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poppin' 1 蓮多
03.
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木瀬に彼女を作るなら、まずは木瀬から好きな女を聞き出してキューピッドになってやるのがいいだろう。と思い至った蓮多は、早速木瀬に聞いてみた。
「なあ、木瀬。お前誰が好きなん?」
「…少なくともお前じゃない」
が。身も蓋もなくあしらわれた。
「…なぜだ?」
「お前信用されてないんじゃね?」
呆然とする蓮多に友人たちは言った。
なるほど。
確かに、蓮多は木瀬から惚れた女を打ち明けられるほどに仲良くはなかった。そこでまず、木瀬との距離を縮めて信頼を勝ち取る作戦に移行することにした。
「木瀬~、昼飯食べようぜ~」
「昼練がある」
「木っ瀬~、一緒に帰ろうぜ」
「これからバイトだ」
「バイトお疲れ~。ご飯行かね?」
「次のバイトがある」
が。木瀬は思いのほか忙しかった。
距離を詰める隙が無い。
木瀬が弓道部の練習に参加しているのを見たことがなかったので、蓮多は知らなかったのだが、木瀬は弓道界では名の知れた高校生で、相当な実力の持ち主らしい。
「なんで、お前がここで飯食ってんだ?」
仕方がないので、昼休み、弓道場に弁当を持ち込んで観察してみると、確かに木瀬の弓道姿は鮮やかで、敵ながらあっぱれというか、普通に視線を奪われる。
そんな弓道界のホープがなぜ部活に参加していないかというと、
「はい。トリプルのコーンが1点で、キャンディプリンス、ポッピングアワー、マンダリンオレンジキャラメルハニー、…って、何でお前が店にいるんだよ!?」
「…お前、似合うな。そのカッコ」
授業が終了するや否や、アイスクリーム屋でバイトし、
「すみません、こちら気を付けてお歩きください、…って、何でお前がそこに座ってるんだ!?」
「お前、ヘルメットも似合うな」
「お。兄ちゃん、昴の友だち? こいつ、めっちゃ働くよ」
「まあ。どちらかというと親友です」
「ただのクラスメイトだろ」
その後夜更けまで交通誘導警備員のバイトをし、
「お前は俺のストーカーなのか?」
「…犬の散歩だ」
早朝から新聞配達のバイトに勤しんでいるからである。
「あ、そ。じゃあな」
早起きし過ぎて寝ぼけまなこの蓮多を置いて、木瀬昴は新聞を積んだスクーターバイクを颯爽と走らせて去ってしまったが、
「…わぉんっ」
「おい、待て、モモっ」
蓮多の愛犬ゴールデンレトリバー♂2歳のモモが、リードを引っ張って猛烈に後を追い始め、
「…お前。散歩楽しそうじゃん」
木瀬が面白そうに片頬を上げるのを横目に、蓮多は真夏の早朝、猛ダッシュで木瀬のスクーターを追いかけ続ける羽目に陥った。
「こらー、星丸っ、寝るな! まだ夏休みじゃないぞ」
「…ねむい」
結果、授業中に爆睡した。
「なんだよ蓮多、朝からバテバテじゃん」
「レトリバーのモモちゃんと戯れすぎたんだって」
「若いな」「青春だね」
木瀬は遅くまでバイトをこなし朝早くから更に配達もこなしているのに、涼しい顔で授業を受けている。確かに休み時間、木瀬も机に突っ伏していることがあるものの、昼休憩は矢を射っているし、夜は働き詰め。
「木瀬。お前、いつ勉強してるんだ?」
「授業中に決まってるだろ」
学業。弓道。バイトの掛け持ち。
こんな生活サイクルじゃ、彼女どころか友だちと遊ぶ暇もないじゃねえか。
「なあ、木瀬。お前誰が好きなん?」
「…少なくともお前じゃない」
が。身も蓋もなくあしらわれた。
「…なぜだ?」
「お前信用されてないんじゃね?」
呆然とする蓮多に友人たちは言った。
なるほど。
確かに、蓮多は木瀬から惚れた女を打ち明けられるほどに仲良くはなかった。そこでまず、木瀬との距離を縮めて信頼を勝ち取る作戦に移行することにした。
「木瀬~、昼飯食べようぜ~」
「昼練がある」
「木っ瀬~、一緒に帰ろうぜ」
「これからバイトだ」
「バイトお疲れ~。ご飯行かね?」
「次のバイトがある」
が。木瀬は思いのほか忙しかった。
距離を詰める隙が無い。
木瀬が弓道部の練習に参加しているのを見たことがなかったので、蓮多は知らなかったのだが、木瀬は弓道界では名の知れた高校生で、相当な実力の持ち主らしい。
「なんで、お前がここで飯食ってんだ?」
仕方がないので、昼休み、弓道場に弁当を持ち込んで観察してみると、確かに木瀬の弓道姿は鮮やかで、敵ながらあっぱれというか、普通に視線を奪われる。
そんな弓道界のホープがなぜ部活に参加していないかというと、
「はい。トリプルのコーンが1点で、キャンディプリンス、ポッピングアワー、マンダリンオレンジキャラメルハニー、…って、何でお前が店にいるんだよ!?」
「…お前、似合うな。そのカッコ」
授業が終了するや否や、アイスクリーム屋でバイトし、
「すみません、こちら気を付けてお歩きください、…って、何でお前がそこに座ってるんだ!?」
「お前、ヘルメットも似合うな」
「お。兄ちゃん、昴の友だち? こいつ、めっちゃ働くよ」
「まあ。どちらかというと親友です」
「ただのクラスメイトだろ」
その後夜更けまで交通誘導警備員のバイトをし、
「お前は俺のストーカーなのか?」
「…犬の散歩だ」
早朝から新聞配達のバイトに勤しんでいるからである。
「あ、そ。じゃあな」
早起きし過ぎて寝ぼけまなこの蓮多を置いて、木瀬昴は新聞を積んだスクーターバイクを颯爽と走らせて去ってしまったが、
「…わぉんっ」
「おい、待て、モモっ」
蓮多の愛犬ゴールデンレトリバー♂2歳のモモが、リードを引っ張って猛烈に後を追い始め、
「…お前。散歩楽しそうじゃん」
木瀬が面白そうに片頬を上げるのを横目に、蓮多は真夏の早朝、猛ダッシュで木瀬のスクーターを追いかけ続ける羽目に陥った。
「こらー、星丸っ、寝るな! まだ夏休みじゃないぞ」
「…ねむい」
結果、授業中に爆睡した。
「なんだよ蓮多、朝からバテバテじゃん」
「レトリバーのモモちゃんと戯れすぎたんだって」
「若いな」「青春だね」
木瀬は遅くまでバイトをこなし朝早くから更に配達もこなしているのに、涼しい顔で授業を受けている。確かに休み時間、木瀬も机に突っ伏していることがあるものの、昼休憩は矢を射っているし、夜は働き詰め。
「木瀬。お前、いつ勉強してるんだ?」
「授業中に決まってるだろ」
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こんな生活サイクルじゃ、彼女どころか友だちと遊ぶ暇もないじゃねえか。
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