3 / 16
悪夢
2
しおりを挟む
其の丘は、世の中で最高級の枕と言っても過言では無い程心地好い。
女性は、皆其れを持っている。
使うのは、本人では無い所が惜しいが、非常に羨ましい。
僕に女性の素晴らしさを教えてくれたのは。美悠である。
男尊女卑なんて馬鹿げた考えは、改めた方が良い。
僕は、腕の力を緩めて美悠の髪の毛を撫でた。
「絶対、私から離れないでね。」
美悠は、僕の背中に両手を回した。
「離れたくないよ。」
僕は、此の関係がもう終わりを告げようとしている事に気付かなかった。
昨日は、美悠が泊まったから一緒に学校へ行ける。
先に玄関へ出て待っていると家の庭の前に兄の幼馴染の沙百合が立っていた。
「久しぶりね。アレン、今日は話がしたいの。」
僕を見掛けると歩み寄って来た。
「ああ、学校終わってから話そうよ。今日は、美悠が泊まりに来ていたからね。」
美悠に見られたく無い。
沙百合は、俯いた。
「じゃあ、此処で言うわね。あたし、ずっと黙ってたけど、今。見て気づいたでしょ、妊娠してるの。」
大きなお腹を摩りながら言った。
「それって誰の?」
僕は、恐ろしかった。
軽々しくするモノでは無いと後悔した。
「充。心配しなくても一人で育てるわ。未だ、高校生の子供も居るし。私は、もう社会人だわ。」
全身の血の気が引いた。
何を言っているのだろう。
「父さんには、言わない方が良いよね?」
命の重大さは、理解出来る。
同時に行為の重大さに気付いた。
「そうね。仕方無いのよ。気に病む事無いの。アレン、貴方は、美悠ちゃんにそんな失礼な事しちゃ駄目よ。」
沙百合の姿は、凛々しかった。
沙百合と僕が出会ったのは、一〇年前。
小学生の時、家の近辺に引っ越して来た。
父と沙百合が、関係を持ったのは、半年前である。
兄の友達とこんな関係に成っているとは思ってもいなかった。
「有難う、御免ね。」
沙百合は、静かに立ち去って行った。
「お待たせ。行こっか。」
美悠は、何も知らずに僕に笑顔を向けた。
僕は、居た堪れない気分だった。
父が、不倫をしているのを黙って見ているなんて。
学校の校門の前には、美悠の父親が恐ろしい顔をして立っていた。
「君、もう、美悠に近付かないでくれ。」
冷たい声で言われた。
僕は、何も言えなかった。
「嫌。」
美悠は、凄い剣幕で言い、僕の右腕を引っ張って校内に入った。
僕は、受験生なのに勉強に身が入らなかった。
放課後、何時もの待ち合わせ場所に行って待っていたが、美悠は来なかった。
父親に無理矢理連れ帰られたと美悠の友達に聞いた。
もう、会えなくなってしまうのではないかそんな気がしていた。
美悠と会えなくなってもう一週間経った。
別れたとか言う噂話も聞こえてくる。
家に行ったら門前払い。
何時も両親の何方かが、迎えに来ているらしい。
休み時間に行ってみると居ない。
音信不通。
絶望的だった。
もう、諦めるか。
でも、忘れたくない。
くよくよ悩んでいても格好悪い。
格好良く生きなくても良いから、美悠が欲しい。
「アレン、気晴らしに放課後遊びに行こうぜ。」
落ち込んでいる僕を励まそうとしているのだろう。
「良いけど、勉強大丈夫なの?」
「今日だけな。」
彼は、歯を見せて笑った。
「行こう。」
僕も同じく歯を見せて笑った。
放課後、少し教室に残って遊びに行く人を集めた。
女三人、男二人で行く事になった。
「お前等、アレン狙いだろ。」
彼は、ふざけて言った。
「うん、そうだな。お前目当てでは行かねえよな。」
「そうよねえ。」
女の子達は、くすくすと笑った。
「何だよー。行くぜ。」
僕達は、バッグを持って教室を出た。
ファミリーレストランで食事をした。
「アレン君、別れたんならウチと付き合おうよ。」
「真希ちゃん、有難う。気持ちは受け取っとくよ。」
こういう事が、別れた途端に増えるのか。
別れてないんだけどね。
しかし、僕は、モテる筈が無い。
何か可笑しかった。
食事が終わって帰る最中に舞実ちゃんが並んで歩いて来た。
「行こう。」
真希ちゃんは、僕の腕を勢い良く引っ張って走った。
「此処、私の家ね。」
そう言うと僕を家の中に押し込んだ。
女性は、皆其れを持っている。
使うのは、本人では無い所が惜しいが、非常に羨ましい。
僕に女性の素晴らしさを教えてくれたのは。美悠である。
男尊女卑なんて馬鹿げた考えは、改めた方が良い。
