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悪夢
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卒業式の日、僕は最後の思い出として美悠と写真を撮った。
「美悠は、来年か。」
僕は、空を見上げて言った。
「おめでとう御座います。」
美悠は、赤いリボンの付いたラメ入りの黒い小さな箱を僕に渡した。
「有難う。」
早速、箱を開けて見ると、ブルーの宝石が付いたシルバーネックレスが入っていた。
僕は、其れを着けた。
「後ろ向いて。」
僕は、バックから二つのリングの付いたネックレスを取り出し、美悠に着けた。
「わあー。可愛い。此の指輪ってー」
美悠は、指輪を触りながら僕を見た。
「片方は、美悠ので、もう片方は僕のだよ。」
「有難う!」
美悠は、僕に抱き付いて唇にキスをした。
「バイバイ。又、逢える日まで。」
美悠にそう言い残して僕は、此の学校を去った。
僕は、卒業旅行として沙百合と子供でスキーに行く事に成った。
「貴方、美悠ちゃんに振られたんですってね。」
「違うよ、美悠の父親に引き離されたんだよ。」
僕は、俯いて地面を見た。
「格好悪いお兄さんだわ。ねえ、琴葉ちゃん。」
赤ん坊は、きゃっきゃっと笑っている。
「彼処の景色、綺麗だから撮ってくるよ。」
僕は、走って山の下の方へ行った。
すると、物凄い音が鳴り響いた。
雪が崩れ落ちて僕を一瞬で覆い隠す。
此れで良かったのかもしれない。
美悠と結ばれないのなら、死んだ方が良いのかもしれない。
全て忘れー
僕は、其処で意識を失った。
探したけど見付からなかったらしい。
僕は、行方不明として、ずっと雪の下に埋まって居た。
幸せだった日々の夢を見乍ら。
僕が、見つけ出されたのは、一五年後の春の事だった。
犬が、穴を掘っていた所に僕が現れたのだ。
僕は、冬眠状態で何時起きるか分からなかったらしいが、身元が判ると家の近くの病院まで運ばれた。
僕は家族が迎えに来た時に丁度目が覚めた。
「ー此処は?」
「アレン!何て髪が伸びただけで姿は其の儘だわ!」
「アレン!生きてくれて良かったよ!」
「アレン!此処は、病院だよ。」
三人とも泣いて喜んで僕を抱きしめた。
僕は、涙さえ出なかった。
「僕は、何で病院に居るの?」
「お前、雪崩に巻き込まれて行方不明だったんだよ。」
兄が、僕の肩を叩く。
「そっか。無事で本当に良かったよって自分でも思うよ。」
僕は、急に頭に激痛が走った。
雪崩が、僕の上から降ってる光景が蘇った。
其の時、死んでも良いと思っていた。
僕が、高校を卒業して間もなく事故に遭った事と今年で三三歳に成る事を伝えられた。
僕の記憶は、一四歳の夏から無かった事が分かった。
家族が帰ると僕は、何故死にたかったのかを思い出そうとした。
しかし、思い出すのは其の時の感情だけだった。
「死にたいー!」
僕は、窓から飛び降りようと思い窓を勢い良く開けた。
綺麗な夕日が、見える。
血の色が少し混ざっている様な気がした。
ドアを叩く音が、部屋中に響いた。
誰だろう。
「どうぞ。」
入って来たのは、長い黒髪と茶色い短髪の女性二人だった。
「アレン…良かった…。」
黒い髪の女が、抱き付いて来た。
「…失礼ですが、何方ですか?」
場の空気に相応しく無いかもしれないが言った方が、良かっただろう。
「誰って…結城美悠よ。」
彼女は、悲しそうな顔をしていた。
「友達か、何かですか?…僕、中二の夏より後の記憶無いんです。」
「違うわ。恋人よ。」
彼女の目には、涙が溜まっていた。
僕は、必死に思い出そうとするが、頭が痛くて思い出せ無かった。
「僕に、恋人が、出来るとは到底思えないのですが。」
