【完結】奪われた花嫁は海の藻屑になりそこね、水龍王に愛でられる

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1章.奪われた花嫁は海の藻屑に

07.契り

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「口移しなら食べられるか?」

王子はココリーネの唇に触れた後、鼻や頬、瞼や耳にも口づけた。
引き寄せる手も指も唇もとても優しく、柔らかく、慈しみに満ちている。ココリーネは今までこんな風に誰かに触られたことはなかった。

王子はココリーネに口移しで食べさせて、飲ませた。

毒物は入っていないということを証明するためもあっただろうが、もちろん、それ以上の意味がある。いつしかココリーネは王子の膝上に抱きかかえられながら、信じられないほど美味しい肉や新鮮な果実を口にしていた。王子が優しくココリーネを撫でたり、口移しで注ぎながら舌先で触れたりするたびに、頭の芯が蕩けるようにぼうっとしてお腹の奥から熱いものが込み上げる。怖い。けれど、抗えない。思いもよらない快感に酔う。王子の食事を見守る従者たちの視線もいつしか気にならなくなっていた。自分を抱える王子に自らぴったりと身体を寄せていることに、ココリーネは気づいていなかった。

「…休むか」

王子がココリーネを抱き上げて席を立ち、寝室に下がった時には、ココリーネはもはや夢心地で何が為されているのか考える余裕がなかった。王子は広々として柔らかく良い匂いのするベッドで、肌触りの良いシーツだけを身に纏い、ココリーネの身体全てに触れた。その指で手のひらで唇で舌で、ココリーネを愛で、撫でて舐めて、隅々まで辿る。「お前は本当に綺麗だな」鞭で打たれた醜い傷跡に、馬から落とされて出来た痛々しい痣に、王子が優しく口づけた時、なぜか涙が溢れた。王子は自分でも触ったことのない秘めた場所にまで口づけ、開いて注ぎ込んだ。王子のしなやかな身体が自分を包み、奥深くまで押し入って固く固く繋がれる。

痛みも恐怖もなく、ふわふわした心地よさと頭の奥が痺れるような快感、身体が砕けてバラバラになるような強力な刺激に交互に襲われた。行為の意味は本能的に理解していたが、なぜ王子とこのようなことになっているのかはまるで分からない。何も考えられない。与えられる刺激と快楽を享受することに精一杯で、今この瞬間、王子と繋がる一点だけがココリーネの全てだった。

「レオン様の奔放さも困ったものですね」
「第二王子とはいえ、もうお妃様も決まってらっしゃるのにお遊びになってばかり」
「まさか町娘をお城にまで連れていらっしゃるなんて、…」

気がついたら、王子の腕と脚にしっかりと囲われていた。衣服の代わりに王子の肌がぴったりとココリーネに貼りついている。身じろぎして王子の腕の中から抜け出すと、穿たれたままの王子の身体が抗うようにココリーネを揺らす。自分でも驚くような甘えた声が漏れ、ココリーネは慌てて両手で口を塞いだ。甘美な震えを飲み込み、細心の注意を払って王子から離れると、自分の中から何かが溢れ出してシーツを濡らした。それは何とも言えない寂しさと、現実を連れてきた。
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