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poppin' 4. 昴
05.
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「木瀬くんが好きです。付き合って下さい」
…好き。
何をどう勘違いしているのか分からないが、昴に告白してくれる奇特な女子は相変わらず多くいる。
「…それって具体的にどういう心境? どういうことしたい?」
「え? えーと、…一緒に帰ったり、遊びに行ったり、ご飯したり。電話とかで話したり、手、繋いだり、…出来ればキス、とか、…?」
これまでその感情をまるで信じられずに耳を傾けたことがなかったが、ここに来て初めて真剣に考えてみた。
「…ごめん。俺、そういうのやりたい人、他にいる」
その結果、告白してくれた人に真摯に頭を下げることになった。
…好き、か。
蓮多に抱く自分の感情が、友情なのか愛情なのか恋情なのか分からないが、好きなことは確かだ。失くしたくない。ずっとこのままでいたい。蓮多には昴だけを見ていて欲しい。
ボコっ
その事実に辿り着いた昴は思わず自分をぶん殴っていた。
「え、…? 木瀬くん、どうしたの!? 大丈夫っ!?」
全然大丈夫じゃない。最低最悪だ。
「あ、いや、何でもない。ホントごめんな」
まだ女子がそこにいたことを忘れていた。ヤバい、本格的に自分はおかしい。
「ううんっ、気にしないで。他に好きな人がいるのにこんなに気にしてくれて、木瀬くんってやっぱり優しいんだね。頬っぺ、冷やした方がいいよ」
「…ああ、うん。ありがとう。自分でやるから大丈夫」
何かを勘違いして感激した様子で去っていく女子を見送りながら、昴は自分史上最大に動揺していた。
蓮多が好きって、…マジか。
思えば。
蓮多が昴を追いかけてアイスクリーム店でアルバイトを始めた日、オレンジシャーベットを無邪気に頬張る蓮多が可愛くて、闇に透けるオレンジがきれいで、思わず「似合ってる」などと言ってしまった。挙句、のきょとんとした蓮多の顔が可愛すぎて、衝動的に触れたくなった。
『手、繋いだり、出来ればキス、とか、…』
いやいやいや、待て待て待て。キモいだろ!?
普通にキモい。俺は男であいつも男だ。
好きを深堀してはいけない。何があっても友情に留めなければならない。
夏休みの間。
ほとんど昴は蓮多と一緒に過ごした。早朝モモの散歩兼新聞配達に始まり、アイスクリームショップでお揃いの制服を着てアイスを売り、交通整理のバイト先では蓮多の差し入れを頬張り、自宅に帰って蓮多と肉入り鍋をつつく。一日中一緒にいる。毎日一緒にいる。母親もすっかり蓮多と意気投合し、昴の知らないところで連絡を取り合っている。
昴にとって、人生初めての夏休みと言って良かった。昴の人生は常に戦いだった。こんなにも毎日が楽しくて、明日が楽しみなのは初めてだ。他愛もなく、かけがえのない。こんな日々がずっと続いて欲しい。
『俺ら親友じゃん? お前が好きなやつとうまくいくように絶対協力してやるから』
そんなことが叶うはずもないのに。
蓮多にだけは言われたくなかった。好きなのはお前だ。
自分は一方的に蓮多に魅せられているのだ。男のくせに。
夏休み終盤の登校日。衝動的にキスした。触れたかった。
「…え?」
目をまん丸にして見返す蓮多が可愛い。愛しい。この好きは友情じゃない。
本当は最初から分かっていたのかもしれない。これは恋だ。
「お前のこと、親友なんて思ったことないから」
男にキスされたらさすがの蓮多も引くだろう。気持ち悪いに違いない。
それでいい。馬鹿で優しい蓮多がこれ以上自分に深入りする前に離れた方がいい。この劣情に蓮多を巻き込みたくはない。
…好き。
何をどう勘違いしているのか分からないが、昴に告白してくれる奇特な女子は相変わらず多くいる。
「…それって具体的にどういう心境? どういうことしたい?」
「え? えーと、…一緒に帰ったり、遊びに行ったり、ご飯したり。電話とかで話したり、手、繋いだり、…出来ればキス、とか、…?」
これまでその感情をまるで信じられずに耳を傾けたことがなかったが、ここに来て初めて真剣に考えてみた。
「…ごめん。俺、そういうのやりたい人、他にいる」
その結果、告白してくれた人に真摯に頭を下げることになった。
…好き、か。
蓮多に抱く自分の感情が、友情なのか愛情なのか恋情なのか分からないが、好きなことは確かだ。失くしたくない。ずっとこのままでいたい。蓮多には昴だけを見ていて欲しい。
ボコっ
その事実に辿り着いた昴は思わず自分をぶん殴っていた。
「え、…? 木瀬くん、どうしたの!? 大丈夫っ!?」
全然大丈夫じゃない。最低最悪だ。
「あ、いや、何でもない。ホントごめんな」
まだ女子がそこにいたことを忘れていた。ヤバい、本格的に自分はおかしい。
「ううんっ、気にしないで。他に好きな人がいるのにこんなに気にしてくれて、木瀬くんってやっぱり優しいんだね。頬っぺ、冷やした方がいいよ」
「…ああ、うん。ありがとう。自分でやるから大丈夫」
何かを勘違いして感激した様子で去っていく女子を見送りながら、昴は自分史上最大に動揺していた。
蓮多が好きって、…マジか。
思えば。
蓮多が昴を追いかけてアイスクリーム店でアルバイトを始めた日、オレンジシャーベットを無邪気に頬張る蓮多が可愛くて、闇に透けるオレンジがきれいで、思わず「似合ってる」などと言ってしまった。挙句、のきょとんとした蓮多の顔が可愛すぎて、衝動的に触れたくなった。
『手、繋いだり、出来ればキス、とか、…』
いやいやいや、待て待て待て。キモいだろ!?
普通にキモい。俺は男であいつも男だ。
好きを深堀してはいけない。何があっても友情に留めなければならない。
夏休みの間。
ほとんど昴は蓮多と一緒に過ごした。早朝モモの散歩兼新聞配達に始まり、アイスクリームショップでお揃いの制服を着てアイスを売り、交通整理のバイト先では蓮多の差し入れを頬張り、自宅に帰って蓮多と肉入り鍋をつつく。一日中一緒にいる。毎日一緒にいる。母親もすっかり蓮多と意気投合し、昴の知らないところで連絡を取り合っている。
昴にとって、人生初めての夏休みと言って良かった。昴の人生は常に戦いだった。こんなにも毎日が楽しくて、明日が楽しみなのは初めてだ。他愛もなく、かけがえのない。こんな日々がずっと続いて欲しい。
『俺ら親友じゃん? お前が好きなやつとうまくいくように絶対協力してやるから』
そんなことが叶うはずもないのに。
蓮多にだけは言われたくなかった。好きなのはお前だ。
自分は一方的に蓮多に魅せられているのだ。男のくせに。
夏休み終盤の登校日。衝動的にキスした。触れたかった。
「…え?」
目をまん丸にして見返す蓮多が可愛い。愛しい。この好きは友情じゃない。
本当は最初から分かっていたのかもしれない。これは恋だ。
「お前のこと、親友なんて思ったことないから」
男にキスされたらさすがの蓮多も引くだろう。気持ち悪いに違いない。
それでいい。馬鹿で優しい蓮多がこれ以上自分に深入りする前に離れた方がいい。この劣情に蓮多を巻き込みたくはない。
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