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終章.そして、水龍王の花嫁は幸福に微笑む
03.再会
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「ねえ待ってよ、レオ。待ってってば」
「…ったく、おっせーな、リーネは。ほら、手出せ」
水龍の男の子レオは、双子の妹リーネの手を取って、ごつごつした大きな岩ばかりの岩場を抜ける。
「だいたい大げさなんだよ。なんだその、ひらひらしたカッコ」
リーネの装いを見てため息を吐くレオだが、ふんだんに使われたフリルがふわふわ揺れる、まるでお姫さまのような可愛らしいドレスは可憐なリーネによく似合っている。憎まれ口を叩きながらも、着慣れないドレスでおしゃれしているリーネが転んだりしないよう、エスコートするレオの手は限りなく優しい。
「だってだって、今日は初めての舞踏会よ。リヴ様がダンスにお誘い下さるかもしれないのよ」
が。夢見るように頬を染めるレオだけの小さなプリンセスを見て、舌打ちしたくなる。
「なわけあるか。リヴ様ほどの偉大な王様がお前みたいなちんくしゃ相手にするかよ」
ふん、と鼻で笑って言い捨ててやる。
だいたい気に入らねえんだよ。そりゃあリヴァイアサン様は絶対的な水の王様だけど、舞踏会に行ってお目見えするくらいでそんな浮かれることか?
「な、…」
レオとつないでいたリーネの手にぎゅううっと力が入り、リーネの大きな瞳が涙に潤む。
あ。やべえ。
「なによ、レオのバカ―――っ、おたんこなすっ、どてかぼちゃ、プレイボーイきどりぃいい―――っっ」
なんでだよ。
と思うものの、顔を真っ赤にして瞳をウルウルさせながら怒っているリーネは可哀想で可愛くて辛い。
美男美女の双子レオとリーネはその麗しい見た目からちやほやされることも多いが、引っ込み思案なリーネに比べ快活なレオはどの種族の女の子からも桁違いにモテている。
「あー…ちんくしゃ、な。俺は好きだよ。かわ、…いいし」
「レオの好みなんて聞いてないもん」
精一杯のフォローは、全く届かなかったらしく唇を尖らせたままプンプンしているリーネに一蹴された。
くっそ、キスしてやろうかな。ふるふるした桃色のリーネの唇を横目に、苦い思いを噛みしめる。
「あらあ、レオくんじゃあないの。今宵はアタシと踊って下さる~~~?」
それでもしっかり手を繋いで、舞踏会が開かれる龍宮に到着すると、正装したレオ目当てにあらゆる種族の若い女子たちが寄って来た。中でもひと際顔が大きいヒラメ三兄弟の長女メアリが女子をかき分けて進み出る。
「いや無理」
即答するレオにヒラメ娘メアリの目が寄る。
「なんでよお、アタシ、ヒラメ兄弟一の美女って言われてるのよ?」
「お前の兄弟、兄と弟で女はお前だけじゃねえか」
「なによお、ちょっと見た目がウルトラ最高級に素晴らしいからって。アタシと踊らなかったこと後悔しても知らないからっ」
レオにすげなくされて、うわーん、とこれ以上ないほど目を寄せて立ち去るヒラメアリ。
「まあまあ、落ち着けメアリ。俺たちはちょっくら近目だからな。今の時代、流行ってないんだよ」
大げさに泣くメアリを慰める長兄のマルス。しかし近目の全盛期は遅からず訪れると思っている。ちなみに自分はチビ龍のレオなどよりよっぽどイケていると思っているが、リーネに声をかける勇気はない。
「ねえメアリ。これ美味しいよ。いくらでも食べられる」
口いっぱいに料理を頬ばった弟のベンが食べかすを飛び散らかし、顔にかかってうんざりしたメアリは泣く振りを止めた。
「あんたは食べ過ぎなのよ、ベン。ぶくぶくぶくぶく醜く太って。太り過ぎたヒラメなんて5枚おろしで食べられて終わりよっ」
メアリに貶められたベンは蒼白になり、うぐっと料理を喉に詰まらせた。
「おい、自分が時代の流行りに乗ってないからって弟いじめるのやめろよ。ほら、ベン、水飲め水」
弟ベンを介抱する兄のマルスからも苦々しい思いでメアリは顔を逸らせた。全くいやだわ、あいつら目が寄り過ぎなのよ。そして、逸らせた視線の先に目を奪われた。寄りメアリの小さな目が最大限に見開かれる。
一瞬にして龍宮中の視線を独り占めにする。神々しくも美しい水龍王リヴァイアサンが広間に姿を現した。拍手と歓声と興奮で広間がどよめく中、リヴァイアサンは集まった皆に温かいまなざしを送りながらも真っすぐに会場のとある一点に向かい、
「…リーネ。会いたかった。お前は変わらず可愛いな」
群衆に埋もれたままリヴを一目見ようと背伸びしている小さなリーネを抱き上げて、目いっぱいのおしゃれをしたその姿を愛でると、頬に軽く唇を寄せた。
「…ったく、おっせーな、リーネは。ほら、手出せ」
水龍の男の子レオは、双子の妹リーネの手を取って、ごつごつした大きな岩ばかりの岩場を抜ける。
「だいたい大げさなんだよ。なんだその、ひらひらしたカッコ」
リーネの装いを見てため息を吐くレオだが、ふんだんに使われたフリルがふわふわ揺れる、まるでお姫さまのような可愛らしいドレスは可憐なリーネによく似合っている。憎まれ口を叩きながらも、着慣れないドレスでおしゃれしているリーネが転んだりしないよう、エスコートするレオの手は限りなく優しい。
「だってだって、今日は初めての舞踏会よ。リヴ様がダンスにお誘い下さるかもしれないのよ」
が。夢見るように頬を染めるレオだけの小さなプリンセスを見て、舌打ちしたくなる。
「なわけあるか。リヴ様ほどの偉大な王様がお前みたいなちんくしゃ相手にするかよ」
ふん、と鼻で笑って言い捨ててやる。
だいたい気に入らねえんだよ。そりゃあリヴァイアサン様は絶対的な水の王様だけど、舞踏会に行ってお目見えするくらいでそんな浮かれることか?
