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2章.なりそこねた少女は水龍王に愛でられる
02.水龍王リヴァイアサン
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「あ、リヴ様」
「龍王様だ」
リーネが群れの中で歌っていると、水龍王リヴァイアサンがやってきて、群れの仲間たちは一斉にその周りに集まっていった。尾のない半人前のリーネは仲間たちから少し遅れてリヴァイアサンに駆け寄る。リヴァイアサンは目を細めて人魚たちを愛で、纏わりつく群れの一人一人を撫でてから、遅れてやってきたリーネを抱き上げた。
「リーネ。お前の声は美しいな」
リヴの滑らかな手に撫でられると全身に喜びが走る。リヴの美しい爪が触れるとぞくぞくするような快感が込み上げる。
「ずるい、リーネだけ」
「リヴ様。あたしも」「あたしも抱いて」「抱っこして」
人魚の娘たちが口々にせがむのを、リーネを抱いていないもう一方の手で撫でてやりながら、リヴァイアサンは優しく諭す。
「リーネは私の花嫁だから。特別なのだよ」
「いいなぁ、リーネは」
「あたしもリヴ様の花嫁になりたい」「なりたい」
「リヴ様に愛されたい」「あたしも」「あたしも」
娘たちは諭されながらもリヴァイアサンへの憧れと羨望を露わにする。
海の奥底に広がるここ、水の国は、水龍王リヴァイアサンが治めていて、水中で生きるものたちは皆、その恩恵を受け、日々穏やかに過ごしていた。水龍王は絶対的な力を持ち、強く凛々しく崇高で、麗しくて慈悲深い。水に住まう全ての生物はリヴァイアサンを敬愛し、忠誠を誓っている。
「リーネは尾っぽがないから特別なの?」
人魚の娘の一人が自らの尾をひらひらさせながら、リヴァイアサンに抱かれているリーネを見る。
リーネには足がある。
水の国の遥か上方にある地上という世界で暮らす人間という生物と同じ。リーネはかつて人間だったらしい。人間だったリーネを受け取った水龍王リヴァイアサンが、リーネを癒し、半人魚に生まれ変わらせてくれた。リーネは人間だった頃のことは何も覚えていない。群れの人魚とは少しばかり姿が違うけれど、その違いもリヴァイアサンが愛でてくれるから、泳ぎが下手な自分の足も結構気に入っている。
「そうだな。私が惹かれたから特別なのだ」
リヴが爪の裏側で優しくリーネの頬を撫で、唇で辿った。
「わああ」「いいないいな」
人魚の娘たちがきゃあきゃあ騒ぐ中、リーネは自分が真っ赤になっているだろうことを自覚していた。リヴは大きく強く、愛情深い。自分が大事にされていることをその言動と肌から感じる。リヴの唇は柔らかく豊かで、触れられると体温が跳ね上がって胸の奥がギュッとなる。
「今宵は王宮で舞踏会が開かれるだろう。準備を手伝ってくれるか、リーネ」
「はい、もちろん」
無意識にリヴァイアサンにしがみつくと、リヴァイアサンはしっかりとリーネを抱いて、龍宮に引き返した。
「リーネ、後で行くわね」「あたしたちのドレス見てね」
「うん、楽しみにしてる」
人魚の娘たちはその後ろ姿を見送りながら、
「はああ、いいなぁ」
「リヴ様素敵」「かっこいい、…」
憧れのため息を漏らすのだった。
「龍王様だ」
リーネが群れの中で歌っていると、水龍王リヴァイアサンがやってきて、群れの仲間たちは一斉にその周りに集まっていった。尾のない半人前のリーネは仲間たちから少し遅れてリヴァイアサンに駆け寄る。リヴァイアサンは目を細めて人魚たちを愛で、纏わりつく群れの一人一人を撫でてから、遅れてやってきたリーネを抱き上げた。
「リーネ。お前の声は美しいな」
リヴの滑らかな手に撫でられると全身に喜びが走る。リヴの美しい爪が触れるとぞくぞくするような快感が込み上げる。
「ずるい、リーネだけ」
「リヴ様。あたしも」「あたしも抱いて」「抱っこして」
人魚の娘たちが口々にせがむのを、リーネを抱いていないもう一方の手で撫でてやりながら、リヴァイアサンは優しく諭す。
「リーネは私の花嫁だから。特別なのだよ」
「いいなぁ、リーネは」
「あたしもリヴ様の花嫁になりたい」「なりたい」
「リヴ様に愛されたい」「あたしも」「あたしも」
娘たちは諭されながらもリヴァイアサンへの憧れと羨望を露わにする。
海の奥底に広がるここ、水の国は、水龍王リヴァイアサンが治めていて、水中で生きるものたちは皆、その恩恵を受け、日々穏やかに過ごしていた。水龍王は絶対的な力を持ち、強く凛々しく崇高で、麗しくて慈悲深い。水に住まう全ての生物はリヴァイアサンを敬愛し、忠誠を誓っている。
「リーネは尾っぽがないから特別なの?」
人魚の娘の一人が自らの尾をひらひらさせながら、リヴァイアサンに抱かれているリーネを見る。
リーネには足がある。
水の国の遥か上方にある地上という世界で暮らす人間という生物と同じ。リーネはかつて人間だったらしい。人間だったリーネを受け取った水龍王リヴァイアサンが、リーネを癒し、半人魚に生まれ変わらせてくれた。リーネは人間だった頃のことは何も覚えていない。群れの人魚とは少しばかり姿が違うけれど、その違いもリヴァイアサンが愛でてくれるから、泳ぎが下手な自分の足も結構気に入っている。
「そうだな。私が惹かれたから特別なのだ」
リヴが爪の裏側で優しくリーネの頬を撫で、唇で辿った。
「わああ」「いいないいな」
人魚の娘たちがきゃあきゃあ騒ぐ中、リーネは自分が真っ赤になっているだろうことを自覚していた。リヴは大きく強く、愛情深い。自分が大事にされていることをその言動と肌から感じる。リヴの唇は柔らかく豊かで、触れられると体温が跳ね上がって胸の奥がギュッとなる。
「今宵は王宮で舞踏会が開かれるだろう。準備を手伝ってくれるか、リーネ」
「はい、もちろん」
無意識にリヴァイアサンにしがみつくと、リヴァイアサンはしっかりとリーネを抱いて、龍宮に引き返した。
「リーネ、後で行くわね」「あたしたちのドレス見てね」
「うん、楽しみにしてる」
人魚の娘たちはその後ろ姿を見送りながら、
「はああ、いいなぁ」
「リヴ様素敵」「かっこいい、…」
憧れのため息を漏らすのだった。
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