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番外編②【星雨】
03.
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ロウが上手すぎるのが悪い。
いつもいつも陥落させられるユイは、重い身体を起こしながら卓越した能力を持つロウを恨めしく思う。身体の奥からロウと混ざり合った証が溢れ出して敏感になっている身体を甘く苛む。
「や、…ぁ――――」
ロウの律動が蘇り、勝手に嬌声を上げる口を押さえた。
一人で感じていて恥ずかしい。
ロウのバカ。
落ち着くのを待っても甘い痺れは一向に止まないので、のろのろと起き出して夜着を纏う。瞬く間にロウに剝がされて、夜じゅうロウの毛に包まれているので、夜着の出番は多くない。
力が入らず、足元がおぼつかない自身を叱咤激励して何とか居室から出ると、柔らかな毛並みに衝突した。
「何してる」
驚きに見開いた琥珀色の瞳に、美しい純白の毛並みを纏う人狼の王が首を傾げている姿が映った。
「え、…あれ、…?」
見つかるの、早すぎるでしょ―――っ
何と答えたら良いかと固まるユイをロウがふわりと抱き上げた。
「俺の後をつけようと思ったのか。不安にさせて悪かった」
ロウが大きな手がユイの髪を優しく撫で、長い舌が柔らかく頬をくすぐる。
…何もかもばれている。
「不安ていうか、ロウが何か大変なんだったら、手伝いたいと思っただけ」
役に立てることは少ないけど。
口の中でぶつぶつ呟く。天賦の才能を持つロウからしたら、人間の女性であるユイは何もできない赤子同然だ。
「お前は、…」
ロウは一瞬その美しい瞳を瞬かせて、
「本当に可愛くて俺を煽るのが上手いな」
ユイの唇に噛みつき、甘く食みながら押し開くと、長い舌を差し入れた。
「ロ、…―――んっ、…―――っ」
一気に喉奥までねじ込まれて、容赦なく絡めとられ、舌も上あごも歯列も、口内余すところなくなぞられ、撫でられ、舐められる。あっという間に沸き上がる快感に手足の先まで支配され、ユイはロウにしがみついた。ロウに触れている全てが気持ちいい。
「じゃあ一緒に来るか。お前がいると理性が飛んで、所構わず番いたくなる。俺がただの獣になっても文句言うなよ。お前が可愛いのが悪い」
全く納得できない理論ではあるが、ロウの激しいキスに息も絶え絶えのユイは、毛並みに顔をうずめて頷くしかなかった。
洞窟の居城は自然発光石が用いられ、明るさや体感温度が快適に保たれている。しかしその奥には闇より深い暗がりが続き、遥かなる深淵が広がっている。通る度に形を変える岩の砦。何人もたどり着けない深淵の先に、白き人狼だけが知る迷宮の入り口がある。
「ロウ、…」
「うん。ここにいる」
暗くて、視覚は全く役に立たない。
きつく自分を抱きしめるロウの感触だけが確かだ。ロウの白い毛並みがわずかな光を放っているような気がする。風のように走るロウの温もりと頬を掠めるしんとした空気。次第に研ぎ澄まされた星屑のような鉱石の匂いがするのを感じた。
「わぁ、…っ」
どこをどう通ってきたのか、ユイには全く分からないが、幾多の岩石を潜り抜けた先に、碧い空間が広がっていた。
「きれい、…」
魂を吸い取られるような神秘的な碧い湖。その湖面を縁取る青く透明な鉱石。遥か上に広がる天井は開け、煌めく無数の星々が見える。
「ここの鉱石は星屑から出来たらしい。俺はこのところ、鉱石を掘ってこれを作っていた」
幻想的な光景に歓声を挙げるユイを地面に降ろし、ロウが湖面を渡って何かを手に戻ってきた。
「お前と着けたくて」
ロウの手には葡萄の実を象ったピアスが載っていた。鉱石の透明な青が美しい一対のピアスは、片方は小さく、もう片方は少し大きい。
「ペアピアス、…?」
「そうだ」
精巧に掘られた葡萄の実は可憐で美しく、そこに込められたロウの思いが伝わってくる。