僕は、腕の力を緩めて美悠の髪の毛を撫でた。
「絶対、私から離れないでね。」
美悠は、僕の背中に両手を回した。
「離れたくないよ。」
僕は、此の関係がもう終わりを告げようとしている事に気付かなかった。
昨日は、美悠が泊まったから一緒に学校へ行ける。
先に玄関へ出て待っていると家の庭の前に兄の幼馴染の沙百合が立っていた。
「久しぶりね。アレン、今日は話がしたいの。」
僕を見掛けると歩み寄って来た。
「ああ、学校終わってから話そうよ。今日は、美悠が泊まりに来ていたからね。」
美悠に見られたく無い。
沙百合は、俯いた。
「じゃあ、此処で言うわね。あたし、ずっと黙ってたけど、今。見て気づいたでしょ、妊娠してるの。」
大きなお腹を摩りながら言った。
「それって誰の?」
僕は、恐ろしかった。
軽々しくするモノでは無いと後悔した。
「充。心配しなくても一人で育てるわ。未だ、高校生の子供も居るし。私は、もう社会人だわ。」
全身の血の気が引いた。
何を言っているのだろう。
「父さんには、言わない方が良いよね?」
命の重大さは、理解出来る。
同時に行為の重大さに気付いた。
「そうね。仕方無いのよ。気に病む事無いの。アレン、貴方は、美悠ちゃんにそんな失礼な事しちゃ駄目よ。」
沙百合の姿は、凛々しかった。
沙百合と僕が出会ったのは、一〇年前。
小学生の時、家の近辺に引っ越して来た。
父と沙百合が、関係を持ったのは、半年前である。
兄の友達とこんな関係に成っているとは思ってもいなかった。
「有難う、御免ね。」
沙百合は、静かに立ち去って行った。
「お待たせ。行こっか。」
美悠は、何も知らずに僕に笑顔を向けた。
僕は、居た堪れない気分だった。
父が、不倫をしているのを黙って見ているなんて。
学校の校門の前には、美悠の父親が恐ろしい顔をして立っていた。
「君、もう、美悠に近付かないでくれ。」
冷たい声で言われた。
僕は、何も言えなかった。
「嫌。」
美悠は、凄い剣幕で言い、僕の右腕を引っ張って校内に入った。
僕は、受験生なのに勉強に身が入らなかった。
放課後、何時もの待ち合わせ場所に行って待っていたが、美悠は来なかった。
父親に無理矢理連れ帰られたと美悠の友達に聞いた。
もう、会えなくなってしまうのではないかそんな気がしていた。
美悠と会えなくなってもう一週間経った。
別れたとか言う噂話も聞こえてくる。
家に行ったら門前払い。
何時も両親の何方かが、迎えに来ているらしい。
休み時間に行ってみると居ない。
音信不通。
絶望的だった。
もう、諦めるか。
でも、忘れたくない。
くよくよ悩んでいても格好悪い。
格好良く生きなくても良いから、美悠が欲しい。
「アレン、気晴らしに放課後遊びに行こうぜ。」
落ち込んでいる僕を励まそうとしているのだろう。
「良いけど、勉強大丈夫なの?」
「今日だけな。」
彼は、歯を見せて笑った。
「行こう。」
僕も同じく歯を見せて笑った。
放課後、少し教室に残って遊びに行く人を集めた。
女三人、男二人で行く事になった。
「お前等、アレン狙いだろ。」
彼は、ふざけて言った。
「うん、そうだな。お前目当てでは行かねえよな。」
「そうよねえ。」
女の子達は、くすくすと笑った。
「何だよー。行くぜ。」
僕達は、バッグを持って教室を出た。
ファミリーレストランで食事をした。
「アレン君、別れたんならウチと付き合おうよ。」
「真希ちゃん、有難う。気持ちは受け取っとくよ。」
こういう事が、別れた途端に増えるのか。
別れてないんだけどね。
しかし、僕は、モテる筈が無い。
何か可笑しかった。
食事が終わって帰る最中に舞実ちゃんが並んで歩いて来た。
「行こう。」
真希ちゃんは、僕の腕を勢い良く引っ張って走った。
「此処、私の家ね。」
そう言うと僕を家の中に押し込んだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
芙蓉の宴
蒲公英
現代文学
たくさんの事情を抱えて、人は生きていく。芙蓉の花が咲くのは一度ではなく、猛暑の夏も冷夏も、花の様子は違ってもやはり花開くのだ。
正しいとは言えない状況で出逢った男と女の、足掻きながら寄り添おうとするお話。
表紙絵はどらりぬ様からいただきました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる