39 / 44
39.人事を尽くして天命を待つ③
しおりを挟む
「ひっ、ひっ、姫さまっ!! 大変です、大変です、一大事です~~~~~っ! のんびり寝ている場合じゃございませんわっ」
ばあやの慌てふためいた大声に、アヤメはしぶしぶ目を開けた。
愛しの旦那様が優しくキスしてくれたような、幸せ過ぎる夢を見ていたのに、全くばあやったら間が悪いわ。
「ガラコスとルキオの野郎が見知らぬイケメンを残してどこかに消えたかと思ったら、氷の洞窟が崩壊して、異世界への扉が開き、気が付いたら魔界に入り込んでいて、姫さまが、…っ 姫さまがこの世のものとは思えない極上イケメンに抱かれてまする~~~~~っっ」
全く理解が追いつかないけど、ひたすら大騒ぎしているばあやに鷲づかみにされ、前後左右にがくがくと揺さぶられて首が鳴る。
「ばあやさん、やめてやってもらえないか」
それを制するのは愛しい旦那様の声。低く優しく甘やかに沁みる声。この声で名前を呼んでもらって恋というものを知った、……あら。
アヤメは声のする方を見て瞬いた。
よく見たら旦那様、少し小さくなられたような、…?
「アヤメ、大丈夫か? 気が付いたか?」
「はい、旦那様。大好きです、…」
やはり少し小さくなられたような気もしないでもないけど、相変わらず凛々しく素敵な旦那様に間近から見つめられ、なんだか胸がいっぱいになった。私、旦那様に愛の告白をしてもらったような気もするのだけど、やっぱりあれは夢だったかしら。
「…アヤメっ!!」
と思いながら、じっとガマニエルの顔を見つめていたら、ふいにガマニエルが立ち上がり、
「アヤメ、アヤメ、俺のアヤメ~~~~~っ」
両腕を高く伸ばしてアヤメを掲げると満面の笑顔でくるくる回り始めた。
「出た――っ、兄貴の満開くるくるダンス~~~~~っ」
勇み立ったマーカスが拍手喝采で飛び上がり、
「あ、ずるう~~い」「アタシもくるくるして欲しいっ」
金の国のドゴール王子と銀の国のシルバン王子に寄り添われた姉姫のアマリリスとアネモネがぶーぶー騒ぐ。
「え、えーっと、…」
「じゃあ、…たかいたか~い、…??」
なぜか対抗意識を燃やしたドゴールとシルバンがアマリリスとアネモネを担ぎ上げ、
「は―――っハッハッハ! 私が一番高く投げれる――――――っ」
更に売られた喧嘩はもれなく買う主義の魔王ドーデモードが魔王妃ラミナを高々と投げ飛ばした。高さで愛の大きさをはかるというなら、どう考えても私が一番だろう。
「アナタぁあああ――――っ、何するのよ――――――っ」
天井の抜けた魔王城大広間にラミナの悲鳴がこだまする。
「アヤメ、…アヤメっ」
太陽よりも月よりも美しい絶世の美男子ガマニエルは、愛しの妻を掲げては抱きしめ、頬を擦り寄せて感慨に浸る。
可愛い。可愛い。俺のアヤメ。
生きてる。生きてる。最高っ。
「ふふ、…っ」
ぎゅううっと強く抱きしめられて、優しくすりすりされる。旦那様から愛しさが沁み込んできて、嬉しさとくすぐったさでアヤメは笑い声を上げた。無邪気に嬉しそうな旦那様が可愛い。
「アヤメ、…っ」
アヤメの笑い声が可愛すぎて、ガマニエルは思わずアヤメにキスをして、…
アヤメが驚いたように目を瞬いたので我に返った。
「ひょ――――――――――――っ」
目を見開いて絶叫を上げたばあやの口を慌ててガラコスとルキオが押さえているのが目の端に映る。
「羨ましマッスル! 絵になりまくりマッス、…っっ」
いや待て。ちょっと待て。
俺はさっきから勝手にキスしまくっているが、ここはちゃんとお伺いを立てるべきじゃなかったか。俺はちゃんとアヤメに好きだと伝えたんだったか?
