氷の中で

雲椛湊己

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悪夢

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「所でレイモンドは、子供居るの？」

僕は、レイモンドの顔を覗き込んだ。

「居るよ。小六の誠と龍太と小四の光葉の三人。」

レイモンドは、にやけていた。

レイモンドの家に着いた。

僕は、帽子とサングラスを外した。

ドアを開けると子供達が、嬉しそうに駆け寄って来た。

「とーさんお帰り。」

焦げ茶色の髪の男の子が、レイモンドに抱き付いた。

「貴方は誰？」

レイモンドに抱き付いている男の子と瓜二つの男の子が僕を見詰めている。

「僕は、君達の親戚のアレン・月島・フィッツロイだよ。アイリスって呼んでね。」

僕は、屈んで子供達と目線を合わした。

「女の人？可愛いー。」

女の子が、僕に纏わり付いた。

「違うよ。」

「えええ。光葉より可愛いのにー。」

女の子は、疑い深い目で僕を見ている。

「光葉の方が可愛いよ。」

レイモンドが、女の子の頭をぐりぐり撫でた。

「本当にー？」

女の子は。嬉しそうにしていた。

良い家庭を持っている。

「桜。会いたかったよ。」

レイモンドは、小走りで奥さんの所へ行った。

「お帰り。えっと。君がアレン君ね。」

レイモンドの横から顔を出していた。

「はい。アレン・月島・フィッツロイです。アイリスって呼んで下さい。宜しくお願いします。」

僕は、お辞儀をした。

「宜しく。私は、黒田桜。」

桜さんは、迚も笑顔が素敵な人だった。

僕は、三階の奥の部屋に通された。
書物が沢山並んでいる。

「此処が、お前の部屋な。必要なモノは、此れで買いな。」

二〇万円渡された。

服とパソコンで余ったのは、株をしろという事だろう。

「有難う。儲けたら返すよ。」

レイモンドは、ゆっくりと僕の部屋を出た。

ベッドは在る。

買うモノは、服、靴、下着、パソコン、携帯位か。

僕は、サングラスをして帽子被り、取り敢えず外に出た。

運が良い事に近くにショッピングモールが建っていた。

僕は、其方へ向けて歩いて歩道橋を渡った。

一五年も経つと技術が進んでいるし、服装も流行も違う。

修学旅行生が、沢山居る。

函館か。

北海道は、修学旅行で定番なのは、変わっていない。

大学生活、楽しみたかった。

「彼処の金髪の人、充さんに似てない？」

僕を指差す。

「あー本当ね。」

「お母さん、声掛けてみようよ。」

「琴葉、充は、此処に居ないのよ。」

琴葉、まさか…。

僕は、嫌な予感がしたのでショッピングモールに急いで入った。

僕は、適当に似合いそうな服を買って、其の後、下着類を買い、パソコンを買った。
携帯は、お金貯めたら買おう。

家に戻るとレイモンドが、玄関に立っていた。

「君に仕事が、入ったよ。行こう。」

僕は、靴箱の上に荷物を置いた。

レイモンドは、僕の肩を掴み外へ出た。
僕は、車の助手席に乗せられた。

「運転免許は、取っていたか？」

レイモンドは、運転席へ座り、シートベルトをした。

「持っているよ。」

僕もシートベルトをした。

一〇分位車に乗っていた。

「さあ、此処だ。」

僕は、周囲を確認して降りた。

僕が、降りた後にレイモンドが降り、車に鍵を掛けた。

レイモンドが歩き出したので、僕は後を歩いた。

「此の中に入って髪に花の髪飾りをしている女性の所へ行ってくれないか。」

レイモンドは、僕をレストランの前に置いて帰った。

僕は、言う通りにレストランへ入り花の髪飾りをした女性の前まで行った。

「今日は。」

僕は、挨拶をしてみた。

「今日は。アイリスね。」

「はい、そうです。何の様な御用件でしょうか。」

僕は、女性の目を見た。

「夕食を一緒にと思ってね。どうぞ、座って。」

僕は、一礼して座った。

名前、訊ねないと駄目だよね。

訊ねても良いのだろうか。

「…あの、お名前聞いても宜しいですか。」

気に障らないだろうか。

女の人の顔を窺った。

「ああ、忘れていたわ。私、結城千鶴って言います。」

「結城…。」

僕は、美悠の事を思い出した。

「アレン・月島・フィッツロイさん。私の姉の恋人だった人。貴方ですよね。お会いしたかったです。」

悪気が感じられ無い笑顔をしていた。

「如何いうつもり？妹が居たなんて知らなかった。」

僕は、全身の血の気が抜けた。

復讐か何か。

もう、忘れたかったのに。

「お姉ちゃん、今度は貴方が、本当に死んだって思っているみたいですよ。私の所為だとか言っていますよ。」

彼女は、僕に挑戦状を叩き付ける様に見た。

僕は、其の目をじっと見ていた。

「もう、旦那も居るんだろう。諦めたのでは無かったのかい？」

僕は、溜息をした。

彼女は、僕を凝視している。

「親子の演技に騙されたんですよ。本当は、旦那なんて存在していないですよ。」

彼女は、クスッと笑った。

そうか、長年心配したお返しって事か。
記憶が、戻っていなかったから仕方無いとは思うけど。

「そう、もう戻れないよ。一五年の隔たりを取り除く事は、出来ないよ。僕は、正直、三〇代っていう自覚が無い。未だ一八から時は動いてないんだよ。」

僕は、俯いた。

「だから、見た目も変わって無いのかもしれませんね。貴方、一人を置いて皆、年齢を重ねていっているんですもの。でも、其れは仕方無いです。」

彼女も俯いた。

沈黙が続いていると食事が、到着した。

僕のも頼んでいたみたいだ。

彼女が、食べたので僕も食べた。

重苦しい空気で、味が判らなかった。

「お姉ちゃんに報復しないの？」

ナイフとフォークを皿の上に置いた。

「美悠は、悪く無いさ。環境が悪かっただけだよ。もう、終わった事、僕も忘れたいんだよ。」

頼むから忘れさせてくれないか。

僕が、何をしたって言うんだ。

一五年間、何も出来なかったじゃないか。

皆、忘れてくれよ。

「記憶を消せる薬、存在しているって知っていますか？」

彼女は、低い声で言った。

「知っているよ。特定の記憶を消せる訳じゃないから僕は、要らないけどね。」

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