どんなにユイを大切に思ってくれているか、…
感極まって滲んだ視界に、青い葡萄の煌めきが揺れる。
いつもいつも陥落させられるユイは、重い身体を起こしながら卓越した能力を持つロウを恨めしく思う。身体の奥からロウと混ざり合った証が溢れ出して敏感になっている身体を甘く苛む。
「や、…ぁ――――」
ロウの律動が蘇り、勝手に嬌声を上げる口を押さえた。
一人で感じていて恥ずかしい。
ロウのバカ。
落ち着くのを待っても甘い痺れは一向に止まないので、のろのろと起き出して夜着を纏う。瞬く間にロウに剝がされて、夜じゅうロウの毛に包まれているので、夜着の出番は多くない。
力が入らず、足元がおぼつかない自身を叱咤激励して何とか居室から出ると、柔らかな毛並みに衝突した。
「何してる」
驚きに見開いた琥珀色の瞳に、美しい純白の毛並みを纏う人狼の王が首を傾げている姿が映った。
「え、…あれ、…?」
見つかるの、早すぎるでしょ―――っ
何と答えたら良いかと固まるユイをロウがふわりと抱き上げた。
「俺の後をつけようと思ったのか。不安にさせて悪かった」
ロウが大きな手がユイの髪を優しく撫で、長い舌が柔らかく頬をくすぐる。
…何もかもばれている。
「不安ていうか、ロウが何か大変なんだったら、手伝いたいと思っただけ」
役に立てることは少ないけど。
口の中でぶつぶつ呟く。天賦の才能を持つロウからしたら、人間の女性であるユイは何もできない赤子同然だ。
「お前は、…」
ロウは一瞬その美しい瞳を瞬かせて、
「本当に可愛くて俺を煽るのが上手いな」
ユイの唇に噛みつき、甘く食みながら押し開くと、長い舌を差し入れた。
「ロ、…―――んっ、…―――っ」
一気に喉奥までねじ込まれて、容赦なく絡めとられ、舌も上あごも歯列も、口内余すところなくなぞられ、撫でられ、舐められる。あっという間に沸き上がる快感に手足の先まで支配され、ユイはロウにしがみついた。ロウに触れている全てが気持ちいい。
「じゃあ一緒に来るか。お前がいると理性が飛んで、所構わず番いたくなる。俺がただの獣になっても文句言うなよ。お前が可愛いのが悪い」
全く納得できない理論ではあるが、ロウの激しいキスに息も絶え絶えのユイは、毛並みに顔をうずめて頷くしかなかった。
洞窟の居城は自然発光石が用いられ、明るさや体感温度が快適に保たれている。しかしその奥には闇より深い暗がりが続き、遥かなる深淵が広がっている。通る度に形を変える岩の砦。何人もたどり着けない深淵の先に、白き人狼だけが知る迷宮の入り口がある。
「ロウ、…」
「うん。ここにいる」
暗くて、視覚は全く役に立たない。
きつく自分を抱きしめるロウの感触だけが確かだ。ロウの白い毛並みがわずかな光を放っているような気がする。風のように走るロウの温もりと頬を掠めるしんとした空気。次第に研ぎ澄まされた星屑のような鉱石の匂いがするのを感じた。
「わぁ、…っ」
どこをどう通ってきたのか、ユイには全く分からないが、幾多の岩石を潜り抜けた先に、碧い空間が広がっていた。
「きれい、…」
魂を吸い取られるような神秘的な碧い湖。その湖面を縁取る青く透明な鉱石。遥か上に広がる天井は開け、煌めく無数の星々が見える。
「ここの鉱石は星屑から出来たらしい。俺はこのところ、鉱石を掘ってこれを作っていた」
幻想的な光景に歓声を挙げるユイを地面に降ろし、ロウが湖面を渡って何かを手に戻ってきた。
「お前と着けたくて」
ロウの手には葡萄の実を象ったピアスが載っていた。鉱石の透明な青が美しい一対のピアスは、片方は小さく、もう片方は少し大きい。
「ペアピアス、…?」
「そうだ」
精巧に掘られた葡萄の実は可憐で美しく、そこに込められたロウの思いが伝わってくる。
どんなにユイを大切に思ってくれているか、…
感極まって滲んだ視界に、青い葡萄の煌めきが揺れる。
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