醜悪な化け物ガマ妖怪時代が長すぎて、段取りを忘れた。
というか、恋愛初心者すぎて、何が正解か分からない。そもそも俺はアヤメと今後もこ、こ、恋人、ってか、夫婦でいられるのか?
動揺に動揺を重ねてテンパるガマニエルにちょっと顔を赤らめた可愛い温もりが飛びついてきた。
「嬉しいっ」
ちょ、…待って。
俺の嫁、可愛すぎるだろぉおおおお――――――――――――…
「アヤメ、好きだよ。ずっと。愛してる」
段取りはすっぱ抜けて、魔界の魔王城の真ん中で、よく分からないギャラリーに囲まれて、ガマニエルはアヤメに永遠の愛を誓い、もう一度、そっと唇を重ねた。
「はああああ、…っ、うっとり。素敵。最高。終わり良ければ総て良しってね。ばあやの姫さまが極上イケメンとスペシャルキッス。なんですか、これ。劇場クライマックスですかね、ルキオ」
手塩にかけて可愛がってきた不遇の姫さまが幸せそうで、感無量のばあやは、何がどうなっているのか現状がよく分からないものの、右隣に立つ蛙国の従者ルキオの背中をバシバシと叩き、
「いや、ゴブリンAでやんす」
「ところで、ガラコス。姫さまが一時心を奪われてしまったキモガマガエルどこ行ったか知らない?」
なんか手触りが違ったので、今度は左隣の従者ガラコスの背をバッシバッシと叩いて、
「だから、ゴブリンBでやんす」
不信感いっぱいの目を向けられた。
「ばあや、ルキオはこっち」「ガラコスは俺だよ」
暴走するばあやをすらりと背が高く清潔感漂う好青年二人が連れ戻しに来て、
「お前ら、カエル違うやんけ―――っ」
「魔王の呪いが解けて、ガマニエル王太子もカレイル国も元の姿に戻ったんだよ」
「って、さっきからずっと言ってるのに」
「お前ら、口調も違うやんけ―――っ」
ばあやは仰天した。びっくりポ―――ン!
ばあやの慌てふためいた大声に、アヤメはしぶしぶ目を開けた。
愛しの旦那様が優しくキスしてくれたような、幸せ過ぎる夢を見ていたのに、全くばあやったら間が悪いわ。
「ガラコスとルキオの野郎が見知らぬイケメンを残してどこかに消えたかと思ったら、氷の洞窟が崩壊して、異世界への扉が開き、気が付いたら魔界に入り込んでいて、姫さまが、…っ 姫さまがこの世のものとは思えない極上イケメンに抱かれてまする~~~~~っっ」
全く理解が追いつかないけど、ひたすら大騒ぎしているばあやに鷲づかみにされ、前後左右にがくがくと揺さぶられて首が鳴る。
「ばあやさん、やめてやってもらえないか」
それを制するのは愛しい旦那様の声。低く優しく甘やかに沁みる声。この声で名前を呼んでもらって恋というものを知った、……あら。
アヤメは声のする方を見て瞬いた。
よく見たら旦那様、少し小さくなられたような、…?
「アヤメ、大丈夫か? 気が付いたか?」
「はい、旦那様。大好きです、…」
やはり少し小さくなられたような気もしないでもないけど、相変わらず凛々しく素敵な旦那様に間近から見つめられ、なんだか胸がいっぱいになった。私、旦那様に愛の告白をしてもらったような気もするのだけど、やっぱりあれは夢だったかしら。
「…アヤメっ!!」
と思いながら、じっとガマニエルの顔を見つめていたら、ふいにガマニエルが立ち上がり、
「アヤメ、アヤメ、俺のアヤメ~~~~~っ」
両腕を高く伸ばしてアヤメを掲げると満面の笑顔でくるくる回り始めた。
「出た――っ、兄貴の満開くるくるダンス~~~~~っ」
勇み立ったマーカスが拍手喝采で飛び上がり、
「あ、ずるう~~い」「アタシもくるくるして欲しいっ」
金の国のドゴール王子と銀の国のシルバン王子に寄り添われた姉姫のアマリリスとアネモネがぶーぶー騒ぐ。
「え、えーっと、…」
「じゃあ、…たかいたか~い、…??」
なぜか対抗意識を燃やしたドゴールとシルバンがアマリリスとアネモネを担ぎ上げ、
「は―――っハッハッハ! 私が一番高く投げれる――――――っ」
更に売られた喧嘩はもれなく買う主義の魔王ドーデモードが魔王妃ラミナを高々と投げ飛ばした。高さで愛の大きさをはかるというなら、どう考えても私が一番だろう。
「アナタぁあああ――――っ、何するのよ――――――っ」
天井の抜けた魔王城大広間にラミナの悲鳴がこだまする。
「アヤメ、…アヤメっ」
太陽よりも月よりも美しい絶世の美男子ガマニエルは、愛しの妻を掲げては抱きしめ、頬を擦り寄せて感慨に浸る。
可愛い。可愛い。俺のアヤメ。
生きてる。生きてる。最高っ。
「ふふ、…っ」
ぎゅううっと強く抱きしめられて、優しくすりすりされる。旦那様から愛しさが沁み込んできて、嬉しさとくすぐったさでアヤメは笑い声を上げた。無邪気に嬉しそうな旦那様が可愛い。
「アヤメ、…っ」
アヤメの笑い声が可愛すぎて、ガマニエルは思わずアヤメにキスをして、…
アヤメが驚いたように目を瞬いたので我に返った。
「ひょ――――――――――――っ」
目を見開いて絶叫を上げたばあやの口を慌ててガラコスとルキオが押さえているのが目の端に映る。
「羨ましマッスル! 絵になりまくりマッス、…っっ」
いや待て。ちょっと待て。
俺はさっきから勝手にキスしまくっているが、ここはちゃんとお伺いを立てるべきじゃなかったか。俺はちゃんとアヤメに好きだと伝えたんだったか?
醜悪な化け物ガマ妖怪時代が長すぎて、段取りを忘れた。
というか、恋愛初心者すぎて、何が正解か分からない。そもそも俺はアヤメと今後もこ、こ、恋人、ってか、夫婦でいられるのか?
動揺に動揺を重ねてテンパるガマニエルにちょっと顔を赤らめた可愛い温もりが飛びついてきた。
「嬉しいっ」
ちょ、…待って。
俺の嫁、可愛すぎるだろぉおおおお――――――――――――…
「アヤメ、好きだよ。ずっと。愛してる」
段取りはすっぱ抜けて、魔界の魔王城の真ん中で、よく分からないギャラリーに囲まれて、ガマニエルはアヤメに永遠の愛を誓い、もう一度、そっと唇を重ねた。
「はああああ、…っ、うっとり。素敵。最高。終わり良ければ総て良しってね。ばあやの姫さまが極上イケメンとスペシャルキッス。なんですか、これ。劇場クライマックスですかね、ルキオ」
手塩にかけて可愛がってきた不遇の姫さまが幸せそうで、感無量のばあやは、何がどうなっているのか現状がよく分からないものの、右隣に立つ蛙国の従者ルキオの背中をバシバシと叩き、
「いや、ゴブリンAでやんす」
「ところで、ガラコス。姫さまが一時心を奪われてしまったキモガマガエルどこ行ったか知らない?」
なんか手触りが違ったので、今度は左隣の従者ガラコスの背をバッシバッシと叩いて、
「だから、ゴブリンBでやんす」
不信感いっぱいの目を向けられた。
「ばあや、ルキオはこっち」「ガラコスは俺だよ」
暴走するばあやをすらりと背が高く清潔感漂う好青年二人が連れ戻しに来て、
「お前ら、カエル違うやんけ―――っ」
「魔王の呪いが解けて、ガマニエル王太子もカレイル国も元の姿に戻ったんだよ」
「って、さっきからずっと言ってるのに」
「お前ら、口調も違うやんけ―――っ」
ばあやは仰天した。びっくりポ―――ン!
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる