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第二章 竜人族の少女

第十八話 冒険者ギルド

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 ヒストリアの呼びかけで目を覚ました俺。

「お兄ちゃん、もうすぐ到着ですよ」

 次の街への中間地点となる村が見えてきていた。

 ヒストリアの冒険者登録を終え王都クルシャを旅立ってから一週間。俺たちは癒しのダンジョンで倒したモンスターの素材を売ることで当分は困らないくらいのお金を手にしていた。そのため、今回の旅は馬車でのんびりと行うことにしたのだ。

「そうか、起こしてくれてありがとな」

「えへへ~、褒められました」

 この一週間でヒストリアからのお兄ちゃん呼びにも慣れてしまい今は何も感じない。それに、最近では本当の妹のように見えてより可愛く思えてきたのだ。

 俺は、村に着く前に起こしてくれたことを頭を撫でながら褒めてやると、最高の笑顔で喜んでくれる。それを見ているのが最近の俺の癒しとなっていた。

 そして俺たちはたわいないやり取りをしている間に馬車は村へと到着した。

「ありがとうございます」

 馬車を降りる際にヒストリアが御者をしているおじさんに頭を下げてお礼を言う。

 俺もそれに続き一礼する。

「あいよ! まあ頑張りな」

 おじさんは一言俺たちに言って去っていった。

 今回俺たちが訪れたキリス村は王都クルシャに比べると当然ながら小さい。だが、村の中に冒険者ギルドもあり、大きな街への中間ポイントとされているだけのことはある。

 そして今回、俺はこの村にただ立ち寄っただけでなく、一つの目的があった。

 それは、ヒストリアの実戦での能力を見ることにある。

 一週間前のヒストリアの冒険者登録の際に言われた魔導の神から授かりし技術ギフト。しかも扱える属性が史上類を見ない程の物であった。そのためどこまでヒストリアが戦えるのかに興味が出たわけだ。

 そのために、馬車を降りた俺たちは現在冒険者ギルドへと向かっていた。

「お兄ちゃん、どこへ行くのですか?」

「冒険者ギルドだよ、今回ヒストリアには依頼を受けてもらおうと思ってな」

「私がですか?」

「ああ、簡単な依頼でヒストリアの実力を見せてもらおうかな」

「分かりました。お兄ちゃんに私のかっこいいとこいっぱい見せちゃいます」

「期待してるぞ」

「はい」

 ヒストリアの見せる最高の笑顔は本当に癒しその物であった。

 俺はガイルたちとパーティーを組む前にこの村に訪れたこともありどこに何の建物があるかは把握している。そのため、迷わずに冒険者ギルドへと到着することが出来た。

「ここが冒険者ギルドですか? 王都の建物と全然違います」

 俺たちの目の前に冒険者ギルドは木造、王都にあった冒険者ギルドは大理石ななどが使われてこの村の物とは雲泥の差であった。

 だが、冒険者ギルドは見た目ではない。そう中身、内容は変わることはないのだ。

 俺は、ヒストリアの手を引き冒険者ギルドのトビラを開けて中に入った。

 そこで集まる視線。これはどこの冒険者ギルドに行っても変わらない。

 俺たちは中に入る依頼を見るために掲示板へと向かおうとすると、

「おい、兄ちゃん、こんなところに何しに来たんだ!」

 後ろに取り巻きを二人連れたがたいのいい男が話しかけてきた。後ろにいる取り巻きの男たちは俺の方を見て何か笑っている。

「何しにって、冒険者が依頼を受ける以外に何しに来るというのですか! あなたは馬鹿なんですか」

 俺が男に放った一言。それにより冒険者ギルドの空気が凍り付いた。先ほどまで男の後ろで笑っていた取り巻きたちまでも何か恐怖の表情を浮かべている。

 少し顔を赤くする男。

「おいおい、俺のことを知らないのかボーズ」

 俺と男の身長は倍ほどの差がある。確かに男からしたらボーズに見えるのかもしれない。だが、

「はい、先ほどこの村に就いたばかりなので存じ上げません。それに俺は十八歳になりますのでボーズと呼ばれるの心外です」

 俺は丁寧に言葉を返す。

 だが、

「知らないなら教えてやる。俺はBランクの冒険者だ! 本当におまえが冒険者と言うならどれほどのものなんだろうな、俺に逆らう位だ! さぞ凄いんだろう、AかもしやSだったりしてな」

 そういわれるので俺は冒険者カードを見せる。俺の冒険者カードに記載されているのDの一文字。つまりDランク冒険者であるということである。

「おいおい、まさかDランク冒険者かよ。そんな雑魚が俺に逆らうのか、傑作だな! 雑魚っていうのは相手の実力すら計れないみたいだぜ!」

 冒険者ギルドの中で男だけが笑っていた。

「なら一つ試してみますか?」

「何を試すっていうんだ!? おまえがどれほど弱いかってことか!」

 バカにしてくるいいかた。だが、俺から言わせれば相手の実力も計れないでもBランクの冒険者になれるのかと思ってしまった。

「いや、ランクとその人の実力がイコールではないということですよ」

「面白いことを言いやがる。いいぜ、どんな勝負だろうとのってやるよ」

「そうですか、ならどうぞかかって来てください」

 俺はこいこいと手で挑発を掛ける。

 男が本当に相手の実力を見抜けないのであればこの挑発に乗ってくるはずと思った。もしも乗ってこないのなら少しは見所もある。

 だが、男の行動は俺の最初に予想した通りに動いた。

「はぁ~」

 俺はため息をついてしまった。

 まさか、ここまで予想通りに動いてくれるとは思わなかったからだ。

「ガキ~! ケガしても文句言うなよ! おまえから言ってきたんだからな!」

 今、俺とこの男の実力の差に気づけているのはたぶんヒストリアだけ。なぜなら、背後で『マジで!』みたいな顔で男の方を見ているからである。

 明らかな挑発に、隙のない俺の立ち姿。少しでも力を持つ者ならまず仕掛けてこない。

「はい、なぜならケガをするのはあなただからですよ」

 俺は笑顔で男の殴り掛かってくる右腕をつかみ、相手の勢いを利用してギルドの壁まで投げ飛ばした。

 幸いなことに壁自体は壊れなかったがヒビが入ったかもしれない。

「!!」

 今自分に何が起きたのかを理解出来ていない男。

 その後、二回ほど殴り掛かってきたがその全てを投げ飛ばしてやることで倒す。

 ギルド内にいた他の冒険者が驚いた表情でこちらを見ている。

「おまえ! 一体何をした」

「投げ飛ばしただけです。だから言ったでしょ、冒険者ランクがその者の実力の全てじゃないんですよ」

「っち! 覚えておけよ」

 そんな捨て台詞を残して男はギルドを出て行ってしまった。
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