彼女は、終に泣いてしまった。
「…此の子は、アレンと私の子供の蓮香よ。」
影に隠れて居た茶色の髪の子は、前に出て来てお辞儀した。
「僕、其の時高校生位ですよね?」
如何見ても中学生か高校生位の女の子だ。
僕は、可笑しかった。
恋人なんて要ら無いし、此の歳で子供は何か裏が有りそうだ。
「間違い無くアレンの子よ。私、産んだのはアレンが、居無く成って半年後の事よ。私、未だ高三だったのよ。」
彼女は、俯いている。
彼女は、僕より歳下なのか。
「そう…。僕の不始末なんだね。当時、性行為とか恋愛に興味が無かったのに…。其処まで明け暮れているとは、知らなかったよ。巻き込んだみたいで、御免ね。」
僕は、彼女の髪を撫でた。
茶色の髪の子は、ずっと俯いている。
「結婚したいね。私じゃないと無理とか言っていたのに…。」
彼女は、顔を覆い隠しながら泣いた。
「お母さん、もう別の人と結婚してるし良いじゃない。」
茶色の髪の子は、彼女を慰めている。
「貴方、記憶の無い昔の恋人より、今を大事にした方が、良いよ。僕は、死んだ人も同然なんだから。何時までも想っていても仕方無いよ。」
僕は、此の人を大事にしていたのだろうか。
先程よりも頭が、痛く成って意識が遠のいた。
何か…思い出せる……?
僕が、思い出したのは土下座して結婚をさせて下さいと四〇代位の男に許しを乞うて、相手にされなかった事だ。
もう一つは、長い黒髪の少女が僕の目の前を横切って行く所だ。
先程の僕の恋人だった人だろう。
目が覚めると明け方だった。
開けた窓は、閉められていた。
僕は、また窓を開けた。
僕は、窓の縁を持って窓枠に足を掛けた。
此処からだと、即死か…。
池が邪魔をするが、関係無い、飛び降りれば良いさ。
死にたい。
結ばれ無いのなら…?
家族に心配掛けない様に本を側に置いて、転落死を装おう。
後ろから落ちる。
一…
二…
三…
僕は風に成った様だ。
冷たい。
桜が、綺麗だ。
「美悠は、来年か。」
僕は、空を見上げて言った。
「おめでとう御座います。」
美悠は、赤いリボンの付いたラメ入りの黒い小さな箱を僕に渡した。
「有難う。」
早速、箱を開けて見ると、ブルーの宝石が付いたシルバーネックレスが入っていた。
僕は、其れを着けた。
「後ろ向いて。」
僕は、バックから二つのリングの付いたネックレスを取り出し、美悠に着けた。
「わあー。可愛い。此の指輪ってー」
美悠は、指輪を触りながら僕を見た。
「片方は、美悠ので、もう片方は僕のだよ。」
「有難う!」
美悠は、僕に抱き付いて唇にキスをした。
「バイバイ。又、逢える日まで。」
美悠にそう言い残して僕は、此の学校を去った。
僕は、卒業旅行として沙百合と子供でスキーに行く事に成った。
「貴方、美悠ちゃんに振られたんですってね。」
「違うよ、美悠の父親に引き離されたんだよ。」
僕は、俯いて地面を見た。
「格好悪いお兄さんだわ。ねえ、琴葉ちゃん。」
赤ん坊は、きゃっきゃっと笑っている。
「彼処の景色、綺麗だから撮ってくるよ。」
僕は、走って山の下の方へ行った。
すると、物凄い音が鳴り響いた。
雪が崩れ落ちて僕を一瞬で覆い隠す。
此れで良かったのかもしれない。
美悠と結ばれないのなら、死んだ方が良いのかもしれない。
全て忘れー
僕は、其処で意識を失った。
探したけど見付からなかったらしい。
僕は、行方不明として、ずっと雪の下に埋まって居た。
幸せだった日々の夢を見乍ら。
僕が、見つけ出されたのは、一五年後の春の事だった。
犬が、穴を掘っていた所に僕が現れたのだ。
僕は、冬眠状態で何時起きるか分からなかったらしいが、身元が判ると家の近くの病院まで運ばれた。
僕は家族が迎えに来た時に丁度目が覚めた。
