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 ざわざわ! ざわざわ!

 平日の昼下がり。四時限目の授業も終わり騒がしくなる教室。

 その中に一人、静かに教科書を読んでいる少年がいる。

 その少年こそ音無優輝おとなしゆうき、俺である。

 この高校に入って半年。

 二学期に入って一か月が経とうとしていた。

 まだ少し暑い気温。衣替えの季節になり学ランを着ている者や、まだ薄着のカッターシャツでいる者などそれぞれであった。

 その中で俺は、学ランを着て不細工なメガネかけ、ぼさぼさの髪、はたから見たらただのがり勉の陰キャのように見えているだろう。

 ほとんどの者が友達を作り、グループを作って話している中、俺にそんな友はいない。いわゆるボッチと言うやつである。

 それも俺自身がの望んで作り出した現状。

 そもそも、俺のこの学校での目標は、『目立たずに、静かな学園生活を送る』

 今現在、その目標は達成されていると言えよう。

 だがそれも今日までかもしれない。

なぜならば、

「今日だよね?」

「何が?」

「レインボーガールズだよ。今日この学校でテレビの撮影があるから午後から来るんだよ」

「マジで!」

「昨日、SNSで呟いてるよ、ほら」

 クラスの女子達の会話から、聞こえてきた。レインボーガールズ、今若者達のなかでもっとも人気のアイドルグループ。

 三人組で、可愛くて、歌もダンスもトップクラス。人気が出ない方がおかしいくらい。

 そして今日、そんなレインボーガールズがこの学校にへとやってくることになっていた。

 俺はそのことを考えるだけでため息が出てくる。
 
 それは昨夜のこと、

「優輝! 優輝! 私達明日、優輝の学校に行くからね!」

「っは! なんでだよ!」

 神の仕事の帰り、パーティーを組んでいるメンバーのリナがそんなことを言ってきた。

「あれ~? 先週話さなかったっけ? 私達の番組で優輝の学校を紹介することになったから来週行くよって!」

 頭を捻りながら言ってくるリナ。

「言ってなかったわよ」

 それに対して突っ込みを入れるフィート。

「……」

 無言で頭を縦に振っているレナ。

 この、レナ・フィート・リナの三人が三人組のアイドルグループ、レインボーガールズのメンバーなのである。

 そんな三人は俺と同じく神をやっており、実力は神の中でもトップファイブに入っていて、俺と同じパーティー組んで仕事をこなしている。

 いつも仕事帰りは他愛もない話をしているのだが、今回は他愛ない話しで終われない。

 なぜなら、俺の学校生活での目標が終わるからである。

「俺、明日は学校休むわ!」

 三人の話を聞いて俺の口から出たのはこの一言だった。

 休めば三人が来ても何も起こらない。平穏を潰されないですむ。

 だが、

「嫌だー! 優輝がいないと行く意味がないよ! 優輝がどんな生活しているか見たいのにー!」

 無茶苦茶駄々をこねるリナ。

(確か、俺と同い年だよなこいつ)

 などと思ってしまった。

「優輝、ズル休みなんてダメですよ! 私達は神なのです。人々の見本になる存在なのですからね」

 フィートの言葉に対して何も言えない俺。

 このパーティーの中でフィートは副リーダーでいて、実質的にこのパーティーを仕切っている存在であった。

 そのため、俺だけでなくリナやレナもフィートに逆らうことは出来ない。

 そして、レインボーガールズの中ではリーダーをしている。

 そんなこんなで、俺は今日休まずに学校に来ているのであった。

「俺、フィートちゃんと話せたら今日死んでもいいかも」

「俺はリナちゃんだな、あの元気で明るいところいいよな~」

「俺はぜっていレナちゃんだよ。物静かで身長の小さいところが守ってあげたって思っちゃうんだよな」

 周りの男子達の話声。

「私、絶対サインもらうんだ」

「私だって! 色紙三枚持ってきてるんだから」

「私は六枚よ」

 女子達の声。

 その声を聴くたびに、胃が痛くなってくる。

 そんな中、一人の女子が窓の外を指さして、

「来た!」

 大声で発した一言。

 その一言により、クラス中の生徒が教室の窓へと駆け寄っていく。


「フィートちゃんだ! 長い髪にあのすらっとしたスタイル。三人の中で一番スタイル良いよな」

「リナちゃんよ! 手を振ってくれてる」

「レナちゃんもいる!」

 三人を見て異常なテンションになっているクラスメイト達。

(もういーやーだー!)

 心の中で大声で叫んでいた。

 そんな感じに俺が苦しんでいると教室の扉が開いた。

「優輝! 来たよー!」

 教室の扉が勢いよく開かれてリナが入ってくる。

 金髪の髪を左右で結んだツインテールを揺らしながら元気よく入ってきた。

「リナちゃんだ!」

「まじかで見るとめっちゃ可愛い!」

「お人形さんみたい」

 などと、リナを見ていろいろな反応を見せるクラスメイト達。

 俺は、リナの呼びかけをスルーして教科書を見ていると、

「居たー! 優輝見っけ!」

 俺の方を指さしながらダッシュで近づいてくるリナ。

 それを見たクラスメイト達。

「あれって、いつも机で教科書ばっか読んでいるがり勉君だよね」

「うんうん。 なんであんな友達もいない陰キャの所にアイドルのリナちゃんが?」

「でも、名前読んでたから知り合いじゃないの?」

「なんであんなにダサいがり勉君のことをリナちゃんが?」

 周りのクラスメイト達のひそひそ話。

 何を言われているかは大体想像がつく。

「リナ、何勝手に動いてるの!」

 フィート達も教室にやってきた。

(これで平穏な学園生活も終わりか)

 心の中でため息交じりに呟く俺。

 だがそんな俺とは裏腹にレインボーガールズ達が三人そろってこの教室に集まったことでまたテンションが上がるクラスメイト。

「フィート、優輝いたよ!」

 元気に俺を見つけたことを叫ぶリナ。

 そんな中、

「見つけました!」

 聞き覚えのない少女の声がどこからともなく聞こえてきた。

 ただの空耳だと思い気にしなようにしながら胃を痛め続ける俺。

「ここで優輝は毎日授業を受けてるんだね」

「優輝の教室。私もここで学校生活送りたい」

「ダメですよ! そんなことできるわけないでしょ」

 フィートにダメ出しをされるレナ。

 いつも見ている光景だと思いながらも、これからの学園生活のことを考えるとため息が出てくる。
 
 そんなとき、クラスの床より青白い光、魔法陣のような物が現れた。

「なんなのこれ!」

「窓も扉も開かねえぞ!」

 急激な事態に戸惑うクラスメイト達。

 そんな中、

「フィート! レナ! リナ! 戦闘準備! 何があってもいいように備えろ!」

「了解!」

 三人に対して指示を出す。

(一体何が起きてるんだ)

 俺自身、心の動揺を隠せない。

 そんな中、床より青白く光っている魔法陣の輝きがより一層強くなりクラス中がこの光に包まれた。

 そして気が付くと俺達は見知らぬ城の中にいた。
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