「な、…」
レオとつないでいたリーネの手にぎゅううっと力が入り、リーネの大きな瞳が涙に潤む。
あ。やべえ。
「なによ、レオのバカ―――っ、おたんこなすっ、どてかぼちゃ、プレイボーイきどりぃいい―――っっ」
なんでだよ。
と思うものの、顔を真っ赤にして瞳をウルウルさせながら怒っているリーネは可哀想で可愛くて辛い。
美男美女の双子レオとリーネはその麗しい見た目からちやほやされることも多いが、引っ込み思案なリーネに比べ快活なレオはどの種族の女の子からも桁違いにモテている。
「あー…ちんくしゃ、な。俺は好きだよ。かわ、…いいし」
「レオの好みなんて聞いてないもん」
精一杯のフォローは、全く届かなかったらしく唇を尖らせたままプンプンしているリーネに一蹴された。
くっそ、キスしてやろうかな。ふるふるした桃色のリーネの唇を横目に、苦い思いを噛みしめる。
「あらあ、レオくんじゃあないの。今宵はアタシと踊って下さる~~~?」
それでもしっかり手を繋いで、舞踏会が開かれる龍宮に到着すると、正装したレオ目当てにあらゆる種族の若い女子たちが寄って来た。中でもひと際顔が大きいヒラメ三兄弟の長女メアリが女子をかき分けて進み出る。
「いや無理」
即答するレオにヒラメ娘メアリの目が寄る。
「なんでよお、アタシ、ヒラメ兄弟一の美女って言われてるのよ?」
「お前の兄弟、兄と弟で女はお前だけじゃねえか」
「なによお、ちょっと見た目がウルトラ最高級に素晴らしいからって。アタシと踊らなかったこと後悔しても知らないからっ」
レオにすげなくされて、うわーん、とこれ以上ないほど目を寄せて立ち去るヒラメアリ。
「まあまあ、落ち着けメアリ。俺たちはちょっくら近目だからな。今の時代、流行ってないんだよ」
大げさに泣くメアリを慰める長兄のマルス。しかし近目の全盛期は遅からず訪れると思っている。ちなみに自分はチビ龍のレオなどよりよっぽどイケていると思っているが、リーネに声をかける勇気はない。
「ねえメアリ。これ美味しいよ。いくらでも食べられる」
口いっぱいに料理を頬ばった弟のベンが食べかすを飛び散らかし、顔にかかってうんざりしたメアリは泣く振りを止めた。
「あんたは食べ過ぎなのよ、ベン。ぶくぶくぶくぶく醜く太って。太り過ぎたヒラメなんて5枚おろしで食べられて終わりよっ」
メアリに貶められたベンは蒼白になり、うぐっと料理を喉に詰まらせた。
「おい、自分が時代の流行りに乗ってないからって弟いじめるのやめろよ。ほら、ベン、水飲め水」
弟ベンを介抱する兄のマルスからも苦々しい思いでメアリは顔を逸らせた。全くいやだわ、あいつら目が寄り過ぎなのよ。そして、逸らせた視線の先に目を奪われた。寄りメアリの小さな目が最大限に見開かれる。
一瞬にして龍宮中の視線を独り占めにする。神々しくも美しい水龍王リヴァイアサンが広間に姿を現した。拍手と歓声と興奮で広間がどよめく中、リヴァイアサンは集まった皆に温かいまなざしを送りながらも真っすぐに会場のとある一点に向かい、
「…リーネ。会いたかった。お前は変わらず可愛いな」
群衆に埋もれたままリヴを一目見ようと背伸びしている小さなリーネを抱き上げて、目いっぱいのおしゃれをしたその姿を愛でると、頬に軽く唇を寄せた。
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