「ー此処は?」
「アレン!何て髪が伸びただけで姿は其の儘だわ!」
「アレン!生きてくれて良かったよ!」
「アレン!此処は、病院だよ。」
三人とも泣いて喜んで僕を抱きしめた。
僕は、涙さえ出なかった。
「僕は、何で病院に居るの?」
「お前、雪崩に巻き込まれて行方不明だったんだよ。」
兄が、僕の肩を叩く。
「そっか。無事で本当に良かったよって自分でも思うよ。」
僕は、急に頭に激痛が走った。
雪崩が、僕の上から降ってる光景が蘇った。
其の時、死んでも良いと思っていた。
僕が、高校を卒業して間もなく事故に遭った事と今年で三三歳に成る事を伝えられた。
僕の記憶は、一四歳の夏から無かった事が分かった。
家族が帰ると僕は、何故死にたかったのかを思い出そうとした。
しかし、思い出すのは其の時の感情だけだった。
「死にたいー!」
僕は、窓から飛び降りようと思い窓を勢い良く開けた。
綺麗な夕日が、見える。
血の色が少し混ざっている様な気がした。
ドアを叩く音が、部屋中に響いた。
誰だろう。
「どうぞ。」
入って来たのは、長い黒髪と茶色い短髪の女性二人だった。
「アレン…良かった…。」
黒い髪の女が、抱き付いて来た。
「…失礼ですが、何方ですか?」
場の空気に相応しく無いかもしれないが言った方が、良かっただろう。
「誰って…結城美悠よ。」
彼女は、悲しそうな顔をしていた。
「友達か、何かですか?…僕、中二の夏より後の記憶無いんです。」
「違うわ。恋人よ。」
彼女の目には、涙が溜まっていた。
僕は、必死に思い出そうとするが、頭が痛くて思い出せ無かった。
「僕に、恋人が、出来るとは到底思えないのですが。」
彼女は、終に泣いてしまった。
「…此の子は、アレンと私の子供の蓮香よ。」
影に隠れて居た茶色の髪の子は、前に出て来てお辞儀した。
「僕、其の時高校生位ですよね?」
如何見ても中学生か高校生位の女の子だ。
僕は、可笑しかった。
恋人なんて要ら無いし、此の歳で子供は何か裏が有りそうだ。
「間違い無くアレンの子よ。私、産んだのはアレンが、居無く成って半年後の事よ。私、未だ高三だったのよ。」
彼女は、俯いている。
彼女は、僕より歳下なのか。
「そう…。僕の不始末なんだね。当時、性行為とか恋愛に興味が無かったのに…。其処まで明け暮れているとは、知らなかったよ。巻き込んだみたいで、御免ね。」
僕は、彼女の髪を撫でた。
茶色の髪の子は、ずっと俯いている。
「結婚したいね。私じゃないと無理とか言っていたのに…。」
彼女は、顔を覆い隠しながら泣いた。
「お母さん、もう別の人と結婚してるし良いじゃない。」
茶色の髪の子は、彼女を慰めている。
「貴方、記憶の無い昔の恋人より、今を大事にした方が、良いよ。僕は、死んだ人も同然なんだから。何時までも想っていても仕方無いよ。」
僕は、此の人を大事にしていたのだろうか。
先程よりも頭が、痛く成って意識が遠のいた。
何か…思い出せる……?
僕が、思い出したのは土下座して結婚をさせて下さいと四〇代位の男に許しを乞うて、相手にされなかった事だ。
もう一つは、長い黒髪の少女が僕の目の前を横切って行く所だ。
先程の僕の恋人だった人だろう。
目が覚めると明け方だった。
開けた窓は、閉められていた。
僕は、また窓を開けた。
僕は、窓の縁を持って窓枠に足を掛けた。
此処からだと、即死か…。
池が邪魔をするが、関係無い、飛び降りれば良いさ。
死にたい。
結ばれ無いのなら…?
家族に心配掛けない様に本を側に置いて、転落死を装おう。
後ろから落ちる。
一…
二…
三…
僕は風に成った様だ。
冷たい。
桜が、綺麗だ。
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