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poppin' 1 蓮多

06.

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「ドリームロッキンチョコレート、ラムレーズンホワイト、ウハウハラッキーダイナマイト、お待たせしました」

「ウキウキハッピーマンゴーナイトだろ」

アイスクリーム屋のバイトは難しい。且つ、忙しい。

フレーバーは種類がオニモリだし、衛生管理は徹底しなきゃいけないし、客は列をなして威嚇してくるし、アイスは俺を親の仇みたいな目で見て全然丸くなってくれないし、…

「やだ~、木瀬くん。めっちゃ爽やか」「アイス王子って呼んじゃう?」
「クールだしピッタリ」「てか、何で蓮多が居るんだし」

結局、学校の女子どももやって来て、キャッキャ大騒ぎして邪魔していくし。

「星丸くん、お疲れ。初日大変だったと思うけど、よく頑張ってくれたね。明日からも期待してるよ」

やっと閉店時間になり、器具の片づけやら消毒やらが終わり、店長に声を掛けられても満足に返事も出来ないくらい、蓮多は疲れ果てていた。

「う、す」

星丸蓮多、初バイト。腕も足もパンパンだ。帰路に就くのもだるい。
しかし木瀬は、この後続けて交通誘導警備員のバイトに行くのだ。怪物か?

「店長、オレンジシャーベット2つ買ってってもいいですか」
「もちろん。木瀬くんもお疲れ。いつもありがとね」

亀の歩みで着替えを済ませて店から出た蓮多の前に、カップアイスが差し出された。とっくに着替え終わってさっさと出て行った木瀬は、店の裏口で蓮多が出て来るのを待っていたらしい。

「これ、俺が一番好きなやつ」
「…ふうん」

木瀬に渡されたのは、蓮多も好きなオレンジシャーベット味。有難く受け取って、歩きながら口に入れる。オレンジが爽やかに弾け、シャーベットが甘く溶けて、立ちっぱなしで疲れた身体に沁み渡る。

「お前のオレンジも、…」

オレンジシャーベットは乾いた喉にもひんやり心地よく、一心に頬張っている蓮多に、木瀬の柔らかい声が届いた。

「似合ってる」
「な、…!?」

なんだか。シャーベットが喉に詰まりそうになって、慌てて飲み込んだ。

「じゃあ、また明日な」

次のアルバイト開始時刻が迫っている木瀬は、妙に爽やかな笑顔を残して走り去っていった。

蓮多は木瀬の後ろ姿が見えなくなるまで呆然と見送っていた。
なんだろう、この、なんともくすぐったいような、どうにも落ち着かないような、つかめない気持ちは。

俺にオレンジの髪色が似合ってるのは当たり前だし。だって俺だし。俺のセンスだし。

オレンジシャーベットの後味が甘酸っぱい。

『俺が一番好きなやつ』

木瀬のハスキーで甘い声音がよみがえり、

「うおおおお―――――」

弾けるオレンジを持て余した蓮多は、家まで猛烈ダッシュで帰ってしまった。

「大丈夫ですか、蓮多坊っちゃま」

結果。
筋肉疲労を起こして脚が上がらなくなり、邸内を這って過ごすことを余儀なくされ、長年星丸家に仕える有能使用人の葉山をオロオロさせることになった。

「るせえ、坊ちゃん、言うな」

…俺のバカ。
こんなみっともない姿、絶対木瀬には見せられない。
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