から思ってた…。俺、なっつんにとってなんなんだろうって。俺はっ…こんな曖昧な関係もういやだ。ハッキリさせたいの」
「…………」
「なっつん、全然気持ち伝えてくれないし…俺の事遊びなの?もしそうなら…もう、俺辛くて…っ。だから、なっつんと関係を持つのは止め……っうわ!」
ドサッと床に押し倒された。
両手を強い力で抑え込まれる。
「………俺の気持ち…言わなきゃわかんない?」
「…わっ、かんない…」
ギラリと光る眼に見つめられて思わず声が小さくなる。
「しーくんこそどうなの?俺の事どう思ってる?」
「…え?俺?」
「いっつも誰とでもイチャついて。特に凉空。しかも今日のはわざとだよね?しーくんは俺の気持ち…本当は分かってるでしょ?気づいてるでしょ?なのに、俺の気持ち試すような真似して。」
「~~っ、それは…」
「なに?」
今にもキスできそうな至近距離になっつんの顔があるってだけで、心臓がバクバクなのに囁くような声がまるで情事中のようで、体の奥が疼いてくる。
「だって、…なっつんが悪いんだよ?ハッキリしてくれないから!」
駄々をこねる子供みたいに、吐き捨てるように顔を背けて言った。
うぅ…言ってしまった…。
「じゃあ言うね?俺の気持ち」
「…う、ん」
「………好きだよ。しーくんの事。」
「…っ!」
「好き。大好き。初めてキスした時よりずっと前から。他の奴と話してるだけで嫉妬ですげーイラつく。特別な存在になりたい。独占したい。ずっと俺だけ見ててほしい。…そんくらい好き」
「…な、つ」
「こんな本音言ってしーくんに嫌われたくなかった。1%でもフられる可能性があると思うと前に進めなくて…。ごめん、今まで曖昧で。臆病で。…しーくんは?気持ち、聞かせて?」
少し震えたようななっつんの声。
賢くて器用で、いつも余裕があって大人びているなっつん。
今はまるで、捨てられた子犬のように弱々しく見える。
まっすぐ俺を見て、…やっと気持ちを教えてくれた。
「俺…も、好き。大好き。ずっと、彼氏、としてそばにいて欲しい」
「ほんとに…?」
「うん。」
「俺、結構重いよ?すげー嫉妬するし、こんなに本気の恋は初めてだから色々ブレーキ効かないかも」
「俺がっ、どんななっつんでも100%受け止めるからっ…」
「しーくん…」
愛おしそうになっつんの手が頬を撫でる。
チュ…。唇が重なる。
「もう自分の気持ち隠さない。これからは全部ぶつけてくね?…離さない。だから約束。もうしーくんは俺のものだよ。」
「う、うん」
ギラリと熱い瞳。
今までのどこか遠慮しがちななっつんじゃなく、完全に主導権を掴んだような…雄のオーラが溢れ出てる。
…あぁ、全て持っていかれる。俺の心も体も全部丸ごと。
欲を孕んだ鋭い視線を感じながら、服の中に滑り込んでくる手が与える快感に、身を委ねた。
理人side
俺の下で、可愛く乱れ喘ぐしーくん。
やっと。俺たちちゃんと両思いだね。
「あっ、…り、…理人っ…!あっ、あぁっ♡」
「しーくん、好きだよ。」
「俺っ…俺もっ…好きっ、好きぃ♡あっ!あぁっ!」
快感の渦に呑み込まれて頭はぐちゃぐちゃだろうに、必死に俺を見て想いを伝えようとしてくれる。
あぁ、愛しい。愛しい人。もう離してやれない。
こんなに俺を虜にしてどうするの。責任、取ってよね。
「だ、いじょぶ…んん゛っ…!りひ…っ、俺も理人の…っ虜…っ」
どうやら自分の考えていたことが言葉に出てたようだ。
「しーくん、愛してる」
くすりと笑って口付けた。
俺らの物語はまだ始まったばかり。
応援ありがとうございます!
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